制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

市町村国保の広域化に向けての「広域化等支援計画」の概要が明らかに

2010年02月24日 10時11分30秒 | 高齢者医療・介護
今月9日に開催された「第3回高齢者医療制度改革会議」の資料が公開されている。今日は、その資料から、市町村国保の広域化に向けた動きを取り上げたい。

第3回高齢者医療制度改革会議
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0209-6.html

資料2:本日の議題に関する基本資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0209-6b.pdf

資料2の参考資料によると、国は、都道府県が市町村と協議しつつ市町村国保の都道府県単位化を進められるようにしたいと考えている模様。そのため、都道府県が以下のことを実施できるようにする(インセンティブをつけて)。

・保険財政共同安定化事業の拡大
・「広域化等支援計画(仮称)」の策定

なお、広域化等支援計画は3~5年程度の支援計画で、その内容は、

・事業運営の広域化
 収納対策の共同実施、医療費適正化策の共同実施、広域的な保健事業の実施、保険者事務の共同化など
・財政運営の広域化
 保険財政共同安定化事業の拡充、都道府県調整交付金の活用、広域化等支援基金の活用など
・都道府県内の標準設定
 保険者規模別の収納率の目標、赤字解消の目標年次、保険料算定方式、応益割合などの標準設定

となっている(案)。
また、都道府県を単位とする「地域保険としての一元的運用」のあり方については、高齢者医療制度の見直しに合わせて議論するとしている。

この資料からは、高齢者医療と市町村国保の運営のあり方の議論が終わるまでの間は、現行制度の枠組みのなかでできることに取り組み、実質的な広域化を進めようとしていることがわかる。これまでの議論をみていると、どこが地域保険者になったとしても、住民に近い市町村が引き続き事務処理を担うことは、ほぼ間違いない(国民年金や後期高齢者医療制度の事務・役割分担が参考になる)。それならば、保険者再編の議論に先行して、保険者事務の共同化を進めておいたり、保険料の格差の問題に取り組んだりしておいても無駄にならないとの判断だろう。
その前のページ「高齢者医療と市町村国保の運営のあり方について」から論点をピックアップすると、

・市町村国保では、保険料額にばらつきがある。どのように保険料の基準・額の統一を図るべきか
・市町村が収納率の向上に積極的に取り組む仕組み(インセンティブ)をどのように設けるべきか
・市町村が保健事業の推進に積極的に取り組む仕組み(インセンティブ)をどのように設けるべきか

となる。これらは、広域化等支援計画の策定にあたって、都道府県が市町村の意見を聞きつつ検討していく内容そのものである。
1つめの論点は、保険料額などが都道府県平均よりも下回っている市町村にとって、広域化は保険料額の引き上げにつながる。デメリットのほうが大きい住民にどのように説明すれば理解が得られるのか、保険料の格差を段階的に小さくするための具体的な方策をどのように定めるのかという問題である。市町村合併が「破談」になった原因の一つ(住民税の引き上げと住民サービスの低下を懸念する市町村が反対にまわる)と同じであり、簡単に解決できる問題ではない。
2つめ・3つめの論点は、地域保険者のあり方がどうなったとしても、市町村の役割はこれまでどおりであるとしっかり明記することから始めるべきことである。インセンティブ・ディスインセンティブの仕組みはその後に考えればよい。