制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

新たな高齢者医療制度のあり方の4つの意見、運営者の2つの意見

2010年02月25日 10時10分40秒 | 高齢者医療・介護
昨日に続き、「第3回高齢者医療制度改革会議」の資料を整理しておきたい。第4回は、3月8日に開催される予定で、議論のテーマは、費用負担のあり方となる。逆にいえば、第3回のテーマである制度の基本的な枠組みおよび運営主体のあり方については、結論が出るまで検討を進めるものの、議論は先に進める=方針は、ほぼ固まったものと思われる。

新たな制度の4つの考え方は、以下のとおり。

○池上委員案
医療保険者を都道府県単位で一元化する案。年齢による区別をしない。
・市町村国保を都道府県の単位で統合し、広域連合が運営する
・被用者保険(健保組合・共済組合)を都道府県の単位に分割・統合する
・都道府県の単位で、市町村国保と被用者保険を統合する
・後期高齢者医療制度は廃止する

○対馬委員案(健保連)
65歳以上を「別建て」の保険とする案。
・都道府県の単位で、65歳以上の高齢者が加入する医療保険者を立ち上げる
・後期高齢者医療制度の「前期・後期」の区別をしない

○小島委員案(連合)
国保は国保、被用者保険は被用者保険という「突き抜け」の保険とする案。
・被用者保険加入者が退職後も継続して加入できる「退職者健康保険制度(仮称)」を立ち上げる
・市町村国保を都道府県の単位で統合する
・市町村国保と後期高齢者医療広域連を一体的に運営する

○宮武委員案
市町村国保と高齢者医療を一体的に運営する案。
・市町村国保を都道府県の単位で統合する
・市町村国保と後期高齢者医療広域連を一体的に運営する

市町村国保を広域化し、都道府県の単位で一体的に運営する案が有力視されているとのこと。宮武委員案=一定年齢以上の独立保険方式とする案を中心に検討していくことになるだろう。
また、その場合に、運営者を広域連合とするか、都道府県とするかは意見が分かれるところだろう。広域連合は、後期高齢者医療制度で実績があり、事務や市町村との連携への不安はないが、市町村からの出向職員の集まりのため、最終的な責任が不明確であったり、住民からみれば遠いように思えたりなどのデメリットがある。都道府県は、それらのデメリットはないが、保険運営のノウハウがないために事務面での不安がある、市町村の住民への関わりが薄くなるのではないかなどの不安があるなどの、広域連合のメリットを裏返したデメリットがある。
保険者となることを都道府県が受け入れるか、市町村(広域連合)が受け入れるか、引き受ける代わりのインセンティブに何を提示するかという政治的な駆け引きもあるので、メリット・デメリットを単純に比較して決められるものではない。調整がつかなければ、広域連合を基本としつつ、都道府県の関わりを大きくするという折衷案も考えられる。
いずれにせよ、都道府県が医療計画(P)を策定して医療体制を整える(D)。都道府県を単位とする保険者が給付した医療費を分析する(C)。都道府県と保険者が分析結果を評価し、医療体制の見直しなどの対策を講じる(A)という「PDCAサイクル」をまわすことができるようになる。
PDCAサイクルをまわすことで、医療の質を向上させるとともに医療費を抑制することができる。例えば、安い後発薬があるにも関わらず使っていない被保険者や調剤薬局に保険者から通知を出したり、何度も同じ検査を受けていたり、そのたびに同じ薬を処方されていたりする被保険者などに通知を出すといった計画(P)を立て、実際にやってみる(D)。被保険者の受診行動がどのように変わったか、医療費をどこまで適正化できたかを評価し、取り組みを総括する(CA)。保険者の規模を大きくし、医療機関などとの力関係を健全なものとすることで、日本の医療を変えることができるかもしれない。