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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

第2回ナショナルミニマム研究会が開催される ~配布資料のURLはこちら

2009年12月21日 09時58分17秒 | ベーシックインカム
議事が非公開のため、マスコミに取り上げられていないが、11日の第1回に続き、16日に第2回の会合が開催された。時間は1時間、場所は大臣室で、そもそも「貧困」とは何か、「ナショナルミニマム」とは何かを長妻大臣にレクチャーする場になっているようである。
配布資料は、以下のURLで公開されているので、ご覧いただきたい。

第1回ナショナルミニマム研究会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/s1211-11.html

第2回ナショナルミニマム研究会
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000378g.html

厚生労働省の仕事の仕方への批判が強まっている。なかには、「長妻大臣からの指示がない限り、情報を入れない(どこで何をしているのか報告していないので、指示はない)」「指示がないから、何をやってもよい(ただし、睨まれないように目立たないことを心がける)」という姿勢で政策を進めようとしている役人もいるとかいないとか。

厚労省に葬られた民主党マニフェスト
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_1701&rel=y&g=phl

それならば、1時間ずつでもよいから民間の有識者が集まって大臣と意見交換し、基本的な知識と情報を得られるようにする。その場で基本的な考え方を整理した上で、制度・政策の具体化を役人に指示するという「大臣室主導」の流れをつくりだしたほうがよい。このような研究会をテーマ別に次から次へ立ち上げてはどうだろうか(大臣は大変になるが、これこそ、民間の知恵を活用し、政治主導で動かすための仕組みになる)。

第2回研究会の配布資料からの推測になるが、生活保護制度のあり方に留まらず、貧困やナショナルミニマムの基本的な概念について話し合っていると思われる。大学・大学院の講義資料のようだが、改めて勉強になる。なかでも「非金銭的な貧困指標(資料3)」は良い資料である。所得や消費によって貧困か否かを判断することについての問題点を指摘し、「相対的剥奪」の概念を紹介している。また、必要最低限の生活に絶対に必要な項目(例えば、病気になったときに医者にいくことができる)をあげて、必要性を社会的に合意できるだろうかという議論を展開している。その結果、相対的剥奪=貧困に陥ることが多い人たちは、低所得の人たちに留まらず、20歳代の若者、70歳以上の高齢者、配偶者がいない人たち、単身世帯の人たちなど広範囲に渡るとしている。つまり、所得が一定以下だから貧困で、それ以上だから貧困ではないとは単純に割り切れない(有力な1つの指標であるけれども)と理解すればよいのだろうか。

最後に参考資料として「社会的排除」の考え方も紹介している。ブレア政権下では、さかんに取り上げられた概念だが、最近はどうなのだろうか(ヨーロッパ諸国の基本的な考え方として定着したようにも思える)。

研究会といいつつ、大臣へのレクチャー的な会かもしれないが、とてもおもしろい内容である。第3回研究会に期待するとともに、日本社会における具体的な制度・政策に落とすための研究会も並行して立ち上げてほしくなってきた。厚生労働省の役人も、民間の有識者に負けないように、しっかり勉強して提案すべきである(結局のところ、民間の有識者に頼ることになるのは同じだけれども)。
大臣からの信頼が得られないようでは、おしまいである(逆もまた真だが)。自民党政権のように数ヶ月で交代してしまう大臣ではないと思って「公僕」らしく尽くすべきだろう。