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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『アクシデンタル・ツーリスト』

2007-01-18 10:30:05 | 作家た行

 アン・タイラーです。

 

主人公メイコンは42歳のライター。

主にビジネスマンを対象に、アクシデンタル・ツーリストと題した

旅行案内書シリーズを書いて生計を立ててる生真面目な男性です。

何から何まできちんとしてないと気がすまない性格は、

時として周りの人に不快感を与え・・・

遂には20年間連れ添った妻サラから別居を言い渡されてしまいます。

 

実はこの夫婦。一年前に思春期の息子を殺されてます。

二人の仲はこの事件を機に急速に冷えてしまってました。

が!メイコンはどうやら気付いていなかったようで・・・。

この作品の冒頭、二人の車中の会話からスタートするのですが、

正直・・・初めのうちはメイコンに対してあまり好感を持てません。

でもこれはアン・タイラー作品ではよくあることなのですネ^^

 

やむなく一人で生活することになったメイコンですが、

ペットの犬がとんでもない聞かん坊に変身

所構わず飛び回り、吠えまくり、人を咬む・・・

どうにかしなければ、という事で登場したのが女調教師ミュリエルです。

さ~ここからどんな物語が展開されるのか?^^

 

あらすじを読んだだけでは全然面白そうに思えないアン・タイラーですが、

その作品に外れはほとんどありません。

幾度と無くツボをつつかれ(笑)思わず吹き出してしまう

笑いとペーソスは相変わらず。。

何気ない日常の何気ない会話や出来事が、ここまで笑いを呼ぶものなのか??

アン・タイラー、凄過ぎっ

 

最初は全然魅力を感じなかったメイコン・・・。

サラや近所の人の言葉から、息子の死に対して何も感じてないのか?

と思わせといて、思いがけない形で抑えていたメイコンの深い悲しみを表現・・・

人間の持つ様々な個性を見事に描き切るアン・タイラーの表現力の

素晴らしさに唸りつつ、ついついホロッとさせられ、

気付くとメイコンがたまらなく愛しくなっているのです。

 

でも愛しいのはメイコンだけではありません。

登場人物一人一人が実に愛すべき人々でして・・・。

皆それぞれに何かを抱え、背負いつつ、一生懸命生きているのです。

個人的にはメイコンの妹ローズが一番のお気に入り・・・かな

もちろんメイコンの上司ジュリアンも大好き

 

アン・タイラーの作品は大抵、はっきりした結論が無いまま終わる

パターンが多いのですが、珍しくはっきりしたラストが妙に新鮮だったこの作品。

ちょっぴり切ない想いの中に・・・でもなんともいえない清々しい感動が込み上げ、

改めて、大好きだわぁ~アン・タイラーと思わずにいられません。

 

この作品が出版された当初の各メディアの絶賛の嵐は、

この作品が間違いなくアン・タイラーの最高傑作の一つと確立し、

アメリカで絶大な人気を誇る大きなきっかけになったことは言うまでもありません。

中でもワシントン・ポストに掲載された言葉―――

美しく、熱く、悲しいくらいに感動的で、そして元気の出る小説・・・

常識的に考えて、これ以上の小説はまず望めないだろう。

―――は、この作品の魅力を見事に表現していると思います。

 

この作品は「偶然の旅行者」というタイトルで映画化されてます。

でもきっと、原作の面白さ、素晴らしさを表現するのは難しかったでしょうね。

ラストに思わず快哉を挙げてしまうのは同じでしょうけど

これだけの作品が絶版とは・・・悲し過ぎです~。。

 

素材提供:AICHAN WEB


『アフリカの日々』

2006-10-13 00:19:27 | 作家た行

 アイザック・ディネーセンです。

 

知る人ぞ知る、20世紀文学最大の物語作者の一人と言われる女性作家です。

北欧デンマークの名家に生まれ、スウェーデンの貴族と結婚、

ブリクセン男爵夫人として北欧の貴族社会に身を置きます。

・・・が!1914年、28歳の時に貴族社会を捨ててアフリカに渡り

ケニアで広大なコーヒー園を経営!

やむなくこの地を去ることになるまでの18年間を書き綴った

ディネーセン自身の自伝文学がこの作品です。

 

この作品を初めて読んだ時の感動は・・・今もどう書いて良いのやら。

終始一貫、この作品を貫いているのは、ディネーセンのアフリカに対する

溢れんばかりの愛情・・・切ないまでの想い。。

でもねっとりしてなくて・・・寧ろサラッと心地良い・・・

まさしくディネーセンの美しい感性そのもので描いたアフリカなのです。

 

―――アフリカに着いて最初の何週間かで、私はアフリカの人たちに

強い愛情を覚えた。―――生まれつき動物への愛着を持つ人が、

動物のいない環境で成長し、長じて後に動物に接したとしよう。

または、樹木や森が本能的に好きでならない人が、二十歳に達して

初めて森に入ったとしてみよう。あるいは、音楽に耳の利く人が、

たまたま成人になってから初めて音楽を聴いたとしよう。

私の場合もこれらの場合と似かよっていた。―――

 

作品全体は五部で構成されてます。

第一部 「カマンテとルル」 

第二部 「猟銃事故・その後」

第三部 「農園への客たち」

第四部 「手帖から」

第五部 「農園を去る」

 

第一部では、アフリカの大自然の中で出会ったアンテロープの仔鹿ルルと

キクユ族の少年カマンテを主人公に、それぞれの生き様を描いた物語風で

カマンテにしてもルルにしても、ディネーセンに命を救われた事を決して忘れず

それぞれの形で恩を返す・・・けれど、決して自分自身を見失うことなく

誇り高く生きる様はとても印象的です。

最後に綴られたカマンテからの手紙はとても心に染み入ります。

 

第二部は近隣の住民の家で起こった猟銃事故・・・

ピストルを誤って撃ってしまった青年とその親、

撃たれて殺された青年とその親と、彼らを取り巻く人々とのいきさつを通し、

当時の法に基づいて裁かれていく過程を

淡々と肩入れせずにありのままを語っています。

この事からアフリカの人々と欧米人の考え方の違いが浮き彫りにされ

国によってこうも違うのかと、改めて衝撃です。

 

・・・とこんな感じで書いていっても、この感動は全然伝わりませんね~。。

なので、特に印象的だったシーンをちょっと抜粋してみます。

第四部のイグアナ編。

トカゲの一種で、形はあまり良くないけど、比類なき色合いの美しさは

宝石のかたまりのように輝き、ステンド・グラスを切り取ったように見えるそうで

この美しい皮を使って何か綺麗なものを作ろうと、

一度だけイグアナを撃ったそうです。

ところが、死んだイグアナはみるみる色褪せて蒼ざめ、

きらめくような様々な色彩は瞬く間に消えてしまった・・・。

ここの描写は実に凄い・・・考えさせられます。。

 

第四部のパニア編・・・笑うディアハウンド犬のお話です。

―――パニアに眼をやると、この犬はすこし離れたところで私を見つめ、

両の脇腹を笑いで波うたせているのだった。

眼が合うやいなや、パニアは私に跳びかかり、ぐるぐる踊りまわったり、

尾を振ったり、クンクン鳴いたり、私の肩に前脚をかけ、鼻を私の顔に

突きつけ、また身を放して後に戻り、しばらく笑いこけるのだった―――

う~ん。。見てみたい・・・

サッフォーの詩を語るオウムとか五百匹程もいるかと思われる

野犬の大群と遭遇した事。

更に農場を訪れる友人・知人・来客の幅広さ!

一つ一つのエピソードがワクワクドキドキ素晴らしい。。

 

でも自然の驚異も半端じゃありません。

バッタの大群やイナゴの大群が農園を襲い、

あっという間に食い荒らす様は物凄い迫力で、も~鳥肌物。

 

でも、農場を手放さなければ生きていく術が無くなってしまい、

遂に農園を去ることになる第五部は、とても感動的でした。

特にキクユ族の老人達がディネーセンの為にンゴマという踊りを披露すべく

集まってきたシーンの描写は圧巻です。

 

―――去ってゆくのは私ではない。アフリカを離れるなど、

私のとぼしい力をもってしては到底できない。逆に、

引き潮のようにゆるやかに、かつおごそかに私から遠のいて

ゆくのは、このアフリカのほうなのだ。――――

 

ディネーセンに関わった登場人物―――

終始一貫、ディネーセンに忠誠を貫いたキクユ族のファラ、

飛行機に乗せてくれた白人デニスとの特別な友情(実は・・・)、

キクユ族の族長キナンジェイ等々、実に印象的で愛すべき人々ばかり。。

 

読み終えたとき、思わず深い深いため息をつき、

じわ~っと心に浸透していく感動に暫し身を委ね、

遠い国アフリカに想いを馳せずにはいられなくなる素晴らしい書。。

壮大なアフリカのサーガと呼び名も高い、ディネーセンの最高傑作です。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『パッチワーク・プラネット』

2006-05-23 09:51:32 | 作家た行

 アン・タイラーです。

 

この作品の主人公バーナビー・ゲイトリンは30歳・バツ一、

職業はレンタ・バックという、便利屋のような肉体労働。。

 

ゲイトリン家の男達は、代々”天使”なる人物との出会いによって

人生を切り開いてきた、と言い伝えられておりますが

生憎、彼にはそのような出会いはありませんでした・・・が

ある日、遂に彼にも運命の出会いが??

 

この作品。

後書で、かの山田太一が書いてらっしゃるように

出だしを読んで、思わず「え?これ、アン・タイラーだよね??」

ってちょっとびっくりさせられます。

まるでミステリーかサスペンスか、とニオワセル書き出し。。

でも、もちろん何も起こりません^^

アン・タイラーは、何か劇的な事が起こっちゃったら、

かえってがっかりしてしまう作家さんなのです。

 

フィラデルフィアへ向う列車を縁として出会ったソフィアは

銀行に勤める、とてもきちんとした女性です。

バーナビーの目論見で出会った二人ですが、

実はソフィアの方が大いに気があったようで^^。

とにかく二人は自然と付き合い始め、結婚の話まで出るようになるのですが

主人公バーナビーは、どう考えても風来坊。。

しかも、語り手ゆえに肩入れしがちではありますが、

冷静に読んでみると、かなり曲者です。

でも、先行き希望の無い老人達の世話を、労を惜しまずし続けるバーナビーは

やはり魅力的で愛すべき人物なのですね。。

 

この二人の恋愛模様を中心に、彼らを取り巻く人々の日常が生き生きと描かれ

思わず笑ってしまう会話や仕草がそこここに鏤められていて

まさにアン・タイラー・ワールド全開

バーナビーの同僚で唯一の友達、と言って過言じゃない女性、

マーティーンはかなり好きなキャラです。

バーナビーの娘オーパルも、妙に大人びたところもあったりするけど

とっても愛らしい。。 

 

魅力溢れる愛すべき人間達の、ちょっとした気持ちの行き違いやズレなんかも

あ~こーゆー事ってよくあるよな~、なんて思わず納得してしまう・・・・

更に、老人達の現実を目の当たりに生きているバーナビーには

「人生、こんなもの」的な一種あきらめにも似た心境を抱えている節があり

まさにそれこそがアン・タイラーの小説に常に流れる

独特の味わいだったりしてるのです。

 

個人的には、数あるアン・タイラー作品の中で、

比較的読みやすくて分かりやすい、と思われるので

初めてアン・タイラーに挑戦する人にはお勧めしたい作品・・・かな。

 

素材提供:AICHAN WEB


『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』

2006-05-04 23:18:33 | 作家た行

 ウーヴェ・ティムです。

 

カレーソーセージ。。

ちょっと馴染みの薄い名称ですが、ドイツでは日本で言えばたこ焼きのようなもの。

屋台で食べる庶民の味なのだそうです。

で。。このカレーソーセージ誕生の由来を知るべく、この物語の語り手の「僕」が

レーナ・ブリュッカー夫人を訪ねるところからスタートします。

 

一応、語り手の「僕」、と書きましたがこの作品の語り手は、

現在と過去が縦横無尽に行き交う為、その都度別の人物に入れ替わります。

でもとてもスマートな文体なので、混乱することは全くありません。

まるで映画のシーンが入れ替わるような自然な形で流れていく・・・。

ホント、素晴らしいです。。

 

「僕」はカレーソーセージの発案者はレーナ・ブリュッカー夫人と確信していて

そのいきさつを知りたいが為に、延々とレーナの昔の恋話を聞かされるのです。

その恋話は、終戦直前の1945年4月、敗色濃いナチス・ドイツのハンブルクに

暮らしていたレーナが一人の水兵を家にかくまうところから始まります。

傍若無人な夫に去られ、子供達も戦争に狩り出されて一人暮らしをする

当時40代のレーナと、まだ20代の水兵ブレーマー。。

 

二人の出会いは、同じ映画館に映画を観に行ったとき・・・。

予告編が終わらないうちに鳴り出した空襲警報をきっかけに

レーナのアパートに逃げ込みまして・・・そのまま二人は同棲してしまいます。

なんだかこんな風に書くといかにも安直に思われそうですが

実際読んだ方ならお分かり頂けるように、それ程単純な事ではないのです。

 

レーナは大人の女の貫禄・・・ある意味、熟練した手口でブレーマーを誘惑(?)

ブレーマーもまた、戦争で命を落とす事を恐れ、発見されない可能性に賭けて

レーナの元に留まります。

脱走兵となってしまったブレーマーは一歩も外に出れず、

外から仕入れてくるレーナからの情報でしか戦況を知るすべがありません。

で・・・実は既に戦争は終わっているにも拘らず、その事実を隠し続けるレーナ。

複雑な女心なのですね・・・。

 

この作品に登場する脇役達もとても魅力的で一癖も二癖もあり、

中でも極めて印象的だったのはコックのホルツィンガー。。

ドイツの勝利を伝えるニュースの前に密かに料理に細工をし

キャスターに激しい嘔吐を催させたシーンは・・・素晴らしかったです

 

で。。ここからどうやってカレーソーセージ発案に話がいくのか??

「僕」が聞き出せるまで、読者も延々と待たされるのです。

思わず焦って結論に飛びつく「僕」・・・。

少々狡猾な^^ブリュッカー夫人は中々教えてくれません。

でも・・・遂に知った誕生の由来は・・・本当に感動的でした。

淡々とした話運びではありますが・・・思わず涙が出そうになったくらい。。

なんていうか・・・こういう感動があるから文学系って大好きなんだなぁ。。

 

レーナ・ブリュッカー夫人の大地に根を張った逞しい生き様に

思わず喝采を送りたくなる素晴らしい作品です。

 

素材提供:Pari’s Wind


『歳月のはしご』

2006-04-07 23:34:44 | 作家た行

 アン・タイラーです。

 

40歳のディーリアは、何不自由のない日常生活の中でなんとなく心が満たされず

最近、家族が自分の存在を疎ましいと思っているように感じはじめています。

大学生の長女スーザンと長男ラムジーを筆頭に、

高校生のキャロルまでディーリアに対して批判的で

だんだん子供たちが自分から離れていくのが寂しくてたまらない・・・

そして更に、夫のサムが自分と結婚した目的が、

ディーリアの父親の医院にあったらしいと判明し、ショックを受けます。

ある日、家族で海水浴に出かけたとき・・・

ディーリアはなんとそのままふらっと家出をしてしまうのです。

 

なんとなくの家出だったにも拘らず、一人の生活を始めてみると思いのほか快適で

家族から「帰ってきて」という声が聞けない事に寂しさを感じつつ

住む家も仕事も見つけ、新しい人間関係を築きあげていきます。

 

赤の他人とはうまくいくのに、本当の家族とはうまくいかない・・・。

普通の人々が持つ悩みそのものですよね。。

他人から見れば小さな悩みでも、本人にとっては自身の存在価値を問うくらい

大きな悩みだったりします。

そして、こういった人間の持つ本質的な悩みや不安を描かせたら

アン・タイラーの右に出る人って、そうそういないと思われます。

そして、そんな数あるアン・タイラーの作品の中でも、

この『歳月のはしご』はとても素晴らしいです。

そこはかとなく漂うユーモアのペーソスも相変わらず健在^^

 

ある営業マンとの会話―――

「セールスマンってよく考える人種なんだよ。なんでかというと、

車に乗ってる事が多いからだよ。

ベルが新婚旅行は車にしたいって言うから、

俺は、考えごとしながら運転するほうなんで、

彼女のほうに注意が向かなくなるって言ったんだよ」

「はあ」ディーリアは言った。それだけではまともな話し相手になっていない

という気がして、付け加えた。「私のときは車で新婚旅行をしたけど」

「ほんと?」―――「私たち、注意が向かないってことはなかったわよ」

ラム氏はちらっとディーリアを見た。ディーリアはコホンと咳をした。

何かきわどい話をしていると思われたらしい。―――

 

何気ない日常生活における何気ない会話や仕草・・・うまいですよね~。。

ラスト近くの、不動産屋さんとの真夜中の会話なんて最高です^^

人間の本質を熟知し、人間を常に観察してるであろうアン・タイラーならではの

ちょっと笑えるシーンがそこここにちりばめられていて、

大きな起伏がないにも拘らず、最後まで目が離せません。

そしてラスト・・・。

はっきりしたエンディングを求めてしまったら、

アン・タイラーを楽しむ事は出来ないでしょうね。。

 

でも、人生の酸いも甘いも知り・・・一度でも挫折感を味わった人ならば

間違いなく共感出来るであろう、とても素敵な大人のメルヘンです

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『星と呼ばれた少年』

2005-12-12 11:42:57 | 作家た行

 ロディ・ドイルです。


この邦題と表紙の絵から『星の王子様』を連想される方も多いかと思われますが

内容は全く違います。それこそ天と地ほどの違いが・・・。



20世紀初頭、英国からの独立をかけて戦った名も無き闘士

ヘンリー・トーマスの一代記で、本作は三部作という大河ドラマの中の、

誕生から20歳までの出来事が語られています。

アイルランド誕生まで、これ程の凄まじい歴史があったのかと改めて衝撃ですね。

飢えと貧困の中、苦悩と絶望の淵から立ち上がり、

独立運動に参戦していく状況が克明に描かれていて

自分ってホント、平和ボケしてるな~なんて考えさせられました・・・



登場人物達が、それぞれとても魅力的です。

なんといっても強烈なのはヘンリー・トーマスの父親

片方の足が義足にも拘らず、けんかが異常に強いのです。

あっという間に義足で相手の頭をかち割り、何事も無かったかのように

元通り身に着けてしまう。。

でも誰もが恐れる用心棒も、自分の子供に対しては

あくまでも父親・・・優しいのです。

この父と息子のちょっとしたエピソードは、なんかほろっとさせられます。。

 

それにひきかえ(?)母親メロディは、ちょっと幼い雰囲気で母親としては失格・・・。

ヘンリーの前に死んでしまった子供がいて、

その子の事を常に聞かされて育ったヘンリーが、

自分はただの代役なのだと常に卑屈な想いを抱えており、

事あるごとに「俺はヘンリー・トーマスだ!」と叫ぶところはなんとも切ないです。。

でもヘンリーの中ではとても大切な存在として描かれています。

 

それとオシー先生ヘンリー・トーマスに初めて読み書きを教えてくれて、

その後も多大なる影響を与え続けた素敵な女性です。

そしてやはり主人公ヘンリー・トーマスかなりいい男ですヨ

郵便局に立て篭もった最初の攻撃の時、殺伐とした雰囲気の中、

彼だけが女性達に歓迎された件は中々ユーモラスでした。

私ももしその場にいたら惚れちゃったかも~



でも全体的には、とにかく血なまぐさくて凄まじい。。

独立運動って・・・革命って・・・こんなにも悲惨で恐ろしい・・・

沢山の人が死んでいくものなんだと思い知らされました。

あれよあれよという間に状況がドンドン悪化し、戦闘状態に突入・・・。

めまぐるしい展開に息もつけないくらい。。

捕虜になったヘンリー・トーマスが脱走するシーンなんて物凄い迫力でした。

アイルランドの歴史を認識する上で、これ以上良い題材は無いかもですヨ。



三部作・・・まだ完結してないそうで、今後の展開が凄く楽しみな

全英ベストセラー作品です。


『ジョイ・ラック・クラブ』

2005-11-12 10:22:49 | 作家た行

 エィミ・タンです。

 

この作品は、中国系アメリカ人の女性達の物語です。

母親四人に娘四人の計八人の女性が、

それぞれの立場から物語る、それぞれの人生。。

 

第二次世界大戦後の混乱した中国を出てアメリカに移住した母親達と

最初からアメリカで育った娘達では大きな世代の違いがあります。

そもそも移民、というだけでも悲惨な運命を想像するに難くないですよね。

母親達は「言葉に尽くせない悲劇を中国に残し」

「片言の英語では言い表せない望みを抱えて」太平洋を渡ってきたのです。

そんな彼女達中国人女性が週ごとに集まり、麻雀卓を囲み、

点心をつまみながら中国での昔話を披露しあう会。

それが「ジョイ・ラック・クラブ」です。

 

冒頭のジンメイ・ウーの章の中で、母親が娘に語った言葉・・・

「こんなときに毎週のように宴会を開くなんてどうかしてる、

と人々は思っていたわ。町では飢えた大勢の人たちが鼠を食べたり、

のちには痩せこけた鼠しか食べない残飯をあさったりしているときに。

わたしたちが悪魔にとりつかれてると思った人たちもいた―――

身内を亡くし、家や財産を失い、夫婦や兄妹、母娘がばらばらに

なったというのに、どうして笑っていられるのか、ときかれたものよ。

「苦痛に心と目を閉ざしていたわけじゃないの。

わたしたちは怖かったのよ。みんなみじめだったのよ。

でも、絶望するってことは、すでに失ったものを取り戻したいと

願うのと一緒なの。または、耐え難い状態を引き伸ばすのと一緒なの。

―――暗い顔して自分たちの死を待っているほうが

もっと悪いんじゃないか?そうわたしたちは自問したのよ。

それよりも自分たちの幸せを選ぶべきじゃないかって。―――」

 

ジョイ・ラック・クラブの趣旨がとてもよく伝わってきます。

新しい世代の娘達が、不可解だった母親の行動に戸惑いつつ、

自分たちの人生を歩むうち、徐々に理解出来るようになっていく過程・・・。

一人の女性が二度に分けて自分の人生を語るのですが、

どの物語も本当に素晴らしいです。

悲惨極まりない内容ではありますが、必死で生きた女性達の姿・・・。

とりわけ母親としての姿に強く心打たれます。

特にラストの章・・・。ジンメイ・ウーが、母親の当時の葛藤・行動を知り、

生き別れになったきりだった異姉妹と再会するシーンは、も~涙涙・・・でした。

 

悲惨な内容であっても、決して暗いトーンではありません。

寧ろ柔らかく優しくサラッとした印象で、とても読みやすいです。

戦時下の厳しい時代を生き抜いた女性達の姿を通して

現在を生きる私達が決して忘れてはいけない何かを思い出させてくれる・・・

そんな、スケールの大きな素晴らしい作品だと思います。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『死の蔵書』

2005-11-08 13:47:00 | 作家た行

 ジョン・ダニングです。



事件の発端は、古本の山から数百ドルの値打ちの本を探し出す

腕利き〈掘出し屋〉の他殺死体発見の知らせから。。

前半は、刑事クリフ・ジェーンウェイと宿敵ジャッキー・ニュートンの間に渦巻く

凄まじい憎しみ合いが中心、という感じで・・・結構ハードな展開ですね。

刑事をやめた後半になって、靄の向こうにいた人間達が様々な形で

ジェーンウェイに関わってきます。

個人的にはエルスペス・プライド・・・本屋開業の際、

片腕になってくれた女性が好きだったのですが・・・。


多くの読者が語るように、ミステリーとしてより、

古書の蔵書・稀覯本の薀蓄をめいっぱい楽しむ作品・・・かな。

 

――――スティーブン・キングの初版本にマーク・トウェインの初版本と

同じ値段がつき、しかもその十倍は売れる。なぜなのか、

説明してもらいたいものだ。私にはわからない。おそらく現在の人間は

知性よりも金を多く持っているのだろう。それとも、このキング・ブームの

背景には、私の理解を超える何かがあるのだろうか。

私はしばらく前に『ミザリー』を読み、すごい小説だと思った。

誘拐の恐怖を緻密に描いた点で、ファウルズの『コレクター』に匹敵する。

ファウルズを現代の文豪の一人とみなしている私がいうのだから、

これは最大の褒め言葉だろう。そのあと、『クリスティーン』を読んだが

まるで別人の書いた本のようだった。あんなできそこないの小説は

他に読んだことがない。つまり、私には何もわかっていないのだ。―――

 

       ―――――――――――――――――――――

 

やがて、”ジェーンウェイ版・目の肥えた掘出し屋の法則”というのが生れた。

自分の好きな本、自分の読みたい本を買え。自分の判断を信用せよ。

信念を持て。メルヴィルのような大作家でも、死んだら一度は忘れられる

かもしれないが、小物たちと違ってかならず復活する。

 私は、モームが黙想的な生き方と呼んだものを実践するようになった。

夜になると、自分が見つけてきた本の中から何冊かを選んで

読書にふける。これまで想像したこともなければ聞いたこともなかった

本を読み、ジャズを中心に質のいい音楽を聴きながら、―――――

 

う、羨ましい生活だ。。 

それはともかく・・・ジョン・ダニング自身、出版社と揉めて一時期作家をやめ、

古書店を経営した経験があるのですよね。

本当に沢山の作家や小説が登場し、本好きにとっては眩い限り。。

でもダニングの好みで列挙されてますから、微妙に抵抗を感じないでもなく

そこはそれ、拘りは人それぞれですものね。

 

全体的に暗いトーンなので、落ち込んでる時に読むと辛いかも。。

でもネロ・ウルフ賞受賞作だけあって、読み応え充分の作品・・・

本好きには是非とも読んで、共感するなり抵抗するなりして

思う存分楽しんで頂きたい作品です。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『アンナ・カレーニナ』

2005-10-07 14:01:48 | 作家た行

 レフ・トルストイです。



トルストイといえば『戦争と平和』が最も有名・・・かな。

でも個人的には『アンナ・カレー二ナ』の方が遙かに読みやすくて好きです。

ただ、哲学的な会話が目立つ気がするのは否めませんが・・・。



ロシア、というと真っ先に雄大な大自然が浮かびます。

その美しい大自然の描写、華やかな社交界、きらびやかな衣装・・・

加えて繊細な心理描写。やはりロシアの大家ですね。

 

アンナに初めて会った時のキチイの心理描写の中に

さり気なく、後の出来事を予感させるものがありましたっけ。。

 

―――キチイをはっとさせると同時に、その心を強くとらえた、きまじめな、

時には沈みがちのひとみの表情だけは別であった―――

アンナの中にはなにかしら別の世界が、キチイなどには想像もつかない、

複雑で詩的な興味に満ちた、崇高な世界があるように思われた。―――

 

「あなたが舞踏会で退屈なさるなんて?」

「まあ、なぜあたしは舞踏会で退屈するはずがないんでしょう?」

アンナは聞き返した。

キチイは、アンナがそれにつづく返事をちゃんと承知していることに気付いた。

「だって、あなたはいつでもだれよりもお美しくていらっしゃるんですもの 」

 

そして更に決定的だったのが、その後に行なわれた舞踏会。。

 

―――キチイはアンナの中に、自分でもよく覚えのある、相手に対する

勝利に酔っている表情を見てとった。アンナが自分でつくりだした

歓喜の酒に酔いしれているのが、手にとるように見えた。―――

 

キチイは恋する乙女の持つ鋭さゆえ、この時既にアンナの中にある魔性を

見抜いていたのかも知れませんね。



美しく上品なアンナ。

とても魅力的だった最初の頃から不倫の恋に身を焦がし、堕ちていく後半・・・。

ここにトルストイの持つ厳しい道徳観念が現れている気がします。

悲しい恋の物語の中に、当時の腐敗した貴族社会への痛烈な批判や

哲学も組み込まれていて、読むほどに奥深い作品ですね。。

 

素材提供:AICHAN WEB


『時をかける少女』

2005-10-03 14:36:18 | 作家た行

 筒井康隆です。



彼の作品は兄の多大なる影響で中学時代にはまりまくり、

中でもこの作品は本当に大好きです。

映画化されてますが・・・原田知世は好きですが・・・

私の中では、原作の雰囲気の方がはるかに強烈です。



学園物ってだけで、当時はワクワクしたものですが、+SF物で、

ミステリーあり淡い初恋ありで・・・

何度読み返したか分からないくらい夢中になりました。

ラベンダーの香りなんてこの本を読むまで興味無かったのですが、

思わず香水売り場に行ってうっとり浸ってしまった事も・・・

 

それにしても、本当になんとも不思議な雰囲気の作品です。

放課後の実験室・・・。

掃除当番で残っていた和子、吾郎、深町君の三人のやり取り。

二人がゴミ出しに行った後、一人片づけをする和子の身に起こる出来事。

 

う~ん。。

このシチュエーションだけで、なんとなく懐かしい香りが漂う気がします。。

ちょっと大人びた雰囲気の和子と深町君。

そこに絡む吾郎君のキャラも良かったですね。



タイムトラベル。

実際、事故に遭遇する、火事を目撃する、なんて事態を事前に知ってたら・・・。

今、本当に痛ましい事故が随所で起きてますね。。

フッとこの記事を書きながら色々思い巡らせてしまいました。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


シャーロック・ホームズ・シリーズ

2005-09-28 23:14:26 | 作家た行

 コナン・ドイル作の名探偵シリーズ。



シャローック・ホームズこそ永遠の名探偵・・・と言っても過言じゃありませんよね。

おそらくミステリー好きの大部分の方が、ホームズ・シリーズをきっかけに、

推理小説、ミステリー、という分野にのめり込んだのではないでしょうか。

そして、私もその中の一人です。

・・・とはいっても総ての作品を覚えている訳ではありませんけどネ。。

 

今覚えている限りをザッと挙げてみますと・・・

『緋色の研究』『四つの署名』『バスカヴィル家の犬』『赤毛連盟』

『まだらの紐』『踊る人形』『ルパン対ホームズ』あたりかな~。。



最も心に残っている作品は『バスカーヴィルの犬』

底なし沼の恐ろしさに震え上がった事、妙に鮮明に覚えています。

冒頭シーンは、ホームズがワトスンを相手に、

彼らの留守中に訪ねて来た客人の忘れ物のステッキを前に、

どんな人物だったかを推理している様子だったと記憶しています。

今でこそ様々な推理小説が飛び交い、あらゆる謎解きテクニックが

披露されておりますが、当時はかなり衝撃でした。

 

でも推理の鮮やかさもさることながら、英国の持つ独特の典雅な雰囲気が

私の中では大きかったと思います。

~卿なんていう名前の登場人物や、美しい田園風景、ダンディな^^いでたち等

最近のミステリーに欠けてしまっている・・・と思われる、

私の大好きな「古きよき時代」そのものの雰囲気がとても素敵です。。

そしてなんてったって、ワトスン君との会話が良いですよネ

何年経っても色褪せることなく読み継がれていく名作・・・と確信しやみません。

 

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『ブリージング・レッスン』

2005-09-26 20:57:23 | 作家た行
 米国版向田邦子・・・アン・タイラーです。


特別大きな事件が起こるわけでなく・・・

本当に平凡な日常を描いてるだけなのですが

妙に味があって面白いのですヨ。

作者が〈人間〉をしっかり観察して知っているからなのでしょうね。



周りの人の幸せを願うあまり、ついお節介をやいては

話をややこしくしてしまうマギー。

結婚28年目を迎える夫アイラと、ある日友人の葬式のため

車で出かけていく・・・。



この道中の会話・出来事がホント、笑えるのです。。

な、なんでこうなっちゃうのぉ~??なんて思う事もしばしば。

一例を挙げますと・・・

 

車を運転中、ちょっとしたトラブルが起こる事ってありますが、

大抵グッと我慢して見過ごす人がほとんど・・・ですよね。

ところがマギーは凄いです

気に食わない車の横に並んだ時、窓から身を乗り出し、なんと

「タイヤ!前のタイヤがはずれそうよ!」と怒鳴るのですネ。。

もちろん事実じゃありません

バックミラーで確かめると、シボレーはスピードを落とし、

車を路肩に寄せていた。

「信じたようだな」

ところがここで終わりません。。

 

「ねえ、あなた」

「今度はなんだ?」

「あの男の人、お年寄りだったわ」

「そうか。近頃の年寄りってのは・・・」

「ねえ、年をとってるだけでなくて、黒人だったのよ」

「だから?」

「私、さっき見るまで、どういう人なのかわからなかったの。

きっとあの人、わざとやったんじゃないのよ―――」

―――「今ごろ、あの人、だまされたと思ってるでしょうね。

私たちが人種的偏見をもっていて、いやがらせをしたって」

「そんなこと思いやしないよ。―――」

――――「戻って、言ってあげるべきよ」

悪い予感が当たった。

 

かくして二人はおじいさんの元へ戻り、そこからおじいさんを連れての珍道中が

しばらく続くはめに陥ってしまう・・・。

一事が万事、こんな感じです

 

アン・タイラーの描く人間像って、本当にツボを心得てると思いますが

この作品を最初に読んでしまうと、アン・タイラーの他の作品も読んでみようかな

と思えなくなる可能性もあるかも知れません。

そのくらい、マギーのキャラは濃い・・・とゆーか独特かも


そして更に、アン・タイラー作品の特徴として、終わり方があいまいです。

なので、はっきりと答えがほしいという方にはお勧め出来ないかもです。

 

でもアメリカでは絶大なる人気を誇るアン・タイラー

普通の人々のなんでもない日常を・・・たった一日の出来事を

描いているだけなのに、しみじみおかしくてちょっぴりほろ苦い・・・

でも人生ってこんなものかも、なんて納得させてしまう技は流石だと思います。

 

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ジェーン・シリーズ

2005-09-16 23:45:17 | 作家た行

 ジル・チャーチルです。



アメリカのホーム・コメディがお好きな方なら結構いけると思います。

このシリーズの特徴で最初に気付くのは、ユニークな題名。。

有名な本や映画の題名をもじっているのです。

「ゴミと罰」「毛糸よさらば」「死の拙文」「クラスの動物園」「忘れじの包丁」等々。。



ヒロインは30代の3人の子持ちの主婦ジェーン。

推理小説が大好きなのですね。

主婦ならではの着想から検証し、事件解決に貢献します。

それはも~題名を読んだだけでもなんとなく想像出来ますよね^^

旦那を亡くしたばかりで、まだ立ち直り切れてない状態でしたが

このシリーズの第一弾で登場した素敵な警部さんに、

クラっとなったように記憶してます。

そして巻を重ねる毎に少しづつ接近していく二人の関係も中々楽しいです。

 

お隣の完璧な主婦のシェリーや反抗期の長女ケイティ等、

登場人物も個性豊かです。

子供たちとの関係や家庭内の問題も取り上げていて、

ユーモアというオブラートに包んではいても内容は意外とシビアな印象も・・・。

 

ユーモア・ミステリー・・・というよりコージー・ミステリーかな?

アガサ賞最優秀処女長編賞受賞を受賞しただけあって、

意外としっかりした着想の元、推理を働かせたりしてるので

へ~~なんて感心しつつ・・・気持ちよく楽しめるシリーズだと思います。


七瀬三部作

2005-09-07 12:47:54 | 作家た行

 筒井康隆です。


『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』



この作品はも~知る人ぞ知るSF大作ですよね~。

人の心が読めてしまう・・・文字通り、読めるのです!

目の前にいる人に、たった今自分の心の中で囁いた言葉を

正確に繰り返されたらやっぱ気が変になっちゃいますよね。。



これらの作品は人間の持つ汚さ、裏側を皮肉交じりに語っていて

色々と考えさせられます。

『家族八景』では七瀬がお手伝いさんとして雇われた八つの家族模様が

描かれていますが、恐ろしい事にどこの家庭においても男性達は

美人の七瀬を心の中で蹂躙したり襲ったりしてるのです

ま~少々大袈裟ではあってもそれが現実なのでしょうね。。

それにしてもそれぞれの家庭内の醜悪な部分をこれでもか!これでもか!

とばかりに畳み掛けてくるおぞましさ。。恐ろしいですね~。

 

個人的には二作目の『七瀬ふたたび』が一番好きです。

この作品では、それぞれ別の特殊能力を持つ仲間たちと出会い、

テレパスとして生きていく事の苦悩、悲哀等を余すところ無く描き切り

中間達と励ましあいながら使命を全うする力強さも素晴らしく

心を打たれた作品でした。

でもテレパス、という事で命を狙われる・・・というのは本当に恐ろしい事ですね。


『夢見た旅』

2005-09-02 00:28:55 | 作家た行
  アン・タイラーです。

 

これは絶版でして・・・しかも手に入れにくい作品だったりしてます。。

でもアン・タイラー節全開って感じで、とても味わい深い作品なのですヨ。

確か映画化されたはずですが、題名は分かりません。

アン・タイラーの作品は結構映画化されているようですが

作品の良さがイマイチ伝わってないらしいですね。

すべて未見なので、なんとも言えませんが・・・。

 

日常はもうたくさん。子供のころから夢見た旅に、私は出よう―――

故郷の小さな町や際限もない家族の世話から逃れることを渇望していた

主婦シャーロットは、家出の資金をおろしに銀行へ行った。

ところが窓口に近づいたとたん、背後から銀行強盗が銃を出して叫んだ。

「皆動くな、さもないとこいつを殺すぞ」

こいつ、とは彼女のことだった!

人質にとられて、犯人と思いがけない逃亡の”旅”に出ることになった

シャーロット。犯人ジェイクは若い脱獄囚で、フロリダの友人を頼っていく途中、

彼の子供を宿した少女ミンディを施設から連れ出そうとしていた。

警察の追及を逃れて南へと向かう奇妙な珍道中―――やがて、

連れ出したミンディから結婚を迫られて束縛を恐れるジェイクに、

シャーロットは自分の影を重ねはじめた。

 

この作品は上記の如く、かなり変わった設定で、実に軽快な文章のうえ

妙に会話が面白いのでとても読みやすいですが、内容はかなり深いです。

いつも思うのですが、アン・タイラーの作品は何気ない日常の、

ちょっとしたエピソードを重ねていくだけなのに、物凄く面白い。。

人間の持つ心理や、普段抱えている何気ない問題・・・万人共通の、

「マンネリ化した生活に刺激がほしい」・・・といった類のテーマを

様々なシチュエーションで描き切り、大切な何かに気付かせてくれるからこそ

読む人の心を捉えて放さない魅力があるのですね・・・きっと。。

 

誘拐されたシャーロットの過去の出来事をフラッシュバックで説明しつつ、

現在の奇妙な逃避行の状況を描いていく・・・。

物語の中では過去と現在の時間が交互に流れ、やがて重なり合います。

犯人の男ジェイクの身に起こる様々な出来事を通し、

また、シャーロットの過去の時間が現在に追いつくにつれ・・・

シャーロットの心に微妙な変化が生じてきます。

 

そもそもシャーロットは自由を求めて家出を試みたわけですが

ジェイクの人生―――自分の子供を身ごもった女性に束縛される事を嫌い、

あてのない放浪の旅を続ける人生―――を通して

繰り返される日常に対する覚悟を決めた時、

シャーロットは既に自由だった、という事に気付くのですね。。

 

ラストの、シャーロットと夫ソールの会話はとても素晴らしいです。

人によってはラストが納得できない、という可能性もあると思われますが、

それは、アン・タイラーを読むにはまだ早かった、という事だと思います。

 

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