制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

第4回高齢者医療制度改革会議 開催される 高齢者医療制度の骨格が明らかに

2010年03月09日 21時08分10秒 | 高齢者医療・介護
8日に開催された第4回高齢者医療制度改革会議に出された「厚生労働省案」から、後期高齢者医療制度を「廃止」した後の姿がおぼろげながらも見えてきた。基本的には、日曜日のリーク記事と同じで、都道府県単位化した市町村国保と高齢者医療を一体的に運営することとし、年齢の区分を65歳とするもの。被用者保険の被保険者者は、退職して資格を失うか65歳の年齢到達によって、市町村国保の被保険者となる。
なお、新たに明らかになったことは、65歳以上の高齢者医療の枠を75歳で区切ること。年齢による区切りを被保険者が意識することはない。主に財政面での帳尻合わせのためである。

国保65歳以上加入なら、公費負担1・2兆円増
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100308-567-OYT1T00972.html

現行の後期高齢者医療制度と同様に、75歳以上の医療給付費の50%を公費=税金で賄うとすると、公費は9千億円の減。市町村国保は8千億円の増。市町村国保の増分は、最終的には税金で補填することから、差し引き1千億円の減。その分は、健保組合の2千億円の増と協会けんぽの1千億円の減の差し引き1千億円の増で帳尻をあわせられる。
医療給付費の50%を公費で賄う年齢を65歳に引き下げた場合は、公費は1兆2千億円の増。市町村国保は5千億円の増。合わせて1兆7千億円の増となる。健保組合は7千億円、協会けんぽは8千億円の減になるが、公費で賄う分が増えることから、それだけの税収=国民の負担が必要になるということである。そのため、65歳に引き下げる案は国民の理解が得られないとして、選択肢からは外れた模様。

後期医療見直し、新たに最大1.2兆円必要 厚労省試算
http://www.asahi.com/politics/update/0308/TKY201003080377.html?ref=goo

この試算結果を受けてどのような議論がなされたのかはわからないが、新たな制度の基本的な方針は、ほぼ定まったとみてよいだろう。具体的には、市町村ごとに運営している国保を都道府県の単位にまとめて財政基盤を安定させ、後期高齢者と前期高齢者の2つの制度を一体化する。高齢者医療分には、現行制度とほぼ同じ額の公費を投入するとともに、被用者保険からの拠出金をあてるというものである。一体的な運営=地域保険化が進められたようにみえるが、結局のところ、現行制度をつなぎあわせて体裁を整えただけの感が否めない。
ゼロベースで新たな制度をつくりあげるには、じっくりと検討する時間が限られている。この「体裁を整えただけのようにみえる案」ですら、実現性を問われると厳しい。制度の再設計は、それだけの難しさがあるということだろう。いくら「政治主導」といっても、制度・運用設計の素人では手が出せないこともある。

<解説>高齢者医療、厚労省が新制度案 財源、めど立たず
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100309ddm002010024000c.html

<高齢者医療>65歳以上は国保加入 財政は現役と別建て--厚労省が新制度案
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100309ddm001010004000c.html

このブログでも書いたが、市町村国保の財政基盤を安定的なものとするために都道府県単位化することは容易ではない。病院がないために医療給付費が低く抑えられてきた市町村、住民の健康づくりに熱心に取り組んできた市町村にとって、広域化のメリットよりもデメリットのほうが大きい。市町村合併が進まなかったのと同じ理由で、広域化に乗れない市町村が多く出てくるだろう。厚生労働省は都道府県をブロックに分けて保険料率をそれぞれ定めることを認める方針だが、それでも容易ではないだろう。
また、拠出金の負担が増す健保組合・共済組合も反対に回るだろう。今国会に提出されている法案が成立すれば、健保組合・共済組合の保険料が引き上げられる(その分は、協会けんぽの保険料の引き上げ幅の圧縮のために使われる)。3年後には再び引き上げられるとなれば、財政的に限界に達する健保組合が続出することになるだろう。

費用負担、公費めぐる意見多数-高齢者医療制度改革会議
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26688.html

次回は、4月14日。「保険料・給付・医療サービスのあり方」について議論する予定となっている。