プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『秋のホテル』

2005-11-25 10:44:08 | 作家は行

  アニータ・ブルックナーです。

 

ブッカー賞受賞のこの作品。

なんとなく今まで読んだ英文学とは少々趣が違いまして・・・

硬質で厳しく抑制された理性的な文章ですね。。

ストーリーらしいストーリーが無いので、説明が難しいのですが・・。



季節は秋。スイスのジュネーブ湖畔に建つ「ホテル・デュ・ラック」を舞台に

それぞれに様々な事情を抱えた人達の人間模様が繰り広げられます。

ここの宿泊者達は皆、個性豊かです。

実は一時的であれ、世の中からその存在を隠す必要のある

女性達ばかりなのです。

中でも強烈なのがアイリス・ピュージー夫人。

一見華やかで社交的。でも・・・。

イーディスは、猿のような愛犬キキを連れたモニカがお気に入りです。



この作品のヒロイン、イーディス・ホウプは女流作家です。

訳あって、このホテルで謹慎する為、訪れています。

ここに至るイーディスの身に起きた出来事が

物語後半に初めて明かされますが、

半ば人生をあきらめてしまっているかのようなイーディスの

抑制された感情の暗い深淵の原因は・・・とても衝撃的なものでした。

 

このホテルで、執筆作業と同時に愛人デヴィッドに宛てた手紙を書き綴りながら

深い孤独と向き合い、宿泊客達と関わっていくイーディスは、

自分自身の事も客観的に冷静に見つめていて痛々しいくらいです。 

 

この閑散とした季節外れのホテルに訪れる男性はほとんどいない・・・

そんな寂れた雰囲気の中に登場したネヴィル氏とイーディスの

少々深くて危うい会話はかなり印象的でした。

「あなたの笑顔、ほんのわずかだけど、冷たいわね」―――

「もっと親しくなってくだされば」―――

「ほんとうの冷たさが、おわかりになりますよ」



ラストにある出来事が起こり、新たに過去の自分と向き合うべく

書いた最後の電文「モドル」の文字は、ちょっと変かも知れませんが・・・

私自身、なんとなく救われたような気持ちになりました。



この小説の独特の雰囲気は、後書にもありますが、

ちょっとフランス映画っぽいです。

愛・孤独といったテーマをここまで淡々と乾いた文体で描ける作家さんは

英国には珍しい気がします。。



読み込むほどに味わい深い作家さん。

人として当たり前に行うべき事で―――例えば親孝行とか―――

でも意外ときちんと出来る人が少ない現在、

そういう類の事を淡々と気負うこと無く書ける数少ない作家さんです。

そして、じっくりと腰を据えて味わいたい大好きな作品です

 

素材提供:Pari’s Wind


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4 コメント

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こんばんわ (kju96)
2006-06-16 09:57:15
ヨーロッパの休暇の過ごし方。

穏やかな気分にさせてくれる良い本ですね。

プラムさんが言われるように

味わいがありますね。

何度となく読みたくなる作品ですね。

旅行には必需品の一冊ですね。
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キャ~♪ (プラム)
2006-06-17 11:01:37
 お好きですか??

なんかとっても嬉しいです~。。

ブルックナーが好きな男性にお会い出来るなんて・・・!



なんかうまく言えないけど・・・

ミステリーとかハードボイルドとかが好きな男性より

この手の作品が好きな男性って・・・なんか良いです



ブルックナーは・・・とにかく良いですよね~。

でもこのレヴュー、イマイチ気に入らないので^^;

もうちょっと手を加える予定です・・・
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Unknown (豆猫)
2012-08-04 12:54:42
今、ちょうど半分です。
面白いですね。
さーっと読みきってしまいそうです。
プラムさんのブログにこの本の題名があったことを思い出して、かりました。
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Unknown (豆猫)
2012-08-05 13:10:18
面白かった~
日本は、ほんとはこういう小説を書きたいんだけど
上手く出来ないのかなって思いました。

本音をズバッと、という感じで
淋しいけど共感していまいます。
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