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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『二度殺せるなら』

2005-07-29 15:35:59 | 作家は行

 リンダ・ハワードです。



長年行方を絶っていた父親がニューオーリンズで何者かに射殺されます。

一体何のために殺されてしまったのか?

隠された衝撃の真実、CIAも絡んでの追跡劇。。

 

何より担当刑事マークと被害者の娘カレンの恋愛が

なんとも濃厚で素敵なのです

 

ベトナム戦争の狙撃兵として活躍したカレンの父親は、

終戦後、別人のようになって帰って来、以来母親は苦労のしっぱなし・・・。

遂には家を出たっきり二度と戻って来なかった父親を、それでも愛し続けた母親。

幸薄い母親の人生を目の当たりにしてきたカレンにとって

世の中の男性すべてが敵でした。



そんな、虚勢を張ることに慣れ、必死で自分の砦を守っているカレンと、

カレンの冷たい外見の奥にある、心優しい本当の姿を見抜いて

彼女を守ろうとするマーク。

マークが、カレンの本当の心のうちを見抜くシーンはちょっと素敵です。

 

平然とした表情と逆の動きをする彼女の手を見て、マークは寺手打ちを

喰らわされたようなショックを受けた。

こまごまとした断片が突然ひとつに像を結んだ。おれの目は節穴か?

なんてばかなんだ。最初から見ていたはずだった。―――

いつも深刻なカレンの茶色の大きな瞳に微笑みを見い出したい、

守ってやりたいというマークの愛情は・・・クラクラしてしまいます。(笑)

そうそう。。このマークの声についての描写が良いんです。

蜜のようにとろりとした印象の物憂いバリトン・・・。う~ん。。

 

この刑事の住まいは実にお洒落です。

広いバルコニーに出てみると、みごとな中庭が広がっていた。

古い石造りの噴水を中心に、あらゆる種類の花々が植わっている。

巨大なシダ類や、背の高いヤシの木はレース状の葉を揺らせ、

バラやゼラニウムの香りから、嗅いだことのない香りまで、

いろいろな花の匂いがした。――――

 

カレンは手すりを離れてなかに入った。

ここもまた二十世紀を遠く離れた世界だった。―――

漆喰の天井は少なくとも十二フィートの高さがあり、

家具はアンティークだった。―――足元の色褪せた敷物は

美しくまだ厚みがあり、柔らかな風合いが残っている。

唯一現在を感じさせるのは大きな安楽椅子だ―――

 

 
二人が初めて結ばれるニューオーリンズの夜は、

けだるいブルースや雨を背景に、この美しい屋敷のバルコニーから始まります。

この辺の描写はリンダの得意とするところ。。

まるで映画のワンシーンのように甘くて美しいのです。

 

何者かに命を狙われるカレンが、かつて父親に教わった方法を思い出し

自力で切り抜けるシーンも緊迫感とリアリティにあふれ、

事件の真相も意外性に富み、最後まで息つく暇もないほど。。

 

ラストはほぼハッピーエンドと分かっているから深い事は考えず安心して読めます。

そういう意味で、ロマンティック・ミステリーという分野は現実逃避にはもってこいで

この類の作家の中では一番好きかもです

ただあまり続けて読むと食傷気味になります。。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『リンバロストの乙女』

2005-07-16 12:22:07 | 作家は行

 ジーン・ポーターです。

 

幼い頃に出会い、今も再読を重ねている大好きな作品の一つです。

大自然の描写がとても美しく、登場人物の個性が豊かで本当に魅力的。。

食べ物や洋服の事、昆虫採集の様子等・・・とても瑞々しい小説で、

何度でも再読したくなります。

 

エルノラは母親と二人、リンバロストの大自然の中で暮らす美しい少女。

物語の前半。エルノラの母親が妙に冷たいのです・・・。

冒頭から母親に冷たくあしらわれ、

涙を呑んで耐えるエルノラの様子が克明に描写されてます。

ところが意地悪なのかというと決してそうではなく、

さり気ない心遣いもたまに見られます。

その一つがお弁当。。

 

「パンの場所には卵黄を散らしたバタつきのパンの優美なサンドイッチが

そのなかばを占め、残りの半分は想像も及ばぬ香料菓子が三切れも

はいっていた。肉の場所には薄切りのハムが詰めてあり―――

サラダはトマトとセロリだった。

カップには琥珀のように透明な梨の砂糖漬けがはいっていた。

ビンにはミルクが入れてあり、折り畳み式のカップには

薄紙にくるんだきゅうりのピックルス―――」

 

う~ん。。想像しただけで生唾ゴックン状態ですネ。。

これだけ手間をかけて素敵なお弁当を作ってくれるのになぜ母親は冷たいのか?

その疑問に対する答えは上巻の最後にあります。

そして総てのわだかまりが解けた後の、エルノラに対する愛情は凄いです。

それまで溜め込んでおいたありったけの愛情を総て注ぎ込むかのような熱愛ぶり。。

 

後半は大人になったエルノラの愛の物語、とでもいえば良いのでしょうか。。

少女小説のわりには結構シリアスです。

なんとなくロシア文学を彷彿とさせるような展開・・・

・・・ちょっと言いすぎかな?

 

美しい大自然の中で、自然と育まれたフィルとエルノラの美しい友情のシーンから

舞台は都会に移り、華麗なる社交界でのフィルと婚約者エディスの関係に・・・。

この二人の婚約発表のパーティで着たエディスのドレスの素晴らしさ。。

フィリップは言います。

 

「6月のシンボルは美しい大きな夜の蛾・・・。

蛾の中で一番美しいのは薄緑色のルナか「黄色の帝王蛾」。

僕の月の女神か金色の妃になって下さい。」

 

かくして、エディスは「黄色の帝王蛾」をイメージして作成された衣装を纏うのです。

 

「波打つ黒髪は高く束ねられ、それに黄金の紐がわたしてあった。

紐には紫水晶がちりばめてあり、一方にとりつけられた

ダイアモンドで縁どられたエナメル製の蘭がキラキラ光っていた。―――

両肩からは薄紫色の裏がついた大きなビロードの翼が垂れさがり、

蛾を模倣して薄紫色の斑点が刺繍されてあった。―――」

 

・・・う~ん。。目眩がしそう。。

ところがこのパーティの席で、大変な事件が起きてしまうのですね。

そして一気に婚約解消!舞台は再びリンバロストへ・・・。

ここで一同が集結し、エルノラとエディスの一騎打ち!

この辺の持っていき方が、

なまじの少女小説と一線を画するところではないでしょうか。

そして・・・この小説が大好きな理由でもあるのです^^

 

最初は高慢ちきな我侭娘でしかなかった社交界の華エディスが、

苦しい恋を経て大人の女性に成長していく・・・。

この作中人物の中で、ある意味エディスが一番好きだったりしてます。。

少女小説というと「小公女」「若草物語」「秘密の花園」あたりが有名ですが

この「リンバロストの乙女」も本当に素晴らしいです。

 

素材提供:AICHAN WEB


『シェルシーカーズ』

2005-07-09 23:33:41 | 作家は行

 ロザムンド・ピルチャー・・・欧米でベストセラーになった作品です。

 

この作家の描く世界は柔らかくてとてもロマンチック

でもこの作品に関しては少々趣が違います。

「シェルシーカーズ」――貝を探す子どもたち――とは

ペネラピの有名な画家である父親が描いた作品の名前です。

この絵の描写の素晴らしさ・・・是非堪能して下さいな^^

 

「シェルシーカーズ」の与える衝撃は、ちょうど磯の香をはらんだ、

冷たい潮風のそれであった。ちぎれ雲の走る、強風の日の空、白い波頭、

大きくうねっては浜辺にぶつかる波。ピンクと灰色のまじった、

デリケートな色合いの美しい砂浜。引き潮が残した、浅い水たまりは

透明な陽光を照り返してチラチラと光っている。絵の片側の子どもたちのうち、

二人は女の子で麦藁帽子をかぶり、服の裾をたくしあげている。

もう一人は男の子だった。どの子も日焼けした素足をふんばって、

小さな赤いバケツの中を一心にのぞいている。

 

 絵の中の女の子の一人がペネラピで、この絵の所有者です。

そう。。この作品は、市場価値のとても高い「シェルシーカーズ」を巡り、

半世紀にも及ぶ壮大なスケールで、戦時下の英国を舞台に

三世代に渡る一族の、様々な人間模様が展開されるお話しなのです。

 

この物語は冒頭、心臓発作を起こして入院していた

ペネラピの退院から始まります。

途中、戦争・妊娠・結婚・出産等、女として様々な困難を精一杯乗り越え

その間に起こった両親の死、「シェルシーカーズ」を巡る様々ないきさつを経、

最後、余命いくばくも無い事を感じていたペネラピの思いは、

自然と人生の終わりを前に、過去の地ポースケリスへと向かいます。

 

「今となっては、わたしを押しとどめるものは何一つないはずだ。

時期を失しないうちに西を目指し、イングランドの鉤爪のような、

あの土地へ行こう。かつてわたしが住み、愛を知った土地、

若き日の思い出の地。」

 

この旅の道連れは、同行を拒否した実子に代わり、

ペネラピにとって、とても大切な若き二人の友人デーナスとアントー二ア。

この二人の事を、ペネラピがどれ程大切に思っているか、

読んでいて切なくなるくらいです。

それとは対照的に、三人の実子に対するペネラピの冷静な視線・・・。

普通の母親なら情にほだされがちなところを、時には辛らつなくらい厳しいです。

でも、深く考えればとても大きな愛情なのですね。。

母親の遺産をあてにしている息子ノエルに向かって言う言葉・・・

 

「幸福ってね、自分が現在持っているものを最大限に役立てることだし、

豊かさって、もっているものの価値を最大限に引き出すことじゃないかしら。」

 

どれほど豊かな財産を持とうと、持つ人の心が豊かでなければ意味が無い。。

そんなロザムンドおばさんの声が聞こえてきそうな作品・・・だと思います。

豊かな大自然の描写も素晴らしく、まるで絵を見ているような美しさ。

そして読後にじわじわと心に染み入ってくる不思議な感動・・・素晴らしい作品です。

 

素材提供:ノンの素材部屋


『パーティーガール』

2005-07-09 14:33:57 | 作家は行

 リンダ・ハワードです。


この手のお話は、深い事は考えず、単純に楽しむには最高です。

はっきり言って突っ込みどころ満載ではありますが・・・楽しければ良いんです

そーゆー作品も大好きだったりしてます


ヒロイン、デイジーは小さな町の図書館司書。

30代も半ば近くでありながら、お洒落に全くと言っていいくらい気を使わず、

男性関係も皆無という状態で・・・さすがに自分でも嫌気がさすのです。

「人並みに結婚して子供を生みたい。」

で、34歳の誕生日を迎えた日、一大決心をします。パーティーガールに変身だ

この決心を共に暮らす母親とおばあちゃまが大喜びで後押しをしてくれるのですが

会話がなんとも微笑ましくて。。

「お尻を振って歩くのよ。」と母親が実際にやってみせると、すかさずおばあちゃまが

「でもあまりやり過ぎると二つの大きな袋の中で豚が出ようとしてもがいてるように

見えるよ!」ちょっとうろ覚えですが、こんな会話がかわされたハズ。



そしてデイジーの変身のお手伝いをしてくれるゲイのコンサルタント、

トッドの存在も素敵です。

みんなの協力によって絶世の美女に変身してしまうデイジー・・・。

そして男探しに夜な夜なクラブに足を運ぶのです。

ちょっと飛躍し過ぎじゃないって思わないでもないけど・・・。



そこで密かに行なわれていた様々な陰謀に巻き込まれてしまうのですが、

デートレイプ・ドラッグを操作中のマッチョな警察署長との思いがけない絡みがあって

この辺のロマンスのもっていき方は、リンダ・ハワードらしさ全開で大好き

二人の会話はとってもユーモラスでちょっぴりエッチ。



その他、強烈な存在としては、生まれたてのゴールデンリトリバー。

ちょ~~~可愛いです

こんな楽しい作品もたまに読みたくなるのです

 

素材提供:IKOI


『海の上のピアニスト』

2005-07-08 15:10:36 | 作家は行

 アレッサンドロ・バリッコです。

 

この作品は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督・・・(あの『ニュー・シネマ・パラダイス』の)

によって映像化もされてます。私は残念ながら未見ですが。。



『海の上のピアニスト』の作風は一人芝居用に創作された脚本です。

語り手は、トランペット奏者になりたくて、ヴァージニアン号に乗り込み、

有無を言わせない勢いで面接官の前でトランペットを吹いて

見事採用された17歳のわたし。

そのわたしがヴァージニアン号の中で出会ったのが世界一のピアニスト

ダニー・T・D・レモン・ノヴェチェントでした。



この長い名前に関してのエピソードは、映画では無理があったでしょうね。。

船の中の一等船客用のピアノの上に捨てられていた赤ちゃんを、

海の男達が拾い、名付けて可愛がる様子はちょっと素敵です。



いくつか語られるエピソードの中でも極めて素敵なのは、

二人が初めて出会った大時化の中の演奏シーンですネ。

ピアノのキャスタ-のストッパーを外して、大揺れに揺れる船の中・・・

ダンス室の板張りの床をピアノが滑り出し、くるくる回転するピアノを操りながら

演奏するノヴェチェントに合わせてトランペットを吹き鳴らす。。

本書の中で、シーソーとブランコのあいのこのような舞台装置と表現されてますが

まさに夢の遊園地。う~ん。。ワンダフル



ノヴェチェントの噂を聞いた全米一のジャズピアニストとの対決も

独特でカッコいいのです。

三十二年間海にいた彼が船を下りる決意をし、タラップに足をかけ・・・

どうしても降りる事が出来なかった気持ちがまた素晴らしい。。



「たとえばピアノ。鍵盤はここから始まって、ここで終わる。

知ってるだろう、キーは全部で八十八。これはだれもごまかせない。

キーは果てしなくあるわけじゃない。でも弾く人間のほうは無限だ。

鍵盤上で奏でられる音楽も無限―――――」



境界線のない、尽きることの無い世界を初めて眼前にした時、

何百万もある道の中からどうやって正しい道を見分けられるのか?



深いですよね。。

文体自体は、人々のあらゆる不思議なエピソードが脈絡もなく語られていく感じで

普通の小説より読みやすいです。

でも好みははっきりと分かれる、と言われているし、そう思います。



私は・・・もちろん大好きです

 

素材提供:Pari’s Wind


『ライラック・バス』

2005-07-07 10:54:22 | 作家は行

 メイヴ・ビンチーです。

 

この作家は本国アイルランドや英国では大変な人気作家なのですが、

日本での知名度はイマイチですね。とても残念です。。

 

毎週金曜日の午後6時45分、ダブリン発ラスドーン行き「ライラック・バス」は

今日も七人の乗客を乗せて出発します。

この物語は、このバスの七人の乗客のある週末の出来事を

それぞれの視線から語っていく、という短編集のような、

でも全部の物語がリンクして一つの小説になっている、という作風です。

 

しみったれのナンシーは、自分が嫌われる理由がわからない。

不倫をしているディーは、不実な愛に苦しんでいる。

寝たきりの父親をもつルーパトには、ゲイの恋人がいた。

そして運転手のトムにも、誰にも言えない悩みがあった…。

 

ナンシーから始まって、ラストの運転手トムまでの、

一つ一つの作品が生き生きと息づいていて

以外と自分の事って見えないものなんだな~と改めて思ったり

こんな風に色々な問題を抱えてがんばって生きてるんだな~なんて感心したり・・・

アイルランドの田舎町ラスドーンに暮らす人々の何気ない日常を

見事に描いたこの作品、とても素晴らしいです。

一人一人が愛しい。。特にセリアが好き♪

ラストで交わす、トムとセリアの会話・・・一番好きなシーンです。

ふんわりとした文章でとても読みやすく、読後のなんともいえない心地よさ。

 

う~ん。。好きだな~。。

 

素材提供:IKOI