せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

吐きそうな子のはなし

2010-06-09 05:03:31 | 小説
吐く。やばいやばいやばい、吐く。
昨夜は珍しく早く寝て、明日は学校ででも友人と遊ぶ約束をしてるからって楽しみに寝た。明日は言いことありそうだなんて柄にもない事考えてみたりとかして、なんか夢を見て飛び起きたらこれ。朝飯を見たら普通に腹は減って、詰め込んでも戻すようなことは無かったのにただ胃の中に重く燻りせり上がって来ようとする鉛のような感触だけがどうも消えてはくれない。
学校で吐こうものなら友人は明日から俺を嘔吐物と呼ぶだろうからそれだけは避けたい。誰にも会わずに、今日は遊びも断って誰にも関わらずに居たい。朝必ず来るはずの友人を避けて早く学校に行かなければと思い立ち上がった瞬間、間抜けなことによろけてドアに頭を強打。そのままひっくり返る。

(あ、やばいかも)

目の前がぐるぐる回って、あるはずのない記憶がくるくると再生された。待ったこれは記憶じゃない。ああそうだ、今日の夢だ。確かにこんなのを見た気がする、毎朝迎えに来るむっさい男の友達がいて、そんで俺は、俺―――

「…うそだろ」

あまりの事にしばらく玄関でひっくり返ったまま、見慣れた友人の顔がぬっとドアから出て湧いた。一瞬目を見開いたあと、そいつは俺を見下ろしてさも馬鹿にしたように指をさして腹をかかえだす。ちくしょうこいつ殴りたい、俺は今人生で一番最悪な気分だ、なんかもう吐きそうってか、これは吐く。駄目だ駄目だ吐く吐く吐く吐く。起き上がった途端顔から血の気が引いてまた蹲る俺に今まで笑っていたそいつもさすがにヤバイと思ったのかしゃがんで目線を合わせてくる。馬鹿止めろ吐いちまうっつってんだろ。いい加減にお前本当、ああもうやめろ。やめろこっち見んな心配そうにすんなお前わかってないだろ。俺はお前のせいで吐きそうなんだよ、どれもこれもお前が俺の夢なんかに出やがるから。俺は本当なら今日普通にお前と学校に言って友人と遊んで帰るはずだったのにこんなトコで吐く羽目になるとは、もう二度と学校には行けそうにない。いいか?吐くぞ。お前が全部悪い、

「   、  」

―――
(吐きそうな子のはなし)


吐きそうっていっても嘔吐物じゃないから