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工学系のラグランジュ方程式の話part1

2010-06-25 14:30:32 | 物理
以前テンソルの話の解にお世話になった方が解析力学とは切っても切り離せないラグランジュの運動方程式について書いてくれたので転載します。あくまで工学系の人向けです
ジャンルが栃木県なのは本人の希望です。

ちなみにテンソル好きの方はこちら
http://blog.goo.ne.jp/fmdwtip03101b/c/98c24bca5a66cbce0a4cea7530648e5e

※物理大好きな変態のための

体系だった物理学の分野を語るには、数学と、「原理」が必要である。
数学だけでは物理は語れない。どこかしらに自然の情報を数式に直したものを承認する必要があって、それは数学的に証明できない。なぜなら導出する手がかりが無いから。

ニュートン形式の力学では、「原理」としてニュートンの三法則が要請された。力学を語るゆきかたは、もちろんこの方法に限らない。原理の取り方は人間の自由だが、なるべく納得しやすいもの、自然なものがいい。

自然の現象には、ある時間積分
S=∫[a→b]Ldt (aは現象の始点の時刻、bは終点の時刻)
を最小にする、という形で述べられるものが多数ある。
変数を明示的にL(q,q';t)としておく。q'はqの時間微分。

もう少し数学的に書くと
S(L)なるスカラーをKとおくと
SはL(関数)→K(スカラー)という写像である。
スカラーをスカラーに写すのが関数であるが、写像Sはその範疇を出ている。
関数をスカラーに写す写像を汎関数という。

汎関数の微分法に当たる「変分法」という数学的テクニックを用いれば
S:極値⇒d/dt(∂L/∂q')=∂L/∂q
となる。

さて、力学に戻ろう。力学ではなぜかL=T(運動エネルギー)-U(ポテンシャル) とすればつじつまがあう!
したがって、L=T-U(ラグランジアンと呼ぶ)とした上でS:極値を原理ととっても良い。
この行き方をラグランジュ形式の力学という。

本当にニュートン力学とつじつまが合うのか確かめてみよう。
カルテシアンを用いれば
L=(m/2)(x'^2+y'^2+z'^2)-U(x,y,z)
これに変分法を用いる。x座標について
d/dt(∂L/∂x')=∂L/∂x
すなわち
d/dt(mx')=-∂U/∂x
これはニュートンの運動方程式である!
変分法を用いて作った式はラグランジュの運動方程式という。

これでは、まだラグランジュ形式のおいしさが分からない。
次は二次元極座標(r,φ)を使って、ケプラー問題を解こう。
L=(m/2)(r'^2+r^2*φ'^2)-U(r)
d/dt(mr')=-∂U/∂r+mr*φ'^2
d/dt(mr^2*φ')=0
この方程式は見覚えがあるはずだ。ニュートン力学でケプラー問題を解こうとしたときに作った式だ。この方程式を出すのにどんな苦労をしたか思い出して欲しい。ラグランジュ形式では機械的にすぐに出る。
しかも、後者の式は角運動量保存則になっている。
ポテンシャルにφが含まれていないことから、ラグランジュの運動方程式の右辺が0になるのはすぐに予想される結果である。ラグランジュ形式は、保存則を見つけるのにも力を発揮するのである。

束縛条件付きの問題を考えよう。
水平なテーブルに穴が空いていて、テーブル上に質点mがあり手で固定している。質点mには紐の一端がつけられている。紐はテーブルの穴を通り、もう一端にはやはり質点Mが取り付けられている。床は十分遠いので、質点Mは紐にぶら下がっている。
mの運動を論じよう。ラグランジアンはテーブルの穴を原点とする極座標を用いて
L=(m/2)(r'^2+r^2*φ'^2)+(M/2)r'^2-Mgr
ここからラグランジュ形式の運動方程式を立てることは容易であろう。あとは皆さんの得意な微分方程式の問題である。
ニュートン力学の方法で論じようとすると、面倒な事になるのは目に見えている。ラグランジュ形式は、束縛条件つきの問題を論じるのも得意なのだ!

以上見たように、具体的問題の解決にもラグランジュ形式は便利である。
実はそれだけでなく、運動の一般論を引き出すのにも使えるのである。
こちらはいい加減眠くなってきたので割愛する。興味があればランダウ=リフシッツ「力学」(生協で平積みにされていたから買え)を読めばよろしい。

剛体の回転運動でもラグランジュ形式は便利らしいが、こっちは勉強していないのでよく知らない。私の不勉強でラグランジュ形式の素晴らしい一例を示せなくて残念だから、同志諸君は是非私を乗り越えて力学すべきだ。

というわけで、ラグランジュ形式はとても素敵なものなので、いやしくも理系を名乗る者ならば、勉強しない手はありません。電電のみんな(特に品川のように微分方程式大好きな変態)も、電磁場中での電荷の運動を記述するのにラグランジュ形式を使ったらとてもカッコいいので(事実使える)ぜひランダウ=リフシッツ「力学」買いましょう。ほらこんなに薄いんだからすぐできるに决まってるヨ…。


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