ポートランド日記

米オレゴン州ポートランドでの生活模様

アメリカの商業主義

2009年04月13日 | アメリカ
いまや日本人は宗教上の儀式やお祭りでさえ、何でも商業化してしまうと言われて久しいけれど、アメリカのそれに比べればまだまだ“甘い!”と言わざるを得ない。アメリカにはむしろ日本よりもっと熱心な各宗教信仰者がいるのだけれど、その一方で、“人種のるつぼ”である事を逆手(?)にとって、あらゆる祭事に際し、お祭り騒ぎの機会(口実?)に替え、その裏で多くのビジネスがこれら祭事を商業化して、巨大マーケットを形成している。

たとえば、私がポートランドに来てから4ヶ月足らず、これまで様々な“商業的な行事”に遭遇した。
まずは、いわずと知れたクリスマス。食品から家の内外の特大デコレーションまで特設売り場がサンタクロースで埋め尽くされた。そうこうして年が明けると、すぐに中華系の旧正月(1月26日)を祝う波に乗って、中華料理の食材や真っ赤な春節用のカードや紙で出来たランタンなどが並ぶようになり、中華料理屋のみならず、ある時は獅子舞ショーなど、市内のあちこちで春節を祝うイベントが開かれる。

それも終わると、次はハート型の風船がたくさん並んで、バレンタイン(2月14日)。チョコレートを贈るのは日本の製菓会社が始めた日本だけの習慣かと思いきや、こちらでもチョコや花束を贈る風習がある。ただ、日本と違って、贈るのは大抵男性から女性で、ホワイト・デーはない(つまり、女性はもらいっぱなし、というわけ笑、さすがレディ・ファーストの国)。余談だけれど、中国もアメリカ式で、男性はこのバレンタイン・デーにかなり奮発するらしく、いまやかなり大きな市場になっているらしい。なお、アメリカでは日本のように、女の子が真剣に意中の男の子に告白、といった重たい(?)空気はなく、むしろ夫婦間やカップルの間の軽い挨拶のようなもので、義理チョコという概念もない。また、子供たちが無邪気に男女関係なくカードやシールを交換しあったりして楽しむらしい。いずれにせよ、文具から食品、宝飾品等、巨大なマーケットであることに変わりない。

バレンタインが終わると、スーパーの売り場は緑一色になる。なんじゃこりゃぁ~!と思って友人に聞いてみると、“セント・パトリックデイ”(3月17日)というアイルランドのお祭りらしい。これは、5世紀に実在した(と言われる)聖パトリックというキリスト教の聖人がアイルランドにキリスト教を広めたことを記念するお祭りであり、彼がキリストの三位一体を示す緑の三つ葉を持っていたとすることから、緑色がシンボルカラーとなった。元々アイルランド人特有のお祭りであり、アメリカに渡った移民が祝っていたものだが、ギネス等、アイルランドはビールやウィスキーなど有名な酒類の産地であることから、パブなどが大々的にこのお祭りを取り上げ、いまや全米規模に発展していった。
その結果、当日は何かしら緑色の物を身につけていないと、(アイルランド人でなくても)みんなからつままれる、という風習もあり、また三つ葉の緑にちなんで、当日はチーズ&マカロニやビールまで緑に着色され、街のバーやパブではアイルランド系如何に関わらず、このお祭りを口実に若者らが大騒ぎする。

緑の嵐が過ぎ去ると、いよいよウサギやヒヨコを模ったチョコレート等が並び、イースター(4月12日)へと突入。しかも、イースター自体は前後90日に亘るキリスト教の宗教行事で、その間“レント”と呼ばれる、キリストが荒野を断食して彷徨う苦行した故事にちなんで、肉などの摂取を控える期間があるが、この宗教的な習慣さえも商業化して、“(肉を控えるとする)レントにはシーフードを食べよう!”なんていうプロモーションが打たれ、実際魚介が安くなったりする。
また、春めいて来た季節に合わせ、家の中以外にも庭をイースター用の装飾品で飾り立てる人々のためにガーデニング・グッズなどの販売も始まり、あらゆるスーパー等で卵型やうさぎ型のグッズを見かけるようになる。

それと平行して、ユダヤ教の過ぎ越しの祭り(古代ユダヤ人がエジプトで奴隷とされていた時代、神がユダヤ教徒の印のある家以外に疫病をもたらし、ユダヤ人のみ災難を免れたことを祝う)(4月9日)用のコシェール(ユダヤ教に基づいた食事規則)の品々が特設コーナーに置かれたりもする。

ちなみに、私はまだ体験していないけれど、5月半ばにはヒスパニック系のお祭りがあり、これも南米人に限らず、盛大に祝われるらしい。

ここまで宗教や信条等を無視(?)、それらが時に有する“垣根”を取っ払って、とにかく商業化し、みんなでお祭り騒ぎしてしまうアメリカ人のパワーは、様々な人種が一つの国家に生存しているという意識を高めるのに役立っているいるのは確かであり、すごいの一言に尽きる。

※写真は近所のスーパーにあるイースター用の花束や風船を売るコーナーで、チョコレートやお菓子などの特設コーナーも別にある。これらプロモーションは実際の行事の最低1~2ヶ月程度前から始められる。


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