制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

後期高齢者医療制度、2013年度から新制度に移行

2009年10月10日 12時49分51秒 | 高齢者医療・介護
公式な発表はなされていないが、後期高齢者医療制度を2012年度末に廃止し、13年度より新しい制度をスタートさせる方向で検討が開始されたらしい。
このブログでも書いたように構造的な問題がある老人保健制度に戻すことはしない。年齢によって被保険者を区分することのない、新しい制度を立ち上げることを構想しているようである。とはいえ、問題が山積している現在の状況を鑑みると、前途は多難である。

当面のスケジュールとしては、今から1年間ほどかけて制度改革大綱を定めて詳細の検討に着手、2011年度には法案を成立させる。ITシステムの改修・移行作業、国民への説明などに要する期間が2年程度は必要だろうと見越し、2013年度に新制度に切り替える、としている。
珍しくITシステムの改修・移行の話がでてきているが、新制度のあり方によっては、後期高齢者医療制度(広域連合)のITシステムの改修に留まらない。年齢で区切ることをやめるということは、75歳未満の国民が加入する医療保険制度にも手を入れる、ということである。しかも、老人保健制度に戻さないとなれば、「数年前の仕様に戻すだけ」とはいかなくなる。後期高齢者医療制度がスタートしたのは2008年度なので、新制度への切り替え時期によってはIT環境が大きく変わっている。結局のところ、作り直すことになるだろう(IT業界にとって、5年間はあまりにも長い)。

老人保健制度が限界に達したのは、現役世代が高齢者を支えきれなくなったからである。2008年度には7割の健保組合が赤字に転落し、計3060億円の赤字となった。給与水準が少しずつ下がっているなかで、もう保険料は上げられない。となると、財政的に厳しい健保組合から解散し、協会けんぽに移ることになる。少なくとも3年は現行制度が続くならばと解散を選択する健保組合が続出するのは、地域単位で医療保険制度を再編したい民主党にとっては、シナリオどおりなのかもしれない。

2013年度には、どのような制度になっているのだろうか。

被用者保険は、都道府県単位で運営される協会けんぽと生き残った大規模な健保組合、国民健康保険は、都道府県単位で再編する。これまでのように、被用者保険が国民健康保険を財政的に支援するスキームにするか、「現役世代は被用者保険、引退すると国民健康保険」の仕組みから見直し、全くの新しいスキーム=制度にするか。
全く新しい制度をゼロベースで考えたいなら、検討メンバーも入れ替えるべき。これまでどうすべきかを、さんざん考えてきたメンバーからは、新しいアイディアは出てこないだろう。設置される「検討会議」がどのような議論を始めるか。注目していきたい。

後期高齢医療の代替制度検討へ=現行の負担軽減策は継続
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091009X502.html

健保組合全体の経常収支、3千億円の大幅赤字に―健保連
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-24267.html