今回は、「伊万里 染付蛸唐草文蓋茶碗」の紹介です。
立面
蓋を外した状態
本体を伏せ、蓋を裏返しにした状態
この「伊万里 染付蛸唐草文蓋茶碗」(以下、「蓋茶碗」といいます)は、1年半ほど前に、私がいつも行っている古美術品交換会で手に入れたものです。
ただ、見ての通り、何の変哲もない、平凡な、しかも、製作年代も幕末と思われますので、やっとこさ古伊万里というところですから、わざわざここで紹介するほどのものではないんです、、、(-_-;)
でも、この蓋茶碗が、このまま、紹介もされないで放置されていますと、世の中から全く忘れ去られてしまうことになりますので、それでも可哀そうだな~と思って紹介することにしたわけです(-_-;)
というのも、そもそもこの蓋茶碗は、私が同情して買ってあげたものだからです(^^;
そのいきさつというのは、次のようなことでした。
これ等は、2個同時に併せて競りにかけられたんです。発句は2個で2,000円でした。しかし、槍を入れる人(買いたいと声を発する人)は誰もいませんでした(><)
仮にも蛸唐草がですよ! やっとこさ古伊万里への仲間入りが出来る程度の幕末のものであっても、蛸唐草は蛸唐草です! かつては、高かったんです! 蛸唐草は一世を風靡したんです! それが、2個で2,000円でも買い手がないとは! 蛸唐草も落ちぶれたものです!
それで、私も、この蓋茶碗が気の毒になり、「発句の値段で売るなら、買ってもいいが、、、」と名乗りをあげ、それで了承を受け、私が落札者となりました。
そんなことで、私は、この蓋茶碗を同情買いしたわけですね。もっとも、そんなに同情していたなら、もっと高く買ってやってもよかったのではないかとのご批判もありそうですが、、、(-_-;)
そんないきさつもあって、同情の延長で、今回、紹介することにしたわけです(^-^;
製作年代: 幕末
サ イ ズ : 口径;10.5cm 高さ(蓋共);7.5cm 高台径;4.1cm
追記(令和2年6月6日)
この記事を読まれた方から、次のようなコメントが寄せられました。
「昔、祝い事などで招かれた時、食事が出されますが、お膳の左手前に「おこわ」の入った蓋付の茶碗が載せられ、右手前には塗物の椀が載せられ、真ん中に刺身の皿、、、が載せられて出てきました。」
この蓋茶碗は、一般には「飯茶碗」と言われているんですが、現代の「飯茶碗」には蓋が付いていませんので、果たして、この器は、本当にご飯を入れるためのものだったのかどうか疑問に感じていました。
このコメントによりますと、昔は、やはり、日常の食事の際には使わなかったにしても、「おこわ」などを入れて使われていたんですね。それで、「飯茶碗」と言われてきたんですね。
納得しました(^-^; コメントを寄せてくだされた方に感謝です。ありがとうございました(^-^;
私の場合は、逆で、国の内外を問わず、時代を問わず、広く陶磁器一般をカジッテいましたが、だんだん古伊万里に絞られました。それは、多分、膨大な量が存在していて、安かったからかもしれません。
しかし、その内、柿右衛門も、古九谷も、鍋島も古伊万里の一様式ということになってきて、守備範囲が広がり、悪戦苦闘するようになりました(><)
そうした流れの中で、蛸唐草は、どんどん人気を高め、値段も上がっていったんですよね。
私としては、蛸唐草は、人気だけが先行し、実力もないのに値上がりしていると感じ、故意に敬遠してきました。
その後は、バブルが弾けたように、転落していきましたよね。
それにしても、最近の落ち込みようは酷いですね。
まっ、もっとも、この1客千円は例外で、相場としては、もう少しは高いかもしれませんが、、、。
私も、蛸唐草は、実力以上に高いのではないかと思い、敬遠していました。
それでも、10年位前からですかね。随分と値下がりしてきましたので、蛸唐草も、ポツリ、ポツリと買い始めたのは、、、。
そうは言っても、私も、このような典型的な幕末の蛸唐草までは欲しくはないんですが、それにしても、あまりにも安過ぎましたので、参考品ということで購入することにしました。
故意に無視したと言えば聞こえがいいですが、何のことはない高くて買えなかったというのが現実です。
昔はこの手の幕末出来でも結構なお値段で売らていましたし、業者さんも強気だったように思います。
典型的な幕末の描き方ですが、150年以上前の品ですから、価格とは別の価値があるのも確かですよね!。
セイと名の付く人とセイで、高くなり過ぎたからかもしれませんね(^^;
しかし、蛸唐草相場は急降下し、それに伴い伊万里相場も降下しましたね。バブル崩壊そのものですね。
そうはいっても、その中にあって、1個1,000円は破格の値段かもしれませんね(^-^;
しかし、そんなことが続きますと、塵も積もれば山となりで、他の古伊万里を買うお金はなくなりますし、保管するスペースも無くなりますから、動きがとれなくなります(-_-;)
それで、そんなチャンスは、あまり到来しないことを願っております(笑)。
これは、大きなグルグルとした渦巻きを描き、そこから、ちょんちょんと枝を派生させて蛸足のようにしているだけですよね。
これが、もう少し古いものになりますと、大きなグルグルとした渦巻きは太い線で描き、そこから更に幾つかに枝分かれさせて蛸足のように表現しているんです。
更にもっと古いものになりますと、大きなグルグルとした渦巻きは細い線で縁取りをして描き、そこから更に幾つかに枝分かれさせる部分も細い線で縁取りして描くというように複雑になります。
この辺のものになりますと、丁寧な作りになりますし、高級品のイメージになりますから、高くなりますね。
この器は、一番簡単な蛸唐草文ということになりますが、手描きですものね。今作ったら手間がかかって高くなりますよね。
それを考えれば、1個1,000円は安過ぎかもしれませんね。
でも、以前は高かったですが、現在は、それほどでもないんです。
用途ですが、普通、「飯茶碗」と言ってますから、主に、ご飯を食べるのに使ったのかと思うんですが、他の用途にも使ったかもしれませんね。
どなたのセイとは言いませんが、おばさま達がのせられてしまって急騰 ・・・ で、まず、生活感のある人たちがソッポを向き、それから浮かれていた人達も引いてしまって、それにつれ、伊万里相場も急降下。バブル期の株や土地を思い出してしまいました。
でも、そのおかげで、品物の価値が本当にわかる人のもとへ、蛸唐草飯茶碗が破格の値段で転がり込んだのは、喜ぶべきことではないでしょうか(^.^)
どのみち、男のコレクションは見栄(よく言えば、物に本質的価値を見出す)ですから、自前で生活骨董は無理だと思います(^^;
唯一の可能性は、日頃、無関心を装っている方に、初期伊万里や古九谷ではなく、江戸後期以降の品を普段使いにすることの素晴らしさを認識していただく事ではないでしょうか ・・・・ 遅生の場合(^_^)
この値段で変えるというのが信じられません。
用途は何でしょう?
もったいなくて、それに、使っていて疵を付けてしまっては、その器に申し訳なくなってしまいますので、使えないんです。
鑑賞用の骨董品にも、純粋に鑑賞用のものと、ちょっとランクの下がる生活骨董という分野があります。
伊万里の場合、純粋に鑑賞用のものは江戸時代までのものになりますかね。
生活骨董に分類されるものは幕末~明治というところでしょうか。
生活骨董も、以前は、年配の主婦の方に愛され、普段使いとして人気があったので、結構、高かったんです。今は、そのような方も減ってきて、生活骨董も人気がなくなってきました。
そうしたなか、白洲正子さんなんかは例外ですね。純粋な鑑賞用の本格的な骨董を普段使いにしていましたから、、、。
私など、とても出来ません(><)
ただ写真だけ掲載するよりも、もっともらしく文章を付け、用語解説も加えると、器も少しはランクが上がるように見えるのかな~と思って書きました。これも、この器への同情の一環でしょうか、、(笑)。
骨董を普段の生活に使うことはなさらないんですね。
この器で何か出てきたらおっ!となります。
今回は同情買いのお品でしたか。
カッコいいですよね。
用語解説が挟んであり有り難いです。(笑)