制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

新たな高齢者医療制度のあり方の政府案、明らかに

2010年03月07日 09時30分04秒 | 高齢者医療・介護
第4回高齢者医療制度改革会議(3月8日)の前日の7日、共同通信社が「新制度案、65歳以上は国保加入 高齢者医療で厚労省」と報じた。

新制度案、65歳以上は国保加入 高齢者医療で厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2010030601000756.html

今回報じられた「65歳以上は市町村が運営する国民健康保険に原則的に加入」のように厚生労働省が考えているとすれば、第3回の会議資料における「宮武委員案」をベースに検討が進められていると考えられる。これまでの検討を踏まえると、2013年度の後期高齢者医療制度の廃止前に市町村国保の広域化=都道府県単位化を進めて財政運営の安定化を図る。その上で、被用者保険の65歳以上を切り離し、都道府県単位で運営される市町村国保に加入させることになる。
運用上は、65歳の年齢到達とともに加入している被用者保険の資格を喪失、市町村の窓口に行って、市町村国保の被保険者の資格を取得する。市町村国保では、高齢者の扱いとなるが、被用者=所得があると思われるので、医療費の自己負担などに変わりはない。市町村国保に加入を続けて75歳の年齢到達と同時に新たな被保険者証が送られてきて、医療費の自己負担が下がるということになるだろう。

「2013年」にとされているが、あと3年のうちに市町村国保を都道府県単位に統合できるかはわからない。市町村によって保険料の格差は大きい。市町村のなかに大きな病院があり、住民が多く入院しているようなところでは保険料は高いし、病院がなくて入院できなければ保険料は安い。これを都道府県単位で統一するとなれば、不公平感が増す。都道府県をブロックに分けて、ブロック別の保険料を設定するなどの方法も考えられなくはないが、調整が難航することは間違いない。住民が納得して保険料を払うように説明するのは簡単ではない。
また、市町村によって保険事務の方法はばらばらである。例えば、ある市では国民健康保険料としているけれども、その隣の市では国民健康保険税である。道路一本はさんで、保険料が違う。基準も計算方法も違う。年間の保険料を何回に分けて支払うか(期数)も、それぞれの納期限も違う。このような状態では、統合などできるわけがない。これらはすべて条例で定められているので、都道府県下の市町村が集まって標準的な方法を定め、条例を改正し、段階的に統一を図っていかなければならない。
条例で定められたこれらのことは歴史的な経緯があって、そのように定められたもの。どれが正しく、どれが間違いというものでもない。そのため、都道府県下の合議体で「標準」を検討することすら難しいのではないだろうか(例えば、都道府県の職員が、国民健康保険税として徴収している市町村の職員らに「保険料にしてください」といったとしても、そう簡単には切り替えられない)。

次に、報じられている「国保負担を抑えるため財政運営の仕組みは高齢者と現役世代を別にする。公費の50%負担は現行のまま75歳以上に限定し、財政力が豊かな健康保険組合に負担を求める方針」のようになるとすれば、「高齢者医療を市町村国保と一体的に運営する」としつつも、抜本的な改革ではなく、高齢者医療確保法の前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)の医療制度をそのまま残し、都道府県単位化した市町村国保で包んだような制度になる可能性が高いと思われる。
協会けんぽの保険料はかなり上がっている(保険料率は、4月納付分から全国平均で現在の8.2%から9.34%になる)し、これから財政力の弱い健保組合から順に解散して協会けんぽに統合されることになる。弱っているものどうしがくっつくのだから、市町村国保と財政調整ができるほどの余裕はないと思われる。こちらも調整が難航するのは間違いない。

協会けんぽ、保険料負担大幅増 4月から月収30万円、2170円増
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100222ATFS1903220022010.html

明日の第4回高齢者医療制度改革会議のテーマは「費用負担のあり方」。65歳未満の被用者保険から市町村国保(その中に取り込まれた高齢者医療)への拠出金のあり方、公費=税金の投入のあり方などが議論されるものと思われる。続報を待ちたい。