制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

診療報酬の事業税(地方税)の非課税措置を廃止?

2009年11月22日 10時08分18秒 | 予算・事業仕分け
政府税制調査会は、地方税分の「査定」の結果を各省庁に通知した。具体的には、地方税の負担軽減措置で、その中には、50年以上前に導入されてから今日に至るまで続けられてきた開業医の診療報酬に対する事業税の非課税措置が含まれる。この措置を見直すことで、約960億円の増収になる。

開業医の免税「認めぬ」 50年来の優遇、税調見直し
http://www.asahi.com/politics/update/1120/TKY200911200416.html?ref=goo

開業医にこのような優遇措置があったことは、まったくといってよいほど知られていない。政府税制調査会は公平性の観点から廃止を求めてきたが、日本医師会などの反対で手をつけることができなかったとのこと。税収が8~9兆円あまりと大きく落ち込むなか、自民党が守ってきた「既得権益」に切り込み、財政状況の改善につなげて欲しい。

09年度税収、36兆円以下も=仙谷担当相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091121X476.html

この優遇措置は、開業医の事業所得のすべてにかかるものではなく、診療報酬のみ(5000万円以下)。1952年に診療報酬を引き上げられない代わりに税法上の特例を設けたもので、それが今日まで延々と続いている。診療報酬を非課税とする理由としては、収益を目的とする事業でないことなどが挙げられているが、それならば、介護事業者も介護報酬の事業税も優遇されるべきだし、NPOへの課税への優遇措置を拡大すべきだ、ということになる。このブログで何度も書いているが、開業医よりも福祉・介護の事業者のほうが事業所得は低いし、地域住民の生活を支える公共性・公益性の観点において特段の違いはない(財務省は、優遇措置が拡大することは避けたい)。50年前とは、地域住民の生活を支える保健・医療・福祉・介護の体制は大きく変わっている。当時と同じ論理では、そもそも開業医だけを優遇しなければらないのはなぜかを説明できなくなっている(年収が2000万円を上回っているにも関わらず、「零細な個人事業主なので経営が苦しい」「事務が大変」とは言えないだろう)。

財務省は、昨日の診療報酬の引き下げ・開業医から勤務医への配分見直し要求に続き、税法上の特例への切り込みを狙っている。開業医主体の日本医師会としては、何としても阻止したいだろうが、これまで支持してきた自民党にはその力はない。今さら民主党支持に切り替えたところで、一度傾いた流れを止めることは難しい。厚生労働省を動かしても、対抗する力はない。

医師会が動かすことができる組織票は、それほどでもないことは、今夏の衆議院選挙でも明らかになった。日本医師会が守ってきた「既得権益」に切り込んでも自民党に巻き返されることはないし、民主・自民のどちらにつくのかで日本医師会内も足並みが乱れている。民主党はこう見切ったのではないだろうか。

日本医師会は「政治力」を使って、要望を次から次へと実現してきた。医療機関の地方税・国税の優遇措置がいかに多くあるか、以下の文書(PDF)をみればよくわかる。今回の廃止で終わる話ではなく、まだまだ先があるということである。

医療機関に関わる税制問題について
ー地方税(事業税等)・国税(租税特別措置)―
http://www.okinawa.med.or.jp/doctors/nenkin/nenkin-doc/h210827-2n.pdf