私が大好きなラフマニノフのこの曲。。
彼が書いた協奏曲は全部で4曲ありますが、
中でも最も有名で、最も愛されているのがこの「ピアノ協奏曲第二番」です。
も~多くのラフマニノフ・ファンがご存知の有名なこの話。
敢えてここで書くのもどうかと思わなくもありませんが
ひょっとして、ここに来て下さる方達の中でまだご存知ない方の為に
ラフマニノフについてちょこっと書かせて頂きます。。
ラフマニノフはモスクワ音楽院在学中に、
その才能をチャイコフスキーに認められます。
作曲家として既に大成していたチャイコフスキーを深く敬愛し、
内容や形式に於いてその影響を多く受けていますね。。
でもラフマニノフは、作曲家としての生活を優先していたチャイコフスキーと異なり、
作曲家としてより、ピアニストしての生活を優先させていたようです。
巨大な身体と巨大な両手。。
遠くから響く鐘の音のようなダイナミックな和音からスタートし、
次第にクレッシェンドしながらオーケストラを導入するこの曲。。
大波の揺れるような暗い情感を秘めた第一主題から長調に転調して
甘くロマンティックに展開する第二主題・・・。
巨大な両手から繰り出されるダイナミックな和音と繊細でデリケートなメロディ。
当時、彼の自作自演を聴けた人がとても羨ましいです。。
ちなみに余談ですが・・・この自演のテープ、持ってます
。
1892年、ピアノ科の金賞を得てモスクワ音楽院を卒業した彼の、
順調だった生活が一変した大きな原因の一つに、
人生の師とも仰いでいたチャイコフスキーの死が大きく絡んでいたそうで、
もともと内向的だった彼の精神面が徐々に不安定になってしまうのですね。
そんな状況の中、やっと書いた作品、交響曲第一番の初演が大失敗に終わり
完全に精神的に病んでしまうのです。
この時の酷評は本当に凄まじかったようですね。。
ロシア5人組の一人であるキュイの酷評・・・
「主題は貧困であり、リズムはいびつに歪んでおり、和声は凝りすぎて
病的であり、曲全体を憂鬱さが覆っている」
会場に詰めかけた聴衆からも口汚い罵倒が飛びかったと言われています。
けど、それほど酷い曲では決してないのですヨ。
事実、ロバート・シンプソンという批評家を初め、多くのラフマニノフ・ファンは
彼の最高傑作とまで断言して憚りません。
ま~確かにロマンティックな主題は影を潜め、ゴツゴツとした印象なので
多くの人に受け入れられる感じじゃありませんね・・・。
けど、ダイナミックなパワー溢れる素晴らしい曲です。
それはともかく、この曲の初演の歴史的大失敗により、精神不安定に陥り
かかりつけの医者の勧めもあって転地療法せざるを得なくなるのです。
でもこの頃・・・1899年、徒弟でもあるシロティの尽力により、
ロンドン・フィルハーモニック協会主催の演奏会に指揮者兼ピアニストとして出席、
ここでロンドンの人々に暖かく迎え入れられ、
ピアノ協奏曲第二番を作曲して持参すると約束をしているのですね~。。
ところがその後、神経衰弱症が急速に悪化してしまうラフマニノフ。
作曲どころか、総ての活動を休止せざるを得なくなるのです。
そのどん底の状態の時に出合った医師が、ニコライ・ダール博士でした。
まさに彼にとっては命の恩人ですね。
「あなたは素晴らしい協奏曲を書き、大成功を収めるだろう」
という催眠療法が見事に功を奏し、発表した第二協奏曲が大成功を収めたのです。
先に第二楽章、第三楽章を作曲、未完成の状態でありながら
モスクワ慈善演奏会で見事な演奏をし、成功を収めます。
その成功に励まされて、翌年に第一楽章を書き上げ、
モスクワ・フィルハーモニック協会主催の演奏会で
徒弟のシロティ指揮でピアノ演奏をし、初演を見事成功させるのです。
ラフマニノフは、作曲家・演奏家としての生命を取り戻してくれたダール博士に
感謝の想いを込めて、この曲を献上しています。
私が持っているこの曲のレコードの一つ、ピアノ、フィリップ・アントルモン
指揮レナード・バーンスタインのニューヨーク・フィル・ハーモニック版は
かなりのお気に入りです。
甘く切ないメロディを情緒豊かに演奏するこのピアニスト。。
正直言って、ラフマニノフ本人のピアノより好きだったりしてます
初めてこの曲を聴いた時の衝撃と感動。。
大袈裟に聞こえるかも知れませんが、本当に凄まじいものでした。
少々不安定な印象も否めませんが、そこにこそラフマニノフの持つ
類稀なる魅力があるのだと思います。
絶望のどん底から這い上がり、書き上げたこの曲は
ラフマニノフのピアノに対する激しいまでの情熱や切ないまでの愛情が
溢れているようで、何度聴いても込み上げるものを抑えることが出来ません。
第三楽章の甘美な主題部分は、映画「逢びき」の主題歌にもなっているので
タイトルだけではピンと来ない方も、聴けばおそらく「あ~、あの曲」って
納得出来るであろうポピュラーなこの曲。。
この曲の裏にこれだけの辛い戦いが潜んでいたのを知って以来、
私の中ではショパンを超えて大好きなピアノ協奏曲No1でございます。
素材提供:Pari’Wind