2日に、事業仕分けで「廃止」や「見直し」とされた51の事業のうち、19の事業(540億円分)について対応が困難との方針を発表した。事業仕分けの対象となっていない64の事業を独自に仕分けして186億円を捻出したが、翌日の3日には、鳩山首相が「よほどきちんとした理屈をたてなければ、事業仕分けの努力が報われなくなる」と発言するなど、旗色が悪くなってきた。
鳩山首相、長妻厚労相の対応批判…事業仕分け
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091203-567-OYT1T00998.html
行政刷新会議の結論に沿った予算編成を―藤井財務相
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25464.html
事業仕分けの結果に不満を持つ役人は、何としてでも「復活」を狙ってくる。仕分け対象にならなかった他の事業に潜り込ませたり、いろいろと理由を付けて必要性を訴えたりする(例えば、年金通帳の予算を使えば、社会保障カードの検討を進められる、など)。大臣に「対応困難」と言わせれば覆るとの前例をつくってしまうと、次から次へと同じような動きが出てくるため、よぼどのことがない限り認められないだろうし、税収が大きく落ち込み、予算編成に向けた調整が難航するなか、「反旗」を翻した格好になった厚生労働省は、かえって状況を悪くしたように思える。
そのためか、4日の閣議後の記者会見で、民主党がマニフェストに掲げていた「年金通帳」の導入に向けての予算(約510億円)の計上を見送るとの発表があった。年金通帳とは、「年金の加入記録」や「これまでに支払った額と、受給見込の額」を記帳できるようにするもの。10月の初めには、金融機関やコンビニにも対応するATMを設置するといった構想を打ち出していただけに、19の事業の引き換えに差し出さざるを得なくなったと考えれば、2日の発表の代償は大きかったといえる(金融機関のATMなどで記帳できるようにするのは現実的でなかったし、「年金通帳」を国民が待ち望んでいたとは思えないので、結果的にはよかったのかもしれない。19の事業には、社会保障カードも含まれる。それだけの価値があったのだろうかと疑問が残る)。
年金通帳、来年度は見送り…厚労相が断念も示唆
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091204-567-OYT1T00800.html
社会保険庁が既に提供しているサービスを拡大して対応し、世論調査を行ったうえで、ある程度満足という結果が出たら、年金通帳の導入そのものを見直すこともありうるとの考え方も合わせて出された。社会保障カードに続いて年金通帳も来年度に計上する予算は0円になった(復活折衝はできないらしい)。いずれも、税と社会保障の「共通番号」が導入されることになれば、見直しは必至。共通番号の議論が決着するまでは、既存のサービスをうまく活用して(新たな仕組みをつくらずに)、取り組むようにと仕分けられることになるだろう。
厚生労働省は、この2つの事業の「予算計上見送り」が決まったとしても、国民から「落胆」や「反発」の声が上がらないことを謙虚に受け止めるべきである。社会保障カードは「国民1人1枚のICカード」、年金通帳は「全国に2200台の端末と通帳」がいかに便利なものかという説明から入る。これでは、国民の理解は得られない。国民が厚生労働省に求めていることは何か、どうすればその期待に応えられるのかを先に考え、実現する手段として、それらが必要という説明に切り替えなければ、同じことの繰り返しになるだろう。
このブログで、民主党のIT政策はあるのだろうかと書いたが、意外にも、自民党よりも良くわかっているのかもしれない。何らかの政策を動かそうとすると、必ずどこかでITを使うことになる。政策が先にあって、それを実現する手段としてITがあるはず。「IT政策」という捉えどころのないもの、「手段が目的化したもの」は要らないという、あるべき姿に戻った(浮ついた時代は終わった)と考えることもできる。
鳩山首相、長妻厚労相の対応批判…事業仕分け
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091203-567-OYT1T00998.html
行政刷新会議の結論に沿った予算編成を―藤井財務相
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25464.html
事業仕分けの結果に不満を持つ役人は、何としてでも「復活」を狙ってくる。仕分け対象にならなかった他の事業に潜り込ませたり、いろいろと理由を付けて必要性を訴えたりする(例えば、年金通帳の予算を使えば、社会保障カードの検討を進められる、など)。大臣に「対応困難」と言わせれば覆るとの前例をつくってしまうと、次から次へと同じような動きが出てくるため、よぼどのことがない限り認められないだろうし、税収が大きく落ち込み、予算編成に向けた調整が難航するなか、「反旗」を翻した格好になった厚生労働省は、かえって状況を悪くしたように思える。
そのためか、4日の閣議後の記者会見で、民主党がマニフェストに掲げていた「年金通帳」の導入に向けての予算(約510億円)の計上を見送るとの発表があった。年金通帳とは、「年金の加入記録」や「これまでに支払った額と、受給見込の額」を記帳できるようにするもの。10月の初めには、金融機関やコンビニにも対応するATMを設置するといった構想を打ち出していただけに、19の事業の引き換えに差し出さざるを得なくなったと考えれば、2日の発表の代償は大きかったといえる(金融機関のATMなどで記帳できるようにするのは現実的でなかったし、「年金通帳」を国民が待ち望んでいたとは思えないので、結果的にはよかったのかもしれない。19の事業には、社会保障カードも含まれる。それだけの価値があったのだろうかと疑問が残る)。
年金通帳、来年度は見送り…厚労相が断念も示唆
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091204-567-OYT1T00800.html
社会保険庁が既に提供しているサービスを拡大して対応し、世論調査を行ったうえで、ある程度満足という結果が出たら、年金通帳の導入そのものを見直すこともありうるとの考え方も合わせて出された。社会保障カードに続いて年金通帳も来年度に計上する予算は0円になった(復活折衝はできないらしい)。いずれも、税と社会保障の「共通番号」が導入されることになれば、見直しは必至。共通番号の議論が決着するまでは、既存のサービスをうまく活用して(新たな仕組みをつくらずに)、取り組むようにと仕分けられることになるだろう。
厚生労働省は、この2つの事業の「予算計上見送り」が決まったとしても、国民から「落胆」や「反発」の声が上がらないことを謙虚に受け止めるべきである。社会保障カードは「国民1人1枚のICカード」、年金通帳は「全国に2200台の端末と通帳」がいかに便利なものかという説明から入る。これでは、国民の理解は得られない。国民が厚生労働省に求めていることは何か、どうすればその期待に応えられるのかを先に考え、実現する手段として、それらが必要という説明に切り替えなければ、同じことの繰り返しになるだろう。
このブログで、民主党のIT政策はあるのだろうかと書いたが、意外にも、自民党よりも良くわかっているのかもしれない。何らかの政策を動かそうとすると、必ずどこかでITを使うことになる。政策が先にあって、それを実現する手段としてITがあるはず。「IT政策」という捉えどころのないもの、「手段が目的化したもの」は要らないという、あるべき姿に戻った(浮ついた時代は終わった)と考えることもできる。