谷沢永一氏は、私を自虐史観から救ってくれた一人でもあります。谷沢氏をやざわと最初は呼んでいましたが、(たにさわ)というのが本当だと知ったのも、何度も図書館であさって知りました。
図書館で借りた本は数多くありますが、気に入った本は古本屋を探し回って手に入れます。本当に雀躍(こおどり)するような本に最近はあまりで会わなくなってきましたが、とにかく本は好きです。
産経抄についている仮のタイトル「売れ筋でなくとも良書を売る」と出ていますが、山本夏彦翁がいつも言っていますがベストセラーというのは、普段読まないやつが読む本だと喝破しています。
芥川賞作品など、初めから読む気がしませんし読む気もありません。本は本当に相性でしょう。久世光彦(てるひこ)氏の著作を探し回っています。読んでいたころはずいぶん知らない歌がありました。「マイ・ラスト・ソング」という本です。
今なら、パソコンで検索すればほとんどの歌が出てきますユーチューブ入りで、その歌を全部再現して見せてくれます。こんな世が生きているうちに実現できるとは夢にも思いませんでした。
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【産経抄】 2016年11月27日 付
「売れ筋でなくとも良書を売る」書店…吉凶どう出るか
太閤秀吉がお伽衆(とぎしゅう)にたずねた。「世の中に一番たくさんあるものは何か」と。「人でございます」と答えたのは、知恵者の曽呂利(そろり)新左衛門である。秀吉はさらに問うた。「一番少ないものは」「人でございます」。
▼評論家の谷沢永一さんが昔日のエッセーでこの頓知話に触れていた。筆はこの後、明治期の人物評へと向かい、数人の名を挙げては谷沢流の一刀両断で斬り伏せている。新左衛門の言う「人」とは才知豊かな「人物」のことだろう。ペロリと出した舌が目に浮かぶ。
▼「本好き」を表題にした自著もある谷沢さんなら問答にある「人」を「本」に置き換えて、毒を吐くかもしれない。「一番少ないものは何か」「本でございます」。毎年、万単位の新刊が世に出る出版事情を重ね合わせると、良書と出会うにも幸運の手助けが要る。
▼知られた警句に「悪書にまさる泥棒はなし」がある。選書の目利き、つまり売る側のセンスも大事になる。「売れ筋でなくとも良書を売る」を掲げたこの書店の吉凶は、どう出るだろう。青森県八戸市が、公営の「八戸ブックセンター」を来月4日にオープンする。
▼「本のまち」を掲げる市の看板施策で、海外文学や芸術などの選書を手厚くするという。売れ筋を追えばコミックや流行作家の作品に偏り、売れなければ足が出る。推計年約4千万円の赤字を「読者」たる市民が「文化への投資」と、大目に見てくれる保証もない。
▼当座は世に埋もれているであろう「本」を掘り出しながら、読者の顔色をうかがう日々が続くだろう。谷沢さんが書いている。「雀躍(こおどり)する書物を探しだすまでの、僅かな忍耐が実は非常に重要」(『人間通』)だと。
人と本との相性は男女の機微に似て実に難しい。良縁を祈ろう。
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そう言えば、曾呂利新左衛門も、小学校の頃立川文庫で覚えた名前です。猿飛佐助や三好青海入道も、霧隠れ歳三や真田十勇士や、塚原卜伝もみんな講談本で覚えた名前です。
今夜みたいな寒い夜は、夢中で炬燵の中で読みふけったものです。夢中で読める本はいい本です。いい本は夢中で読めます。時間を惜しんで読む本もいい本です。
池波正太郎氏の『剣客商売』も全巻持っていますが、あのあたりが何遍読んでも楽しい本だと言えます。