電脳馬牧場-Electric Ranch

カタログ人間による本,映画,ジャズ,古本屋巡り,ニュース拾い

『暗黒館の殺人』(2004年・講談社ノベルス)読了!

2006-09-03 18:14:49 | 読了日記
綾辻行人『暗黒館の殺人(上・下)』(2004年・講談社ノベルス)

オンライン書店ビーケーワン:暗黒館の殺人 上オンライン書店ビーケーワン:暗黒館の殺人 下

僕の本格的なミステリ読みは、綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』
に始まる。かつての本格推理へのオマージュに富んだこの作品の、「小説」という表現方法にのみゆるされた「叙述トリック」に見事に騙され、以後僕はミステリにはまっていくことになる。

この『暗黒館の殺人』は、綾辻行人の代名詞といえる「館シリーズ」の集大成とされる。その圧倒的ボリュームには、普通の読者は辟易してしまうかもしれない。しかし、あちこちに伏せられた様々な仕掛けに、そしてその種明かしに、読者は惹きつけられていくだろうと確信できる。

自分が成長したなぁと思うのは、綾辻さんの大仕掛けを初期の段階で見抜けたことだ。さらに語り手たる『私=中也』の正体も。これは、作中の伏線が案外あからさまなだけでなく、これまで綾辻作品を読み続けてきた僕なりの蓄積があったからなのかもしれない。

綾辻作品は、物理的、叙述的なトリックはもちろん、どこか幻想的な雰囲気を漂わせているところが、その特徴だと思う。
その特徴のすべてを楽しむことのできる本作は、集大成の名に恥じない出来に仕上がっている。


ニッセン

ジェーシービー