20世紀初頭のニューヨークを舞台に繰り広げられる
絢爛豪華な愛と野望の物語
物語は、ヒロイン・エマの現在から始まって過去の回想シーン、
そして最後に現在へ、第一部から第六部まで、
それぞれ年数ごとの出来事が記されていてとても読みやすいです。
面白いのは、部の題名の脇に書かれた有名な人物の言葉。。
例えば第四部「高原」には、かのニーチェの言葉――
人生は頂点に向かってつねに厳しくなっていく―――寒さがまし、責任がます。
これらの脇書きにより、その部の内容を鮮明に表現しているのです。
第一部。。世界有数の女性実業家エマ・ハートは、自分の追い落としと
事業の分割を画策する陰謀の存在が――恐るべき裏切り者が――
彼女自身の子供たちである事を知ります。
心労からの病を乗り越え反撃の準備を整えたエマは、
故郷ヨークシャーの別荘に親族会議を開くべく、皆を招集するのです。
そして物語は一転、過去の回想シーンへ。
1905年、ヨークシャーの領主の屋敷の使用人エマは初恋に破れ、
ただ一人故郷を去ります。
16歳で妊娠、孤独で頼るべき何者も持たず、わずかな蓄えを手に、
エマはひたむきに働き続けます。
貧困への憎悪と、自らの運命を狂わせたフェアリー一族への復讐の念を燃やし、
どんな犠牲もかえりみずただひたすら事業を拡大していくエマ。
ちなみにエマの起す事業はファッション業界です。
大胆で美しい独特のセンスを持つエマの類稀なる才能を描写する数々のシーン。。
―――ラインは控えめでエレガント、細かな部分で繊細なバランスを保ち、
みごとな色の組み合わせがまったく意外な効果を上げている。
エマの色彩感覚は、いささか大胆すぎるきらいはあるにせよ、
並外れていた。奇抜な取り合わせ――派手なピンクでトリミングした
ワイン・レッド、ハイライトとしてアップル・グリーンを配した紺、
ライラックをアクセントに使ったあでやかなシクラメン色、そしてその逆、
豊かな秋の色の数々を引き立てるのは純白、もやがかかったようなグレー
紫がかった青、さらにローズをちらした樅の木の緑――は
エマにしか思いつかないものだ―――
そして買収した一区画を見事な百貨店に改装し、オープンするシーンは
なんとなくジュディス・クランツの「スクープルズ」のオープンシーンと
似ている気がしますね。
わくわくするような描写の中でも、ひときわ素敵なのが
”エリザベサン・ガジーボ”と名づけられたカフェ。。
―――田園風景の壁紙や白いペンキを塗った四つ目格子、
装飾的な刈り込み、さらには色とりどりの精巧に作られた小鳥を入れた
鳥篭を配してイギリスの庭園風にしつらえた。―――
この百貨店はもちろん大成功し、みるみるうちに業界の名士に
のし上がっていくエマ・ハート。
とにかくサクセス・ストーリーは大好きなので、このグングン成功への道を
ひた走る姿は読んでいて痛快なのですヨ~
そして物語は再び現在へ。。
血の滲む苦労をして築き上げたこのハート帝国を守り抜くために
全力で戦う女性実業家エマの、ラストにおける非情な裁断は、
かなり衝撃的でしたが、変なハナシ・・・胸のすく感動でした。
現代に生きるすべての女性に勇気と希望を与える世界的ベストセラー
との宣伝文句に恥じない面白さです
素材提供:AICHAN WEB