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「人手不足の介護に人材を」緊急雇用創造チームが初会合

2009年11月08日 10時09分13秒 | その他
政府の緊急雇用対策本部の「緊急雇用創造チーム」が初会合を開き、雇用創出の「3つの重点分野」である「介護」「農林」「地域社会」を担当するサブチームを設置。介護では、山井和則厚労政務官が主査を、小川淳也総務政務官が副主査を務めることになった。緊急雇用創造チームは、緊急雇用対策本部の「推進チーム」の一つで、既に「貧困・困窮者支援チーム」と「新卒者支援チーム」が発足している。
会議では、「人手不足といわれながらも、なかなか人が集まらない状況なので、特にここ(介護)に力を注いでいく」、「今、非常に深刻な雇用不安となっているが、その中で逆に人手不足となっている分野の一つが介護だろうと思っている」との発言があった。

取り組みの目玉になることは以前から報じられていたが、うまくいくとは限らない。
単純化すれば、一方に大量の求職者(失業者や離職者など)がいて、もう一方には人手不足の業界がある。ゆえに左から右へと人を動かせば、両方の問題が解決する、との乱暴な考えである。ミスマッチは避けられない。
確かに、介護現場は慢性的な人手不足だし、これから迎える超高齢社会に備えるために人手の確保を急ぐ必要がある。しかし、介護するということは、それほど簡単なものではない。向き・不向きもあるし、少なくとも「おもい・気持ち」が無ければ、やっていけない。中途半端な気持ちでできる仕事ではない。生活のための仕事なら、いくらでもある(時給に換算すると、コンビニのアルバイト並みである)。少し景気が上向けば、介護の現場からあっさり出て行ってしまうようでは、逆に問題を大きくするだろう。

介護業界は、この乱暴な考えに異議を申し立てるべきだろう。

第一に、「給料を得ながら無料で研修を受けることができ、そのまま就職することもできるから」との理由で、大量の求職者が介護の現場にやってくるからである。当然ながら、福祉や介護の仕事に魅力を感じていない人たちもいるし、向いていない人たちもいる(多くは自覚しているだろう)。それらの人たちが資格を取得するのための研修の一環として、現場実習にやってくるのである。
慢性的な人手不足のなか、なんとか回している状態であり、やる気のない現場実習に付き合う余裕はない。苦労して付き合ったとしても、「介護は向いていないから」と継続して働く気もない人たちもいる。これでは、報われない。しかも、そのような中途半端な気持ちでは、利用者に迷惑がかかる。そのフォローだけでも大変である。

第二に、「介護の仕事は、ちょっとした研修を受ければ簡単に資格がとれる=誰でもできる専門性の低い仕事」とのイメージを持たれかねないからである。しかも、高齢者介護の現場は、「雇用の調整弁」ではない。福祉・介護の専門性を高めなければならないと介護福祉士・社会福祉士の資格要件を引き上げたのではなかったのだろうか。それならば、福祉・介護は「高度な専門性を求められる仕事」であり、「介護雇用プログラムごときで、どんどん増やせる人材ではない」と主張すべき。「介護雇用プログラムでも申し込んでみるか」や「介護施設しか採用してくれなかった」の「でも・しか」では続かないことはわかっているはずである。

そもそも、高齢者介護の現場は、この方針にどう思っているのだろうか。
緊急雇用創出事業の委託を受ければ、それだけ経営が安定する。求職者の中には向いている人たちもいるだろうし、わずかでも定着すればよい、ぐらいの思いだろうか。それとも、まだ「他人事」だろうか。

賛成(歓迎)とも反対とも、何の声も上がらないことが、一番の問題だろう。

「人手不足の介護に人材を」―緊急雇用創造チームが初会合
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25084.html