制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

自立支援法の廃止はどうなる?

2009年10月11日 09時54分35秒 | 自立支援法・障害
厚生労働省絡みの話題は、まさしく「日替わり」である。
まず、大きなところで雇用問題がある。厳しい雇用情勢を受けて、来週にも「緊急雇用対策本部」が設置される。この他にも、年金記録問題に取り組むための経費を概算要求に盛り込んだり、扶養控除の廃止と子ども手当の実現に向けて調整したり、新型インフルエンザに対応したり。その結果、大幅に増えた概算要求額を財務大臣と調整したりと大忙しである。
そのためか、後期高齢者医療制度と同じく、廃止の方向で検討が進められている自立支援法の話は、ここ2週間ほど聞こえてこない。自立支援法を廃止すればよいという簡単な問題ではないので、たった2週間では何もできないのも確かだが。
今回は、民主党が4月にまとめた「障がい者制度改革について~政権交代で実現する真の共生社会~」を足がかりに考えてみる。
注目すべきは、

障がい者等の範囲・定義を見直し、いわゆる「制度の谷間」と言われる福祉サービスの対象外をなくし、幅広く福祉サービスが利用できるようにする。
障がい者等が身近な地域で福祉サービスを選択・利用できるよう障がい種別や年齢で区分されることなく、ニーズに応じた福祉サービス体系を構築する。

とされていることである(P.7)。
自立支援法を設計した時には、支援費制度の財源の問題を解決するために介護保険制度と統合し、同時に、第2号被保険者の年齢を引き下げて国民が広く浅く負担し、介護を必要とする人たちを支える制度にすることが構想されていた。そのため、応能負担から応益負担(サービス利用の上限設定と1割の自己負担)に変え、要介護認定の仕組みをアレンジして障害程度区分するなど、介護保険制度の骨格がそのまま使われることになった。その結果、障害程度区分の認定が必要な介護サービスと、生活や就労を支援するサービスや医療サービスとでは利用方法が異なり、総合的とはいえない制度となってしまっている。

新たな制度を設計するにあたって「介護保険制度との統合はなくなった」とするならば、制度の骨格から自由に考えられるチャンスであると言える。

身体的・精神的に同じ障害があっても、どのような生活をおくりたいかによって必要とする支援やサービスは異なる。障害者本人が自ら選択し決定することが基本なのだから、利用にあたっては個別での対応が求められる。一方で、公的な支援・サービスなのだから公平性が求められるし、調査専門員や市町村などには、決定への説明責任が求められる。
要介護認定は、「介護を要する時間」を尺度=根拠にロジックと重みづけのパラメータが設定されている。障害程度区分も基本的な考え方は変わらない。ロジックとパラメータの出来が問題視されているが、客観性と公平性、説明責任という側面においては評価できる。
障害者福祉・医療のサービスは、歴史的な経緯から、細分化され、複雑化している。新たな制度においては、それらのサービスが「生活・社会参加サービス支援」として統合・簡素化される。つまり、利用者=介護を必要とする人とはいえないために、「介護を要する時間」は尺度にならなくなる。「(サービス利用ニーズでなく)支援ニーズ」の程度を何らかの方法で測定しなければならなくなる、ということである。

介護保険制度を設計した時には、1993~95年の「1分間タイムスタディ」の研究成果があった。障害程度区分は、それを応用できた。新制度においてはどうだろうか。障害者福祉の研究者や実践者の多くは、「ニーズ測定システム」が実現できると考えていないし、そもそも、一人ひとり違う存在である障害者を1つの尺度に当てはめてニーズを測定しようとする考え方に反対するだろう(つまり、使えそうな研究成果がない、ということ)。
これは、制度の入口にあたる部分であり、うまく設計しないと制度全体が立ち行かなくなる。もう少し時間をかけて考えてみたい。

障がい者制度改革について
~政権交代で実現する真の共生社会~
http://www.dpj.or.jp/news/files/090408report.pdf