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経済学の勉強に挑戦-3-ルワンダ中央銀行総裁日記

2010-03-20 06:41:00 | 経済学
 服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記(中公新書)』(2009/11)という本が出ています。主人公の快男児ぶりが痛快な本ですが、ここに前回述べた成長要因の話が載っています。

p45より
国のなかで生産された富が一部の人の手に渡ってゆき、それがさらに生産を増すために使われるなら、富が富を生み、国の経済はますます発展するのです。しかし生産された富を手に入れた一部の人がこれを浪費すれば、富は富を生まず経済は停滞するのです。もし国民のあいだに、身分や血縁関係によらず能力のあるものが出世できるような自由競争が行われていれば、富を下手に使ったり浪費するような人たちは早晩競争に負けて、能力のある人たちがこれにとって代り、国の富を手に入れてそれを生産に使うことによって再び富を生むという過程が始まるわけです。しかし国の制度でこの競争が制限されていると、富を浪費する人たちが階級化され、富の浪費を恒久化するのです。
(中略)
日本の場合はどんな貧乏な家の子でも、勉強して試験に合格すれば一流の大学に入れ、しかも一流の大学はど学費は安いのです。現に私の学友のうち三分の二は苦学していたのです。一流の大学を出れば官界事業界に自由に入れ、最高の地位も獲得できるという自由競争が行なわれています。また明治以来日本は、民族資本の育成に心がけてきたので、利潤の大部分が国内に蓄積され、新たな富を作っているのです。
------引用終わり-------

 いやあ、20世紀後半において経済学界で一致を見た説が、すでに賢明な実務家にはよく認識されていたのですねえ。そして実際にひとつの低開発国を成長軌道に載せちゃったのだから!

 ついでに経済と直接の関係はありませんが、非常に感銘深かったエピソードをひとつ引用します。

------引用はじめ-------
大統領「総裁、あなたはそういうけれども、先日私の顧問があまりうるさく切下げ切下げというので、私が途上国では政治優先だといったら、閣下が門番に屋根に飛び上れといってもそれは不可能でしょう、いくら政治優先といっても技術的に不可能なことがありますと口答えした。総裁ならこれになんと答えますか」
服部「それは顧問が間違っています。達成すべき目的、つまり政治は、門番を屋根にのせることです。この方法が技術で、梯子で上るか、飛び上るか、ヘリコプターで上げるか、木に登って飛びうつるかは技術なのです。屋根に飛び上れというのはすでに命令者が不可能な技術をとることを指定していることになるのです」
------引用終わり-------

 補足すれば、飛び上がることしか思いつけないような知識や想像力の不足した技術者は二流ということですね。さらに言えば、目的と手段を正確に切り分けて、顧客の本当の目的に沿って課題設定をする力を持つ者が優秀な技術者ということですね。

 いかん、今回は引用文が多くなってしまった。そうそう、快男児ぶりといっても銀行家が主人公ですから、立ち回りは当然出てきません。でもタフネゴシエーションの醍醐味は味わえます。


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