
早く着きすぎて勝手知ったるエリアにはだれもいなかった年もあった
■ 気が乗らない2年ぶりの年越しキャンプだったのだが
2012年の暮れ、ぼくと女房は雨模様の12月30日、モビリティーパークへ向かった。小田原からつづく伊豆の海岸線を走りながら、気持ちはまだ完全に定まっていなかった。モビリティーパークへの予約も入れていなかった。
何よりも溺愛してきた2匹のわんこたちを喪った哀しみから立ち直れていなかったし、ぼく自身も夏場から脚を痛め、腰にも不安を残したまま、歩行のときは念のために杖を手放していなかった。
出発が大幅に遅れ、渋滞もあって昼をとっくに過ぎた遅い昼食をとるために網代の手前にあるファミレスの駐車場へクルマを入れた。雨に濡れながら年越しキャンプがはじめての1歳半のルイをトイレ散歩に連れていった。途中で本格的になった雨は簡単にやむ気配がなかった。ルイをクルマの中に入れ、二階席の座席に座ったぼくの目の前に海と空との境界も定まらない濡れそぼつ風景が広がっていた。
「もう帰ろう」ぼくは女房にいった。迷いながら出発したあげくの雨でぼくの心はぽっきりと折れてしまっていた。
「ここまできたんだからとりあえずモビリティーまでいってみましょうよ」
こんなとき、たいてい同意してくれる女房がぼくを励まし、折れた心をかろうじてつないでくれた。
キャンプ場へ着いたとき、すでに日はとっぷりと暮れていた。こんな時刻に到着すること自体かつてなかった。それだけ気持ちが乗っていなかったということだ。
杖を手にクラブハウスへ入ったぼくたちを渡辺代表以下、顔見知りのスタッフが満面の笑みで迎えてくれた。二年ぶりの逢瀬である。彼らのおかげで「帰ろう」という気持ちは霧散した。きてよかったと心から思った。二匹のわんこたちを喪ったばかりの感傷旅行になりかけていた年越しキャンプだったが、思い出がいっぱい詰まったモビリティーパークにきて救われた。

スタッフ総出の1月2日の餅つき大会で新年を実感する
■ 新しいキャンプ場なら事前に下見してから
わが家は、次々と新しいキャンプ場へ出かけていくタイプでなく、自分たちが気に入ったキャンプ場やキャンプができる場所があれば繰り返して通う。なかなか気に入ったキャンプ場やサイトになる場所にめぐりあえないからというのも繰り返す理由のひとつだ。
これまで、ガイド誌やネット情報、あるいは他人からの評判や側聞でいった結果、失敗しているほうが圧倒的に多い。ぼくが気に入っても女房が嫌う場合もあるし、その逆もあった。だから新しいキャンプ場だったら本番前の下見が欠かせない。実地踏査しておいても、キャンプをしてみたら気に入らなかったというところだってあった。
最近は新しいところは開拓せず、数か所のキャンプ場だけを回しているにすぎない。季節によってどこへいくかが決まってしまう。あるいは、同行者によってもどこがふさわしいかを考えてキャンプ場選びをおこなう。ぼくの好みや考えが必ずしも普遍的ではないが、そこがお気に召さないのならご自分でお出かけくださいというスタンスを貫いている。
ぼくの趣味がキャンプだと知って、ときおり、「どこかいいキャンプ場ありますか?」と質問される。そういうときは迷うことなく「首都圏だったらモビリティーパークでしょう」と答えてきた。
そういう質問をする人たちは例外なくいわゆるファミリーキャンパーであり、オートキャンパーだからだ。家族でクルマを大型テントの脇に横づけしてのスタイルと決まっている。バドミントンを持参して、温泉も楽しみにする方々である。

率先して餅をつくダンディー渡邊代表は何をやっても絵になる人だ
■ 初心者はまずモビリティーパークから
ぼくもたくさんのキャンプ場を知っているわけではない。いわんや高規格と呼ばれるキャンプ場が肌に合わないのでそうしたキャンプ場では実際のキャンプ経験は乏しい。キャンプ場の情報源 はガイドブックであり、近年はインタネット経由でしかない。
それでもぼくは自信をもってモビリティーパークを推薦する。もしかしたら、周囲の環境やロケーションではモビリティーパークをしのぐキャンプ場があるかもしれない。しかし、設備や管理、スタッフ全員の練度やホスピタリティーでここに勝る、いや、比類するキャンプ場すら日本でほかに見つけるのは困難だろうと確信している。
特にキャンプ初心者なら、設備と管理体制にすぐれ、いつもほほえみを絶やすことなく接してくれるプロフェッショナルの精神(こころ)を持ったスタッフぞろいのこういうキャンプ場からはじめるべきだろう。
テントで一晩を過ごしてなんの不安もないし、キャンプが未熟な客だからといって侮るようなスタッフはいない。もし、ここでキャンプをする機会があったらクラブハウスでゆっくりとコーヒータイムを楽しむといい。このキャンプ場のプラスアルファの魅力になっとくできるからだ。
やがて、あまりにも恵まれた設備と行き届いた管理に飽きたらず、少しは不便なキャンプもやってみたいと思いはじめたらよそへいってみるのもいいだろう。野性を求めながら野性に疲れたら、またモビリティーパークの暖炉の前に還ってくればいい。スタッフの笑顔とおいしいコーヒーにいやされながらゆっくりと過ぎていくひとときが待っていてくれるからだ。

モビリティーパークの25年が日本の「オートキャンプ」の歴史そのものでもある
■ 今年がダメなら来年のホタルに期待
今年の年越しキャンプは2か月前の11月にデビューしたばかりの若いファミリーと一緒だった。まだ幼稚園にもいっていないお嬢さんといずれぼくの野遊びのすべてを受け継いでもらいたいような頼もしい小学2年生の少年も一緒だったので、はじめて年末年始の医療機関の診療体制を調べたほどだった。
病院のお世話にこそならなかったが、寸前のところでお世話になりそうになったのは子供たちではなく、わが家の女房のほうだった。
先週、モビリティーパークでの週末のホタル鑑賞キャンプに心躍らせてその気になっていたが、結局、今週はいかれなかった。女房が体調を崩してしまったからである。ひと月ほど前の逆流性食道炎が再発して七転八倒の苦しみをみせた彼女を置き去りにしてルイを連れてホタル鑑賞キャンプに出かけるわけにはいかない。未練は残るが今回はあきらめるしかあるまい。
空模様は梅雨特有のはっきりしない予報だが大雨ということもなさそうだった。しかし、日曜日の予報が的中して東京は朝から梅雨特有の湿るような雨模様である。出かけなかったのは正解でもあったかもしれない。一週間先の28日にも鑑賞会はあるが、さて、そこまでホタルたちががんばっていてくれるだろうか。思案のしどころである。来週がダメなら来年が……あってくれればいいのだが。