リハを終えて着替え室に戻り、荷物をクロークへ預けにロビーへ出ると
今日のために駆けつけた新婦の友人達が集まっているところだった。
中には数年ぶりに会う顔もあり、懐かしさ頻りである。
きゃあきゃあと再会を喜びあい、今一度トイレに入る者、喉の渇きを癒す者、
それぞれに受付開始までの短い時間をそわそわと過ごす。
づなのワンピ姿を見て「その服だと、妊婦のおなかも目立ちにくいね☆大丈夫!」と
言ってくれる友もいるのだが、しかしこのおなかが目立ちにくいとなると
人様の目には「ただの太った人」と映るのではなかろうか。
ならばいっそ明らかにそれと分かるほどに目立ちに目立ってほしいものだ。
かように女心とは繊細で面倒で頑丈で厚かましい。
受付のあたりがざわめいてきたのを機に、づな達も列に並ぶ。
「づなー!」
呼ばれて顔を上げると、黒のワンピースを身に纏ったさみ(仮名)がいた。
初めて出会った時は幼さと若さがあふれんばかりのティーンエイジャーだったさみも、
すっかり大人の女の色香を漂わせて「受付嬢」という言葉もぴったりに佇んでいる。
はしゃいで手をふる姿は変わらず愛らしい。なこが「長谷川潤に似ている」と
言ったものだが成る程頷ける。
ちなみにそんななこをづなの母親は「木村佳乃に似ている」と言う。
更に余談だが年配の男性はづなを「マルシアに似ている」と言う。ご本人には失礼だが全く嬉しくない。
もたいまさことは血縁関係にあるのではないかと我ながら訝しむことはある。
会場に入り、席につく。ああ、いよいよだ。
やがて司会の方がマイクをとり、この慶びの宴の開演を告げる。
場内の灯りがすうっと落とされ、皆の視線が一斉に扉の方へ向けられる。
しょこ・・!!!
純白のウエディングドレスに身を包み、これまでで最高に輝いているしょこがそこにいた。
いつもと変わらない笑顔がそこにあり、しかしいつもとはやはり違う、
まさに「極上」とでも言おうか。そんな眩いばかりの満面の笑顔。
この時点でもう目頭が熱くなるのを感じながら、新郎と共にゆっくりと歩みを進めるしょこを
誰もがあたたかく、うっとりと見守った。
そして厳かに人前式が始まる。
「じんぜんしき」とはずっと「神前式」と思い「和装で三々九度を交わすのだな」と
勝手なイメージを作っていたのだがどうやらそうではないのだなということをこの年になって知った。
早速、先刻リハーサルを行ったばかりの「約束の花」が始まる。
名前を呼ばれて事前の打ち合わせどおりに並び、そしてリハの時になって初めて
「カードに書いてあるメッセージのあとに、みなさんそれぞれに新郎新婦へ送る言葉を
おっしゃって下さい」と聞かされていたのだがさてどうしたものか。
始まってみてその時思いついた言葉を口にしようなどと思っていた自分が憎い。何もうかんでこないではないか。
おめでとう、おしあわせに、そんな月並みな言葉ばかりがぐるぐるとまわる。
そんなづなはさておき、皆がそれぞれにカードに書かれたメッセージとそれぞれのお祝いの言葉を述べて
手にしたバラの花でゆっくりとリングピローをひとつひとつ飾ってゆく。
とりわけ、しょこのお母上のメッセージが響いた。会場内でも鼻をすする音があがる。
しょこの顔を見ながら、笑って言えると思っていた。
づなに渡されたメッセージカードは「愛情の花」。
「二人の愛情で、お互いを包んで下さい」記されていたのはそんな言葉だったと思う。
読み上げて、おめでとうと言おうとした瞬間息ができなくなった。
しょこの顔を見ると言葉のかわりに涙しか出てこないと思った。
嗚咽しそうになるのを懸命に堪え、数秒の沈黙のあと、どうにか息を吸って声を出したが
自分でも何を言ったのかよく覚えていない。
ごめんしょこ、ちゃんとできんかった・・
でもほんとおめでとう、おしあわせに・・
今日のために駆けつけた新婦の友人達が集まっているところだった。
中には数年ぶりに会う顔もあり、懐かしさ頻りである。
きゃあきゃあと再会を喜びあい、今一度トイレに入る者、喉の渇きを癒す者、
それぞれに受付開始までの短い時間をそわそわと過ごす。
づなのワンピ姿を見て「その服だと、妊婦のおなかも目立ちにくいね☆大丈夫!」と
言ってくれる友もいるのだが、しかしこのおなかが目立ちにくいとなると
人様の目には「ただの太った人」と映るのではなかろうか。
ならばいっそ明らかにそれと分かるほどに目立ちに目立ってほしいものだ。
かように女心とは繊細で面倒で頑丈で厚かましい。
受付のあたりがざわめいてきたのを機に、づな達も列に並ぶ。
「づなー!」
呼ばれて顔を上げると、黒のワンピースを身に纏ったさみ(仮名)がいた。
初めて出会った時は幼さと若さがあふれんばかりのティーンエイジャーだったさみも、
すっかり大人の女の色香を漂わせて「受付嬢」という言葉もぴったりに佇んでいる。
はしゃいで手をふる姿は変わらず愛らしい。なこが「長谷川潤に似ている」と
言ったものだが成る程頷ける。
ちなみにそんななこをづなの母親は「木村佳乃に似ている」と言う。
更に余談だが年配の男性はづなを「マルシアに似ている」と言う。ご本人には失礼だが全く嬉しくない。
もたいまさことは血縁関係にあるのではないかと我ながら訝しむことはある。
会場に入り、席につく。ああ、いよいよだ。
やがて司会の方がマイクをとり、この慶びの宴の開演を告げる。
場内の灯りがすうっと落とされ、皆の視線が一斉に扉の方へ向けられる。
しょこ・・!!!
純白のウエディングドレスに身を包み、これまでで最高に輝いているしょこがそこにいた。
いつもと変わらない笑顔がそこにあり、しかしいつもとはやはり違う、
まさに「極上」とでも言おうか。そんな眩いばかりの満面の笑顔。
この時点でもう目頭が熱くなるのを感じながら、新郎と共にゆっくりと歩みを進めるしょこを
誰もがあたたかく、うっとりと見守った。
そして厳かに人前式が始まる。
「じんぜんしき」とはずっと「神前式」と思い「和装で三々九度を交わすのだな」と
勝手なイメージを作っていたのだがどうやらそうではないのだなということをこの年になって知った。
早速、先刻リハーサルを行ったばかりの「約束の花」が始まる。
名前を呼ばれて事前の打ち合わせどおりに並び、そしてリハの時になって初めて
「カードに書いてあるメッセージのあとに、みなさんそれぞれに新郎新婦へ送る言葉を
おっしゃって下さい」と聞かされていたのだがさてどうしたものか。
始まってみてその時思いついた言葉を口にしようなどと思っていた自分が憎い。何もうかんでこないではないか。
おめでとう、おしあわせに、そんな月並みな言葉ばかりがぐるぐるとまわる。
そんなづなはさておき、皆がそれぞれにカードに書かれたメッセージとそれぞれのお祝いの言葉を述べて
手にしたバラの花でゆっくりとリングピローをひとつひとつ飾ってゆく。
とりわけ、しょこのお母上のメッセージが響いた。会場内でも鼻をすする音があがる。
しょこの顔を見ながら、笑って言えると思っていた。
づなに渡されたメッセージカードは「愛情の花」。
「二人の愛情で、お互いを包んで下さい」記されていたのはそんな言葉だったと思う。
読み上げて、おめでとうと言おうとした瞬間息ができなくなった。
しょこの顔を見ると言葉のかわりに涙しか出てこないと思った。
嗚咽しそうになるのを懸命に堪え、数秒の沈黙のあと、どうにか息を吸って声を出したが
自分でも何を言ったのかよく覚えていない。
ごめんしょこ、ちゃんとできんかった・・
でもほんとおめでとう、おしあわせに・・