その元;ポルノ女優は、実は結構年齢がいっていて、最初、前衛藝術の分野で活動を始め、検死局での勤務を経て、ポルノ女優となったのだった。そこまでは、男も知り得ていた。しかし、その後、空白の四年間とされていた期間に於いて、ヌード・モデルや前衛藝術家らと結成されたパンク・バンドでの活動が在ったのだった。男も、名前ぐらいは聴いたことがあった。そのバンドは半ば伝説的なバンドで、ノイズ・ギターのコラージュに、叫び声の彩りを添えた、狂気に充ち満ちて狂瀾怒涛な音楽は、唯我独尊、孤高の存在だった。そして、音楽以上に伝説と化しているのはその、ステージングの噂だった。大音響のノイズの中、メンバーが全裸でファック・シーンを繰り広げるなど当たり前。蛆の湧いた鶏の頭に性器を擦りつけ自慰行為をする。自らの血液、小便を浣腸し、更にその排泄物を喰らう。観客をステージに上げて小便をさせ、それを飲み干す。など、「常軌を逸した」と云う程度の沙汰ではなかった。その後、バンドは解散。深夜番組に出始めるようになった。すると、明確な自分の意見を持ち、歯に衣着せぬ物言いが話題となり、報道番組を任されるまでになったのだった。そして、更に驚愕すべきは、惨殺されたのではなくして、火を放った部屋の中で、息絶えるまで自らの身体にナイフを滅多刺しにした、覚悟を決めた自殺だったのだ。私生活に於いて、極度の孤独に苛まれていたらしいが、そんな様子はブラウン管からは全く窺い知れず、只、美しかった。
※ 著者註;元ネタ;DARK SIDE OF THE ROCK , T.G.
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