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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『航路』

2005-07-08 12:53:13 | 作家あ行

 コニー・ウィリスです。

 

上下二巻、しかも1冊600頁以上という物凄いボリュームにもかかわらず、

一気に読ませてくれました。



迷路のように入り組んだ大病院、マーシー・ジェネラルが舞台で、

その病院に勤務する認知心理学者ジョアンナは、朝はER、

午後は小児科に詰めるかたわら臨死体験を科学的に解明する為、

体験者の聞き取り調査に奔走する忙しい日々を送っています。

そんな彼女に、科学物質を投与して擬似臨死状態を作り出し、

臨死体験を科学的に証明しようとする神経内科医リチャードが協力を求めてきます。

果たして臨死体験とは一体何なのか



SFとミステリーがうまく噛み合った、超ど級のエンタメです。

下巻の途中、え?うそ!な、なんで~~

なんて考えもしなかった急展開にひっくり返りそうになりつつ・・・ラストには感動が。。



とにかく登場人物一人一人がとても個性的で素敵です。

まずヒロイン、ジョアンナ。

メガネをかけて食事も忘れるくらい仕事に没頭するキャリアウーマン・・・。

にもかかわらず友情を大切にし、ディッシュ・ナイトと称するビデオを見る会をやったり

忙しい合間に大切な小さな友達に会いに行く事は怠らない、心優しい女性なのです。



悪役・・・という程では無いけど、何かと邪魔するモーリス・マンドレイク。

臨死体験者に誘導尋問みたいにして、自分の思い通りの答えを言わせ、

二人の研究を台無しにするだけでなく、ジョアンナが行く先々に登場しては

おせっかいを焼きます。

おかげでジョアンナは、迷路のような病院内をぐるぐる逃げ回るはめに陥るのです^^



なんといってもメイジー。

心臓病で長い入院生活を送る災害マニアの少女で、ジョアンナの親友

といっても良いくらいの存在です。

このメイジーは本当に愛らしい。。

引き伸ばしの天才で・・・「待って!行っちゃ駄目!!○○○○の話がまだだもん。」

なんて調子でジョアンナが去ろうとする度、何かと口実を設けて行かせないのです。

で。。ついついそこで時間をくってしまう。。

あ~でもこのメイジーの存在こそ、この物語を感動的にする鍵なのです。



他にも挙げれば限がないくらい多彩な人物が登場しますが、

それぞれ個性豊かなので混乱する事はないと思います。

後書で解説者が十年に一度の傑作と大絶賛していただけあって、

も~涙涙の大感動・・・本当に素晴らしい作品です。

 

:素材提供:Pari’s Wind


『日の名残り』

2005-07-05 00:46:48 | 作家あ行

 カズオ・イシグロ・・・ブッカー賞受賞の文学作品です。

 


日本に生まれて家族と共に渡英・・・

日英二つの文化を背景に育った作家の作品で、

古き良き時代の英国を叙情性豊かにふんわりと書き上げていて

とても素晴らしいです。

私はこの作品で一気にカズオ・イシグロの大ファンになりました。

 


品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスが

短い旅の道中に過去の様々な出来事を回想するのですが、

現在の状況の、行く先々で出会う美しい英国の田園風景を織り交ぜつつ、

様々な出来事を通し、当時は気付けなかった事に気付かされる・・・

というロード・ムービー的な作風です。

 


ラストの、美しい夕陽を眺めつつ、様々な想いに耽るシーン・・・

ベンチで悔恨の念に襲われるスティーブンスに、

隣に座った見知らぬ男が語りかける言葉。。

 


「なあ、あんた、わしはあんたの言うことが全部理解できて

いるかどうか分からん。

だがわしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。

いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。――――」

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。

脚を伸ばして、のんびりするのさ。――――」

 


老境に差し掛かった人生を、美しい夕日に例えて語るこの言葉。。

読んでいて自然に涙が溢れてきました。

人生の様々な悲哀を経験した人であれば泣かずにいられない・・・と思います。

 


悲哀に満ちた内容ながら、独特のユーモアや美しい田園風景等が小説全体を

ふんわりと優しく包み込むかのような叙情性豊かな作品で、

読後の余韻も心地よく・・・

本当に沢山の人に読んで頂きたい名作・・・大好きな作品です。

 

素材提供:Pari’s Wind