制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

10年後には単身世帯の割合がトップに、高齢世帯の割合は3割超に

2009年12月20日 09時58分57秒 | 高齢者医療・介護
国立社会保障・人口問題研究所が取りまとめている日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)で、10年後の2020年には、単身世帯の割合が全都道府県でトップ(約1733万世帯で全世帯の34.4%。2030年には37.4%に達する)になり、世帯主が65歳以上の「高齢世帯」の割合が3割を超えることが明らかになった。高齢世帯は増加を続け、2030年には約4割。また、高齢世帯のうち、ひとり暮らしの世帯が21の道府県で15%以上、夫婦のみの世帯が10%以上(合わせて25%超)を占めることも明らかになった。

厚労省の「将来推計」 単身世帯がトップに 平成32年、非婚化進行が影響
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/m20091219034.html

高齢者の一人暮らし15%以上に=2030年に21道府県-厚労省推計
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/nation/jiji-091218X393.html

世帯主が75歳以上の「ひとり暮らしと夫婦のみの世帯」は、2025年には10%を超え、2030年には、鹿児島県や宮崎県など5県で20%を超える。75歳というと、医療や介護のサービスを必要とする人が増える年代である。地域によっては、世帯の2~3割が何らかのサービスを利用しないと、日々の生活を安心しておくることが難しくなると考えられる。世帯の小規模化(2030年には、1世帯あたり2.27人となる)も進むために、子どもが生活を支えることは現実的でなくなる。
晩婚・非婚化で未婚率が上昇して世帯の規模が小さくなることに加え、人口の減少に伴って、世帯数の伸びも鈍化する。関東地方ではしばらくは世帯数は増加を続けるが、若い世代が働きに出てしまう地方では既に世帯数の減少が始まっている。地理的に離れてしまっては、親の生活を子どもが支えるにも限界がある。子どもの世帯も余裕はない。夫婦で働かなければ、暮らしていけない時代になっている。

これから先、「結婚せずに働き続け、単身世帯のまま高齢者の仲間入りをする」ことも珍しいことではなくなる。地域社会とのつながりも薄い。「高齢者の問題は、家族で何とかする問題。何ともならなくなれば地域で引き受ける問題」とは言っていられない。家族の支え、地域社会の支えは、今日でも期待できなくなっている。
それでは行政サービスに頼ることはできるだろうか。ここ20年ほど「行政はスリム化が必要」「職員を減らせ」と叩き続けているのだから、いざというときに動ける職員はいないだろう。行政サービスとして提供するには、それなりの財源が必要になるが、日本全体が高齢化していくのだから、その頃には「経済大国」ではなくなっている。財源の捻出は、ますます苦しくなるし、行政サービスに従事する若者はいなくなっている。このようにまっとうに考えると、打ち手がない、悲惨な未来が待っている。だからといって、諦めてよいのだろうか。

これは、遠い未来の話ではない。10年後、20年後に確実に訪れることである。安心して暮らせるような社会サービスをいかに提供するかを今から考えていかなければならない。何か新しいことを始め、全国の地域で定着するまで育てるには、10年では足りない。深刻な社会問題として浮上する10年後から考えて始めていては遅い。将来を見据えて今からできることは何かを探すべきである。

社会の「効率性」を優先すれば、地域に点在する高齢世帯を中心部に集めて、限られた社会資源を有効に活用する「コンパクトシティ構想」が有望に思える。しかしながら、住み慣れた地域を離れて、ゼロから人間関係をつくりなおさなければならない「移住者」にとって、この提案は魅力的とはいえない。充実した医療や介護のサービスは利用できるし、少し歩けば何でも揃っているスーパーがあるという生活の一部を切り出せば魅力的だが、近くに誰も知りあいがいない、気軽に相談できる人もいない、することもない... では、移り住もうとは思わないだろう。現役世代とは違うと考えるべきである。
今日のわれわれにとっては想像できない社会が到来するかもしれない。東北地方の一部などの「人口構成・世帯構成では、20年後の社会を先取りしている」といえる地域をしっかり調査し、全国に展開できるように類型化・汎用化し、解決方法を導き出す必要があるだろう。