ハジメが産まれたことによる相乗効果も相侯り、こうして、バカボンは人間的にも大きく成長を遂げてゆくが、小学五年生という年齢でありながらも、サンタクロースの存在を信じて疑わなかったり(「おたのしみのクリスマスなのだ」/76年2号)、正しい性認識の欠如から、自身の出生をクラスメートから聞き、大きなショックを受けたりと(「ぼくはどこから生まれたの」/74年20号)、純真さがもたらす無知な一面は、その後も改善されないままでいた。
とはいえ、結婚は意外と早く、二十歳を迎える頃に、既に第一子をもうけている。
年齢から考えるに、学生結婚で生まれた子である可能性が高い。
バカボン一家の二〇年後の姿をフィーチャーした「20年後のお話なのだ」(前編)(72年6号)では、御年三一歳となったバカボンが登場。
スーツを着用している点から、一般企業に就職していると思われるが、気苦労が多いせいか、まだ若いにも拘わらず、見事に頭が禿げ上がっている。
この時、配偶者こそ出ていないものの、バカボンが息子であるマジメとともに、パパとママが住む実家に里帰りするシーンが描かれている。
このマジメ、バカボンが散々甘やかして育ててきたため、鎌髭を生やすわ、激しい家庭内暴力を振るうわ、とんでもなくクソ生意気な悪ガキに育ってしまったものの、バカボンはそんなマジメのご機嫌取りを嬉々としてしている。
この時、バカボンの妻が登場しなかったのも、恐らく教育方針の不一致から、バカボン自身、妻から三下り半を突き付けられ、離婚、もしくは別居という状態にあったのかも知れない。
また、「恐怖の結論いそぎ人間なのだ」(「別冊少年マガジン」75年5月号)というエピソードでは、マジメのほかに、名前こそ不明なものの、自身と瓜二つの息子が登場しており、そのシチュエーションから勘案するに、バカボンが還暦を迎えた際に出来た子供ではないかと察せられる。
初登場時は、どうしようもなくボンクラだったバカボンだが、持ち前の生真面目さで自身の人生を軌道修正し、その後一人前の社会人として、曲がりなりにも、家庭を築き上げた点は称賛に値しよう。