感性のままに。

平凡な主婦の独り言です。

老夫婦の笑顔

2009-11-08 10:41:32 | 日記
昨日は、義母(夫の母)の姉夫婦の家に、義母を連れて夫と行った。

この老夫婦には、私達の結婚式以来会っていない。

ここから車を走らせること、1時間半。

その家は、150坪ほどもある敷地の中に、玄関まで植木が一杯植えられていた。

二人共85歳の老夫婦は、近くに長男家族が住んでいるとはいえ、二人暮らしである。

お婆ちゃんは20年前に胃癌で胃の全摘手術をし耳も少し遠く、お爺ちゃんも足腰を患っている。
しかも、二人共少しボケているようだ。

初めは、家の門構えといい、玄関の広さといい、キチンとした裕福な印象だった。

予め、義母から少しボケているとは聞いていたが、茶の間に入り話をしている間に『あらら』と思うことが・・・・・。

お昼時にお邪魔すると言うことで、途中で精進寿司を5人分買って一緒に食べるつもりで持って行った。

そしたら、その2パックをサッサと仏壇と神棚に上げてしまった。
残りは3パックしかない・・・・。
でも、人数は5人。

まあ、いいか。
年寄は少ししか食べないから、小皿をもらって皆で食べよう。

その小皿がなかなか出てこない・・・・。
「私やりますよ」と言っても、頑なに拒否。

ようやく小皿が出て来たので、さて、食事。

お茶をお爺ちゃんが入れてくれるのだが、今度は急須が見つからない。
茶だんすには沢山急須があるけれど、どうしても「いつも使っている急須」でなければいけないと言う。

それもようやく見つかり、お茶を入れてくれる。
しかし、お茶碗に少ししか入っていないので、すぐに継ぎ足さないといけない。
またまた、お替りのお茶を入れるまでに凄く時間がかかるので、
「私やりますよ」と言って、ポットと急須を私の場所に持って来て、私がお茶を入れることにした。

しかし、お寿司の3パックは、お婆ちゃんがお爺ちゃんに1パックを渡してしまったため、お婆ちゃんと義母で1パック、私と夫で1パックと言う割り当てになってしまっていた。

まあ、ご飯を食べに来たわけじゃないから、お茶菓子の代わりと思えばね。

そこへ、近所の人が柿を持って来た。

丁度いいと、お婆ちゃんはその柿を私達に御馳走してあげようとしたが・・・・。

「ジイチャン、小刀ってどこに行った?」
と始まった。

「はて?俺は知らんよ。触ってない。」

これはまたまた、探すのに時間がかかると思い、
「あ、小刀じゃなくても、他の普通の包丁でいいですよ。私が剥きますから。」
と申し出るも、しつこく
「小刀がない」としか言わない。

「他の包丁ないんですか?」
と言うと、
「包丁ね、1本買うと、すぐになくなるのよ。」と!

「なくなる、って?」
「息子が毎日来るんだけど、いつも包丁を持って帰るみたいなんだよ。」
「え?そうなんですか。でも、包丁がなかったら困るでしょ?」
「・・・・・・。」

包丁がないんじゃ、柿を剥けないもんね。

「こんなに御馳走持って来てくれたんだから、この柿、持って帰りなさい。」
と、その柿を全部私達に押し付ける。

「じゃあ、頂きます。」

「これ、私が甘柿を頼んだんだから、美味しいよ。」

しかし、どう見ても「甘柿」ではない。
形は八珍柿(渋抜き済み)そのものだ。

義母が「これ、甘柿じゃないんじゃない?八珍だわ~。」
と言っても、
「いやいや、甘柿頼んだんだもん。」
と言って聞かない。

「どれ?」とお婆ちゃんは皮の付いたまま拭きもせずガブリとその柿をかじった。

・・・・中身も見るからに、八珍柿。
甘柿って、ゴマのような点々が沢山ないと渋くて食べられないが、これには、全くゴマがなく、綺麗なオレンジ色。

「ありゃ~、なんだろね~。ゴマがないけど渋くないね。」

だから、渋抜きしてある八珍柿だってっ!

もうこれ以上追求することはやめよう。

さて、食事も終わったので、おいとますることになり、私は使ったお皿とお茶碗を片付けることに。

それを持って台所に入ったが・・・・・う~ん、これはどこに置いたらいいものか?
しかも、何だか鼻をつく匂いが・・・。

ほんとはお皿等を洗おうかと思ったが、とてもそんなことができるような状態ではない。

一応食卓テーブルはあったけど、その上にあるお皿はホコリだらけだし、床もいつお掃除したのかわからないくらいゴミだらけ。

きっと、お皿も使ったことがないのかも?
包丁なんていらないのかも?

少なくとも、ここで料理ができるとは思えない。

息子が毎日朝晩やって来るそうだが、きっと、食事も持ってくるのだろう。

きっと、包丁があると危ないから黙って持って帰るんじゃ?

わかる気がする・・・・。
ストーブ使ってるのだって、危ないって思ったもん。

その息子は、毎日来るのは大変だろうけど、たまにはお掃除してくれないのかな?
その奥さんは?
色々あるんだろうね~。

でも、あの台所見たら、ちょっと悲しくなった。
ちょっと見は、凄くキチンとしてる老夫婦だけど、内情は全然そんなことなくて、毎日二人でやっと生活しているんだろう。

救いは、二人共の言葉。
「こんなに御馳走頂くなんて、ほんとに有難いことだね~。」
「こうやってあんた達に会えるなんて、幸せなことだね~。」
何かにつけ、「有難い」「幸せだ」と言う。

そして、ニコニコ笑顔のお婆ちゃん。

20年前とは言え、胃癌で胃の全摘してるとは思えないくらい、お寿司をパクパク「美味しいね~。」と言って食べていたお婆ちゃん。
少し話は噛みあわない所はあったけど、あの明るさと感謝の心は、見習うところが多い。

私達が帰る時に、「また来てね」と手を振りながら目には涙が溢れていたけど、お婆ちゃんはニコニコの笑顔のままだった。

とってもとっても可愛いお婆ちゃんだった。