リンダ・ハワードです。
長年行方を絶っていた父親がニューオーリンズで何者かに射殺されます。
一体何のために殺されてしまったのか?
隠された衝撃の真実、CIAも絡んでの追跡劇。。
何より担当刑事マークと被害者の娘カレンの恋愛が
なんとも濃厚で素敵なのです
ベトナム戦争の狙撃兵として活躍したカレンの父親は、
終戦後、別人のようになって帰って来、以来母親は苦労のしっぱなし・・・。
遂には家を出たっきり二度と戻って来なかった父親を、それでも愛し続けた母親。
幸薄い母親の人生を目の当たりにしてきたカレンにとって
世の中の男性すべてが敵でした。
そんな、虚勢を張ることに慣れ、必死で自分の砦を守っているカレンと、
カレンの冷たい外見の奥にある、心優しい本当の姿を見抜いて
彼女を守ろうとするマーク。
マークが、カレンの本当の心のうちを見抜くシーンはちょっと素敵です。
平然とした表情と逆の動きをする彼女の手を見て、マークは寺手打ちを
喰らわされたようなショックを受けた。
こまごまとした断片が突然ひとつに像を結んだ。おれの目は節穴か?
なんてばかなんだ。最初から見ていたはずだった。―――
いつも深刻なカレンの茶色の大きな瞳に微笑みを見い出したい、
守ってやりたいというマークの愛情は・・・クラクラしてしまいます。(笑)
そうそう。。このマークの声についての描写が良いんです。
蜜のようにとろりとした印象の物憂いバリトン・・・。う~ん。。
この刑事の住まいは実にお洒落です。
広いバルコニーに出てみると、みごとな中庭が広がっていた。
古い石造りの噴水を中心に、あらゆる種類の花々が植わっている。
巨大なシダ類や、背の高いヤシの木はレース状の葉を揺らせ、
バラやゼラニウムの香りから、嗅いだことのない香りまで、
いろいろな花の匂いがした。――――
カレンは手すりを離れてなかに入った。
ここもまた二十世紀を遠く離れた世界だった。―――
漆喰の天井は少なくとも十二フィートの高さがあり、
家具はアンティークだった。―――足元の色褪せた敷物は
美しくまだ厚みがあり、柔らかな風合いが残っている。
唯一現在を感じさせるのは大きな安楽椅子だ―――
二人が初めて結ばれるニューオーリンズの夜は、
けだるいブルースや雨を背景に、この美しい屋敷のバルコニーから始まります。
この辺の描写はリンダの得意とするところ。。
まるで映画のワンシーンのように甘くて美しいのです。
何者かに命を狙われるカレンが、かつて父親に教わった方法を思い出し
自力で切り抜けるシーンも緊迫感とリアリティにあふれ、
事件の真相も意外性に富み、最後まで息つく暇もないほど。。
ラストはほぼハッピーエンドと分かっているから深い事は考えず安心して読めます。
そういう意味で、ロマンティック・ミステリーという分野は現実逃避にはもってこいで
この類の作家の中では一番好きかもです
ただあまり続けて読むと食傷気味になります。。
素材提供:ゆんフリー写真素材集