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東京都の「公設派遣村」の利用者、現金支給後に201人が所在不明に

2010年01月09日 10時35分28秒 | ベーシックインカム
このブログで「貧困・困窮者支援チーム」の取り組みとして紹介してきた「公設派遣村」で残念な事態が相次いでいる。

年末年始に住居がない失業者などに宿泊場所と食事を提供することを目的に、国立オリンピック記念青少年総合センターに東京都が「公設派遣村」を設置。年末年始の期間中に833人ほどが利用した。4日に「公設派遣村」を閉鎖するにあたっては、東京都が、生活再建の目処が立たずに引き続き支援を希望した人を対象として、2週間の「つなぎ宿泊施設」を準備することで調整がなされ、562人が大田区の臨時宿泊施設(なぎさ寮)を利用することになった。

<公設派遣村>閉所 第2のセーフティーネット、山井政務官が見直し示唆
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100105ddm012040108000c.html

「公設派遣村」が移転 入所者120人減、期間は2週間
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/m20100106015.html

ここまでは、厚生労働省や東京都の狙いどおり。問題となるのは、5日に、つなぎ宿泊施設が設置されている2週間の「就職活動資金(交通費や昼食代)」として1人あたり2万2千円を支給することを決定してから。

6日の朝に現金を支給した直後に、多くの利用者が近くの小売店で酒やたばこを購入していたことが判明。酒を飲んだ利用者が騒ぎ、荷物や現金が盗まれるという騒動が発生。いずれも規則違反で、施設内の飲酒者は強制退去にすること、目的外に使用した金額を返金させるなどの措置をとることが明らかになった。さらに、8日には、門限になっても戻らない利用者が増え、現金を支給された後に所在不明になっていることが明らかになった。東京都によると、7日に利用者として登録している人数は、557人。そのうち、実際の利用者数は、356人。外出手続きをしたまま所在不明になっている人数は、155人。外出手続きをせずに所在不明になっている人数は、46人。合計201人が所在不明となっている(別の記事によると、亡くなった方が1人いる模様)。

2万円受け取り、200人が所在不明…派遣村
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100108-567-OYT1T00480.html

派遣村 所在不明200人 就活費2万円支給後、続出
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/m20100108036.html

その結果、東京都は、期限切れとなる18日をもって「公設派遣村」を閉所することを決定した。期間中の支援で就労できたのは、約1割に留まり、石原都知事に「仕事をあっせんしたら『それは嫌だ』と言い、とにかく生活保護をもらえれば結構だという人もずいぶんいる。甘えた話だと思います」と切り捨てられる始末。
長妻大臣は、「現金が支給された後、所在不明になったのは残念。公設派遣村は試行錯誤を続けており、今後も改革する必要がある」「一部の不正で、迷惑を被ることがあってはならない」などと述べ、大きな課題を残して、「公設派遣村」の支援が終了することになる。

確かに、問題を起こしているのは一部の利用者だが、このように大きく報道されると「公設派遣村」そのもののイメージは悪くなる。1年後も、税金を注ぎ込んで「公設派遣村」を続けるべきか、就職する気がないワンストップサービスの利用者を支援すべきか、と問われると「No」との答えが増えるのではないだろうか。社会からの理解が得られなくなると、支援を必要としている人がいるとしても継続が難しくなる。1年前の「派遣村」でも同じような批判はあったが、このように数値をもって事実を見せられると、「性善説」的なアプローチには限界があるようにも思えてしまう。

「現金を渡されたらどこかに行ってしまう」ような人たちだから、就職先が見つからない。生活を立て直せない。ゆえに、本当に支援が必要な人たちだともいえる。生活保護の手続きをしたり、就職先を見つけたりする支援者とは別に、利用者が抱える問題を解決に導く本当の「(ソーシャルワーク的な)生活支援」の必要性が明らかになったと考えるべきだろう。


4 コメント

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残念なニュースですね。 (正己)
2010-01-09 15:01:58
はじめまして。
RSSリーダーに登録して読ませていただいてます。
お金を手に入れたら行方不明になった人が多かった件、予想できたことかもしれませんがショックでした。
色々な人がいるのだと思いますが…。
湯浅誠さんたちなら効果的な支援方法を知っているのだろうか…。
以前に「ホームレスの原因帰属」という記事を書いたことがあるので、URL欄に入れておきました。
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ありがとうございます (e-wel&gov)
2010-01-09 19:02:17
興味深い記事の紹介、ありがとうございます。

とても難しく、時間がかかる問題だと思います。
お金を手に入れたら行方不明になるような人たちを雇い入れようという会社はないでしょう。その人たちが「自分自身を変えていこう」と思うまで、根気良く、支援を続けなければならないと思います。なかには「そんな支援など要らない」という人たちもいるでしょうし、裏切るような行為に出る人もいるでしょう(今回のように)。一人ひとりの闇の部分にも付き合っていかなければならないので、支援者の成り手も限られます。

効果的な支援方法があって、どこでも誰でも実践できるようなプログラムにまとめられたなら、と思います。湯浅さんには、明らかになった問題を糧にして、年度末に向けての検討を進めてもらえるものと期待しています。
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以下の記事をお読みいただければ幸いです。 (川越)
2010-01-15 13:21:23
以下の記事をお読みになった方がいいと思います。

公設派遣村「無断外泊200名」は事実誤認 - 大多数の利用者は真剣に努力
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10432612600.html

公設派遣村「無断外泊」は行政の無策
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10434158556.html

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ありがとうございます (e-wel&gov)
2010-01-15 23:09:11
確かに、マスコミには「公設派遣村の利用者が問題を起こすのを待って、それみたことか」と報じようとする(悪意ある)偏りがあります。
そうした報道が「偏見」を生み、さらに社会的な排除を進めてしまうような構造=スパイラルを断ち切らねばならないと思います。
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