メタンハイドレート、海底の宝探し…和歌山など
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20140128-OYO1T00241.htm?from=newslist
2014年1月28日
読売新聞
次世代のエネルギー資源とされる天然ガスの一種「メタンハイドレート」を見つけようと、自治体による独自の調査が熱を帯びている。和歌山県や兵庫県が海中探査に挑んでいるほか、研究会を設ける自治体もある。一部の海域で国の調査が進む中、対象に入っていない海域でも豊富な埋蔵量があると期待する自治体は、「地域活性化の起爆剤に」と意気込む。
和歌山県南部、串本町沖約15キロの太平洋。2013年11月末、県の調査船が魚群探知機による2回目の海中探査を行い、水深1600~1800メートルで柱状に湧き上がる気泡を見つけた。「メタンハイドレートに違いない」。県は13年度に約800万円の予算を組んでおり、28日から3日間かけて範囲を広げて調べる。
鉱業法では、メタンハイドレートなどの天然資源が確認された場合、国が開発者を公募すると定めている。地元では将来、エネルギー関連の企業などが開発者となって採掘が始まれば、港を利用する船が増えるほか、エネルギー供給基地として関連する産業が発展し、働く場が増え、地域の振興につながると期待される。仁坂吉伸知事は「和歌山県沖で生産されるようになれば、商業活動につながる。採算が合う技術が開発されるまでに、メタンハイドレートのありそうな場所を見つけておきたい」と力を込める。
12年度から調査を続ける兵庫県は13年9月下旬、5回目の探査を実施。香美町沖100~150キロの日本海で、水深1500メートルの海底に金属筒を打ち込むなどし、採取した泥のサンプル内にメタンハイドレートが気化した跡とみられる直径10センチ程度の穴を確認した。13年度の調査費は2000万円。県は「埋蔵の可能性は高い」とみて再調査を検討中だ。井戸敏三知事は「日本のエネルギーの安定供給に寄与するだけでなく、この地域の活性化にとって大きな力となる」と語る。
土佐湾沖で埋蔵の可能性が指摘される高知県も、試験採掘などをにらんだ港の活用策の検討を進める。京都や兵庫など日本海側10府県は12年9月に共同研究会を設置、国に調査や開発の促進を求めている。
国は13年3月、愛知県沖で、海底からの採取に成功。その後、日本海側の2海域で調査を進め、11月末には上越沖の海底で確認したと発表した。国はほかに6海域での調査を予定しており、これらの対象外となった自治体が、「埋蔵がわかれば、国の調査を呼び込める」と独自の調査を進める。
資源エネルギー庁は「当面は予定海域の調査を優先するが、自治体の調査などで有望な海域だという根拠が見つかれば、範囲の拡大も検討する」としている。
メタンハイドレートとは?…期待の国産資源だが採掘に課題
Q メタンハイドレートって何?
A メタンガスと水が低温・高圧で結晶化したもので、天然ガスの一種。深海底や永久凍土層に広がっている。氷状をしていて、火を付けると燃えることから、「燃える氷」とも呼ばれている。
Q どうしてこんなに期待されているの。
A 国内のエネルギー供給量に占める天然ガスの割合は2012年度で24・5%と、石油(44・4%)に次いで多い。10年度には19・2%だったが、東京電力福島第一原発事故後、増え続けている。それなのに、現状では大半を輸入に頼っている。日本近海には国内の天然ガス消費量100年分に上るメタンハイドレートが埋蔵されていると推計されていて、大きな国産資源になる可能性があるからだ。
Q 日本近海ではどんな場所にあるの。
A 水深1000メートル程度の海底下の砂層内にある「砂層型」と、水深500~1000メートルの海底の表面付近にある「表層型」の2種類に分かれる。
Q 商業化までの課題は。
A 国が試掘に成功した愛知県沖などの砂層型は海底からの採掘費用が高額で、安定生産に向け、コストを下げる技術開発が不可欠だ。日本海側などの表層型は採掘時に気化してしまう。国は18年度までに商業化に向けた技術確立を目指している。