いつもお世話になってるブログ仲間のお一人、
わたりとりさんの一年半にも及ぶ長編小説がつい先日めでたく脱稿
長い間、お疲れ様でした。そして・・・おめでとうございます
この素敵な物語にほんのちょっとでも関われたこと、 心から嬉しく思います。
そんな感謝の想いを込めて、簡単ではありますが、
感想なんぞ書かせて頂こうかなと思います^^。
近い未来、人類は、「メルトダウン」により壊滅する――。生き延びる
場所を探すため、「首都」の百億の人々は無数のグループに別れ、
不毛の砂漠に散り旅に出た。八十年後、そのなかの一つ、
共同体「カピタル」はついに希望の地を発見する。
そこは、首都の科学者達が「森」と呼んでいた場所だった。
カピタルが森を発見してから一年後、十四歳になったウィルは、
竜使として森に踏み出し、冒険の日々が始まった。
初めて見る圧倒的な自然と、名も知らぬ生き物達。
少しでも探索に慣れようと、森の生き物達に名前をつけていく。
この森を「メルトダウン」から守るため、ウィルは八本の
「シールド・ポール」を森に埋めなければならない……
私は「Capital Forest」を、ウィルという一人の少年の成長物語を軸として
人類に起こり得るあらゆる災害に、人々が協力し合い、助け合い、
決してあきらめずに闘ったとき、奇跡が起きることもあるはず!
というお気持ちを、ファンタージーという形で表現された作品と捉えています。
カピタルの住人一人一人が実に個性豊かで魅力的です。
中でも印象的なのは孤高の科学者ソディック。
独特の語り口調は、人を寄せ付けないオーラを醸し出してますが
ウィルが苦境に陥ったとき、シールド・ポールを埋めるのは
ウィルの役目だと言い張ったこと。。本当に感動しました。
このソディックとネイシャン、そしてウィルの三人で気球に乗って
大空を舞ったシーンは最高に好き
―――「すっげえぇぇ! うわーっ、わーっ、わあぁーお!
空だ、空を飛んでるよ、俺、信じられない! すっげぇなあ!」
ウィル、うるさいわよ! とネイシャンが言い、けれどすぐ、
いっしょになって「わーい、おぉーい!」と叫びだした。ソディックまでも。
わぁーっ、うぉーっ、と全員でわめき散らし、腹を抱えてゲラゲラ笑う。
風がたえまなく、大騒ぎを空のかなたへさらっていく。
思う存分、騒ぎ吼えたあと、ストン、となにかが腹に落ちた。―――
勝気な少女ラタ。
なんとなく「愛の妖精」のヒロイン、ファデットを彷彿とさせるキャラですね。
本当は繊細で心優しい女の子なのですが、周囲に溶け込めず
要は勝気な性格も防御壁だったりしてるのです。
ウィルは最初、ラタの痛みが分からなかったのですね・・・。
ま~でもラタもラタでしたから、お互い様かな^^
でもお互いに色々経験して大人になって歩み寄り、
後半、ウィルとハルの間で重要な役割をするラタは・・・とても魅力的でした
素敵な女の子に成長したのですね~。
その他、カピタル最長老のガラン、その補佐官ハヴェオ、
銃職人アリータ、仕立て屋の陽気なバーキン老人等々、
沢山の人々が生き生きと活躍する様はとっても微笑ましいのです。
でもやはり人間・・・時にはぶつかり合い、誤解し合い、争いも起こります。
ルロウという別の共同体の出現は大きな試練をもたらすのですネ。
でも本気で向き合い、語り合う中、最後には協力し合う関係に変っていく・・・
それが決してご都合主義なんかでなく、
言葉は悪いけど・・・妥協や裏切り、誤魔化しもあったりして・・・
勿論それぞれに事情があってのことなのですが
その辺の描写がとても素晴らしいのです^^
さて。。ヒーロー・ウィルですが・・・。
実は私、このウィルという少年のこと、非常に分かりづらかったのです。
礼儀正しくて相手を思いやる心はおそらく人一倍あり、感謝の心を忘れない。
反面、幼馴染で大親友のハルが、自分に隠し事をした!とドロドロ悩み
ウィルが苦手とする同世代の勝気な少女ラタが登場すると
いやだ、だめだ、うるさい、等々・・・いや~な態度を平気でしてしまう。。
しかもこれっぽっちも悪いことをした、なんて思わない^^;
いや、思わないわけじゃないのでしょうけど・・・。。
カピタルの誰も乗れないハルヴィス竜に颯爽と跨り、
森を開拓していく様は非常にカッコイイのですが、
真っ直ぐ過ぎて見境なく突っ走り・・・結果として誰かを傷つけてしまう・・・。
大き過ぎる資質を抱えて、自分でもどうしたら良いか
持て余してしまっていたのかな・・・と思われます。
ひきかえ親友ハルは・・・も~本当に良い子なのです。
生まれつき不自由な身体ですぐに熱を出して寝込んでしまう虚弱体質ですが
その性格は温厚で思慮深くて優しい。。大人なのです。
この、ウィルとハルの微妙な関係が、重大な鍵を握っていたわけなのですが
後半、常に光の中にいたウィルが初めて味わった大きな壁、挫折感・・・
この辺りから俄然面白くなってきて(もちろんその前から面白かったけど)
ラストに向けての緊迫した二人の対決は・・・いや~衝撃でしたね~。。
でもここで見事に受け止め、乗り越え、大きく成長したウィルは立派でした。
わたりとりさんにもお伝えしましたが、初めて心から好きになれた瞬間でした。
ちょっと話は横にそれます。。
以前聞いた話しですが、某地方を襲った大洪水の時、
ある知人が一人家に取り残され、二階の窓にへばり付いて救助を待ってる時、
岸の向こう側にいた人々が「お~い!がんばれよ~!負けるなよ~!!」
と口々に叫んで励ましてくれたそうです。
その励ましにより、挫けずに救助が来るまでがんばれたそうで、
人間の持つ本来のやさしさ、強さを感じてとても感動したものです。
この物語は、そんなエピソードまで思い出させてくれる作品でした。
そして、森の神秘的で美しい描写や竜が風を切って走る様等
とても清々しい気持ちにさせてくれると同時に、
今後、必ずや起こるであろう大異変、人類存亡の危機等、
色々な意味でとても考えさせられる作品でもありました。
最後に・・・わたりとりさん、素敵な物語、本当に有難うございます。
ゆっくりお休みして・・・必ずまた復活して下さいネ
:素材提供:ゆんフリー写真素材集