
■ タイの友に感謝!
本来、アウトドア用に開発・発売されたわけではないが、たぶん、その堅牢さゆえに北欧のブッシュクラフト・スクールなどで採用されて広まったと思われるステンレス製のビリーポットが、昨日、原産国のタイから届いた。
日本ではどこからも発売されていないし、わざわざ苦労して海外から取り寄せるほどのものじゃなしと諦めかけていたところ、タイのメーカーの製品だとわかったので、バンコクの20年来の取り引き先の友人にメールで問い合わせてみた。
すぐに返事があって、メーカーの本社が自宅から近いからと、彼はわざわざメーカーに出向いて情報を仕入れ、実物の写真まで何枚も撮って送ってくれた。そして、ぼくの依頼に応じて、翌日、ふたたび足を運んで大小2個のポットを購入、プレゼントのカップ2個までつけて送ってくれたものである。
趣味を同じくする人でなければ、なんでこんなものに夢中になるのかわからないだろうが、焚火おたくのアウトドアーズマンの一部には、きっと、現在、垂涎のポットであろう。梅雨が明けたらさっそくフィールドへ飛び出し、ポットたちを焚火にかけて煤でいい色合いに染め上げていくつもりである。
■ 煤が「汚い」というあきれた感覚
キャンプ用のポットはたくさん持っている。グループキャンプ用に買ったスノーピークのセットから、ソロキャンプが当たり前のころのキット、あるいは、もう手に入らないようなスイスのシグの3個セットやイギリスのホットンのビリーカンの3個セット(いずれもアルミ製)などのお宝ポット類まで含めて千差万別である。
それなのにここへきてまた新たなポットを買ってしまったのにはわけがある。これからは焚火を中心にした以前のキャンプのスタイルに戻そうとしているからである。
焚火で調理をすると鍋類が煤で黒く汚れる。この煤はアウトドアの証なのでぼくは好ましいと感じるが、汚いからいやだという人もいる。特にオートキャンプから入った人にとってみると煤でいい色合いに染まったポットで作った料理はまずいと感じるという。
それを主張した夫人の料理の腕のひどさに驚き、「まずは料理らしきものを作れるようになってからいえよ」と陰口をたたいたものだが、ファッションとしてのアウトドアに毒された人々に焚火の煤は受け入れてもらえないというのを10年ばかり前にはじめて学んだ。幸いにして、わが家の女房は煤でいい色合いに染まったポット類を汚いなどとは感じないアウトドアの健全な抵抗力がついている。

■ 焚火用ポットならやっぱりステンレス
ご飯が炊きあがった飯盒を地面に逆さにしてしばらく放置するのも「イヤだ」という類の人にキャンプはできない。焚火で煮込んで完成した料理を鍋ごと焚火の脇の地面に置いたら、「食うもんをそんなところへ置いて汚いじゃないか」と抗議されたことがある。別にすごい育ちのいい男ではない。案の定、彼はアウトドアライフになじめず、まもなくフィールドに現れることはなくなった。
焚火での調理を主体に考えたとき、ポット類をステンレス製にしたのには理由がある。焚火で付着した煤をそのままにして収納するとさすがに汚れがほかのものについてしまう。使ったあとは、煤を払う程度に洗う。このとき、アルミ製のポットだと、煤と一緒に表面を保護しているコーティングまで削ってしまい、腐食の原因となる。その点、ステンレス製ならさほど気を使う必要がない。
それに、ステンレスならかなりの高温にさらしても問題ないだろう。アルミと違い、アルツハイマーの原因となる物質が料理に溶け出す(ウソかホントか知らないが)心配もない。ダッチオーブンと違い、鍋の中に調理済みの食料を入れたまま翌日まで保存することだって可能である。
■ 焚火の次にやるべきは?
ステンレス製はアルミより重いが、その分、頑丈である。道具類をザックで背負って運搬するわけではないので重さはまったく問題ない。野外特有のラフな扱いにも耐えてくれる。熱効率でアルミに劣るが焚火となると熱効率に神経質になる必要はない。高価で軽量のチタンよりははるかに熱効率がいい。つまるところ、焚火キャンプではやっぱりぼくにはステンレス製がいちばん心強いのである。
ポットなどの道具だけを変えてもあまり意味はない。これからだんだんにぼくらが目指す機動性のあるキャンプのスタイルを模索していきたい。
7月に予定しているキャンプは、諸般の事情からまだ従来型でいくつもりだが、秋からはがらりと一新できたらいいなと思っている。
ただ、まだ現役で会社勤めから離れることができないので、当分、ぼくのキャンプはオーバーナイトキャンピングが増えそうである。そうなると、機動性が不可欠になる。焚火という面倒を採り入れながら、楽なキャンプを実践する。この二律背反をいかにして解決するか? 自信はある。
というわけで、そろそろぼくなりにキャンプの奥義をきわめてみたいと思っている。決して道具集めに奔走してばかりいるわけではない……つもりなのだが。