変わりゆく「普通」

８月３１日付で、
職場のおじ様がひとり、定年退職されました。


途中で出向したり、細々と異動はあったそうですが、
４０年間、同じ組織で働いたのだそうです。


ふと思ったのです。
今の若い人で、新卒で入社し、
定年まで同じ会社で働く人は、
どれくらいいるのだろうか・・・と。


今の若い人は・・・と、責めているのではないのです。



昔は、一度就職したら、定年まで勤め上げるのが普通で、

学校を卒業したら、就職するのが普通で、

探せば就職先が見つかるのが普通で、

働いたら、報われるのが普通でした。



そのような「普通」が、
今の日本からは、失われてしまったように思います。


万物は流転するのですから、
それは仕方のないことでしょう。


これから何が「普通」になるのか、
何を「普通」にしていくのか、
それは、私たちが作り上げていくことだと思います。


主体は、私たちひとりひとりです。
特に若い人たちは、
そのことを忘れてはいけないと思います。





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冠水は怖い

台風の大雨で、各地に大きな被害が出ているようです。


私も大昔、草加市に住んでいた時に２回、
床上浸水の被害を目の当りにしたことがあります。


１回目は学生時代。


私が住んでいたアパートは、
緩やかな坂になった
Ｔ字路の突き当りにありました。


台風の翌日、
朝、窓を開けてベランダに出ると、
（私の部屋は３階）
目の前の道路は、川になっていました。


坂になっているのを知らずに進んできた車が
水深が深くなって動かなくなり、
何台も立ち往生していました。
そのような事態に慣れているのか、
ゴムボートに乗っている人もいました。
外国の出来事のような、異様な光景でした。


それでも、どれくらいの被害なのか
私はよくわからなかったので、
長靴を履いて外に出てみました。
すると、階段を下りた時点で
膝上までの水が溜まっていることが分かりました。


１階にあった店舗は床上浸水し、
お店の人が右往左往していました。
普段行っていたスーパーやコンビニは
すべて臨時休業。
復旧には、数週間かかったと思います。
遠くまで買い物に行かなくてはならず、
本当に困りました。


２回目はＯＬ時代。
場所は、同じアパートです。


その日は１日中、台風で大雨が降っていました。
仕事が詰まっていたので、
夜８時くらいまで残業しましたが、
電車が止まると困るので
途中で切り上げて帰宅しました。


駅の外に１歩出てビックリ。
雨は止んでいましたが、
辺り一面、沼のようになっていました。


サラリーマンのおじ様方は、
意を決したように革靴を脱ぎ、
ズボンのスソを膝までまくり上げ、
カバンの上に靴を載せ、そのカバンを頭の上に載せて、
しずしずと水の中へ進んでいきました。


待っていてもどうしようもないので、
私も仕方なく、靴を履いたまま水の中へ。


水はすぐに腿まで達し、
ひざ丈のスカートはビショビショになりました。
きれいな水ならまだしも、
下水の水も混ざっているので、
どこもかしこもゴミが浮き、
おまけに酷い臭いです。
やっとのことで帰宅すると、
スカートと靴は廃棄するしかありませんでした。

数日後、完全に水が引くと、
辺り一帯に消毒薬が撒かれました。
それもまた、鼻にツンとくる酷い臭いでした。


浸水は、悪夢のような体験でした。
どうかこのような思いをする人が
少しでも少なく済みますように。
命を落とす動物もいませんように。


何かしらの被害があった方には、心よりお見舞い申し上げます。
雨が止んだ後も、数日はくれぐれもお気を付け下さい。



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いろいろズレている

最近、台風の多さに辟易です。


今年の関東は、６月の時点で
３５度を超える猛暑日が続き、
台風１号の発生が、
観測史上まれに見る遅さと言われていました。

それがまだ８月なのに、
毎週のように大型台風が発生。
地球規模で、何かがズレているように感じられて、
空恐ろしいです・・・。


同時に、人間の気持ちについても、
ちょっとズレているんじゃないのかなと
感じることが間々あります。


高畑敦子さんの謝罪会見、
私もニュースで見ました。


愛する息子が凶悪犯罪を犯したのですから、
どれほどショックだったかは
子供がいない私でも、想像に難くありません。


でも、被害者の方にお会いできていないとか、
起こしたのが交通事故でもあるまいし、
神経を疑う部分が何か所かありました。
また、自分の罪をしっかり償えと、
叱責したような印象が足りないようにも思い、
強い違和感を覚えました。


身近で似たようなことがあったのを思い出しました。


離婚した夫の弟は、
飲酒死亡事故を起こしたことがありました。


当時、義弟は工務店に勤務し、
配達で長距離の運転をしていました。
配達が終わった夕方、
軽くビールを引っかけて運転し、
路肩を走っていた自転車に接触したのです。
自転車を運転していた中年男性は
その日のうちに亡くなりました。


警察からの連絡を受け、
義母が北海道から飛んできました。
それから何度も義母は
裁判や、弁護士との打ち合わせのたび、
仕事を休んで北海道から駆けつけました。
（義父は既に亡くなっていました）


それは無理もないことかなと思います。
何かズレているように私が感じたのは、
義母が弁護士に何度も付け届けをし、
何とか執行猶予付きにしてもらえるよう、
とにかく必死であったこと。


そして実際、義弟には執行猶予がつき、
交通刑務所行きは免れることになりました。
すると義母はみんなで
お祝いパーティーをやろうと言い出しました。


義母、義弟、義弟の彼女、
元夫と私が義弟の部屋に集合した時のことです。
義母と義弟の彼女は抱き合って、
「おめでとう！よかったね」と言いながら
ピョンピョン跳ねて喜び合いました。


私はその光景を見て、
正直、ドン引きしてしまいました。
実刑を免れたからといって、
人がひとり亡くなっているのに
“おめでとう”だなんて、どういうこと・・・。


義母は終始、上機嫌でした。
自分がいかに弁護士にうまく働きかけたかを
自慢していました。
義弟に猛省を促すような場面は、
とうとう一度もありませんでした。


私はだんだんと気分が悪くなりました。
自分では気づいていませんでしたが、
かなりムスッとしていたようです。
義母から、
「アンタだけ全然嬉しそうでないね」と言われましたから。



母親の高畑敦子さんが実際、どのような心境なのか
私達にはわかるはずもありません。
ただ、お金を積んで罪を軽くしてもらおうと考えていないことを
私は強く望みます。



ついでに、日本の懲役刑は刑期が短すぎると思います。
刑法が、現代の犯罪の内容・凶悪さについてこれていない。
相当ズレていると思います。







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今こうしてここにいる奇跡

小さな子どもが行方不明になったというニュースを目にするたび、
胸が痛んでなりません。


今の時代、都会であれ田舎であれ
少しの距離であっても、
通り慣れた道であっても、
子どもが独りで移動するのは
危険なことになってしまいました。
怖ろしい時代です。


私の子供時代は、子供が外で遊ぶのは普通で、
子供同士、あるいは子供が独りで歩くのも、
ごく日常の、普通のことでした。
北海道の田舎だったせいもあるとは思いますが。


私が小学校低学年の頃　―
昭和４０年代、北海道釧路市での話です。


私の家から学校までは、
信号のない、太い１本道を１０分ほどの道のりでした。
車自体、滅多に通らない、とても安全な環境でした。


当時は大抵のご家庭で、犬か猫を飼っていました。
賃貸のアパートであっても、
猫を飼うのは珍しくありませんでした。


私は学校が終わると、毎日のように寄り道をして、
よそのおうちの犬と遊んでいました。
給食のパンをわざと残し、
犬にあげるのが大きな楽しみでした。
セントバーナードやブルドッグ、狆にプードルにスピッツ、
いろいろな犬が飼われていました。
どの犬もとても懐っこくて、私は大好きでした。


当時の田舎の一軒家は、現在の家の様に
塀でキッチリ囲っていない家が多く、
どこからが私有地なのか、よくわからなかったのですが、
よそさまの庭先に入り込んで、長時間居座って・・・。
ご迷惑だったかもしれないなあと思います。
今になって、反省しきりです。


しかし、もっとご迷惑だったろうなと思うのは、
窓辺に猫を見つけると、
知らないお宅であっても、
私は見境なくピンポンを鳴らして、
「こんにちは！猫ちゃん見せて下さい！」と
お願いしていたことです・・・。


近所の子供だからと、
大目に見てもらえていたのでしょう。
どこのおうちでも、
大抵、快く招き入れて見せて下さいました。
調子に乗って、何度もお邪魔したり、
お手洗いまで借りることもありました。


ある日、母に何気なく、
「あそこのおうちの猫ちゃんがね・・・」と話すと、
母はビックリして、
「それは一体どこのおうちのこと？」と。


母が知らない人の家に、
私が入れてもらっていることを知ると、
呆れたり怒ったり。
後日、菓子折りを持って
母と一緒に謝りに行ったものでした。


向こう三軒両隣の時代とはいえ、
今の時代だったら・・・と思うと、
少なからずゾッとします。
私が今、子供だったら、
とっくに命を落としていたかもしれません。


私は親の言いつけをよく聞く、
とてもおとなしい子供でした。
だからこそ、親の知らない家を訪ね、
何度も上がり込んだという事実を
母は容易に信じられない様子でした。


子供は時に、信じられないことをします。
それがどうか、大人になって
微笑ましい思い出に変わることを
いつの時代であれ、私は切に願います。



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好きなものだけあればいい

終活の一環として、
スチール棚を２つ手放すことにしたので、
大規模な断捨離をしています。


展覧会に行くたび、記念に買っていたカタログ。
本当に好きなものだけを残して、
処分することにしました。


私はルーベンスが大好きで、
中でも、『四大陸』という絵が一番好きです。

『四大陸』　１６１５年頃


ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカの四大陸が女神に、
それぞれの大陸に流れる代表的な河川が
男性に擬人化されて描かれています。


私は子供の頃からジグソーパズルが好きで、
ルノワール、フラゴナール、ドガ、ゴッホなど
名画もののパズルが特に好きだったので、
大学の一般教養課程では、
西洋美術史を取りました。


夏休み前に出された課題が、
当時上野で開催されていた『西洋の美術』展に行き、
レポートを提出することだったので、
友達と見に行きました。


展覧会は、とても混雑していました。
何の絵か忘れてしまいましたが、
目玉とされている絵があり、
その絵の回りは、黒山の人だかりでした。


一緒に行った友達は人垣をかき分け、
ぐいぐい前に見に行ったのですが、
私はそこまでする気になれず、
人がいなくて、ゆっくり見られる絵を
ぶらぶら探していました。


その時に見つけたのが
上の『四大陸』でした。


この絵は、２メートル以上もある
非常に大きな絵なのですが、
その大きさだけでなく、
下部に描かれている生き生きとした虎と鰐、
写真よりもリアルに見える壷、
流れる音まで聞こえてきそうな水の質感に
完全に圧倒されました。


やがて友達が戻ってきて、
「もう行こうよ」と言いましたが、
私はしばらく動けなかった。
絵を見てあんなに感動したのは、
後にも先にも、あの時だけです。
あの絵、また日本に来ないかしら・・・。


そして、もうひとり、とても好きな画家がいます。


１９世紀のイギリスの風景画家　ジョン・コンスタブル
『麦畑』　１８２６年



コンスタブルの絵も、
ナショナルギャラリーでたまたま見て
空、雲の美しさに、目を奪われました。
心に染み入る純朴な風景画、大好きです。


ルーベンスとコンスタブルがメインのカタログだけ残し、
あとは処分しよう。
これからの私には、それだけあればもう十分。


魂を震わせてくれた偶然の出会いに感謝です。





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