2024/2/18
・ムーア人の軍人オセローが、腹心のイアーゴーの謀略で妻の不貞を疑い始め、結果みんなが不幸になる話。
・オセローの演武から始まる。たぶん、彼の屈強なフィジカル面を示すのは、後の展開との対比として重要。
・イアーゴーの間接的に人を不安にさせる言動が巧みなので、四大悲劇では『オセロー』が一番好きだった。
・久しぶりに見たら、そのイアーゴーの策略が何でもかんでもうまく行き過ぎていて、逆にノイズになる。
・自分の感覚だと「これからこんな悪いことするぞ」と一人語りすると何らかの邪魔が入って頓挫するはず。
・彼は悪意の塊だったけど、悪意すらなく彼と同じような言動をとる人は、現実に結構いるような気がする。
・舞台演出も衣装も抑制が効き過ぎて見え、中盤くらいまでは少し物足りなく感じてしまう。
・途中15分の休憩とスタッフの座談会映像がある。
・観劇途中で作り手による解説は野暮だし、「社会」の表現と言われてもよくわからなかったけど、SNS上にいる毒にはなっても薬にはならないようなノイジーな傍観者たちみたいなものかなと思ったら、少し腑に落ちた。自分が作中で誰に一番近いかと言えば彼らだ。
・作中の女性蔑視的な部分を穏当な表現でごまかさず、むしろ強調することで、その共同体の歪みを見せる。
・最後にみんな不幸になる悲劇だからそういうことができる。あの共同体は、だからダメなんだという。
・不貞を疑うオセローが妻のデズデモーナに対して犬をあしらうような身振りをするのもかなりひどい。
・早いうちに「あなたがキャシオーと仲良くなるのが不安だ。なぜなら~」と心の内を明かせていれば少しは違っただろうに、すぐに「嘘を暴いて罰してやる」に変わる。
・それをさせない前振りは何重にもあるけど、女性を下に見て信用していないことが前提にあるように感じる。
・本作の盛り上がりも、デズデモーナと、その従者でイアーゴーの妻のエミーリアが二人きりで語り合うところがピークだった。
・特にエミーリア。作中の説明はなかったと思うけど、顔の傷や腕(たぶん)、PTSDが入っているような夫への反応から、裏で暴力受けていたのかなと思ったりした。悲しい。
・娼婦のビアンカも魅力的だったし、おそらく『オセロー』では珍しいと思われる、女優の存在感が強い公演だった。
(札幌シネマフロンティア)
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