野付半島ネイチャーセンター。北海道別海町野付。
2022年6月15日(水)。
道の駅「おだいとう」を9時20分ごろに出て、9時50分ごろに対岸の野付半島ネイチャーセンターに着いた。直線距離では近いが、道路距離ではかなり遠い。
野付半島(のつけはんとう)は、北海道標津郡標津町および野付郡別海町にある細長い半島で、全長26㎞の日本最大の砂嘴(さし)である。その大部分は、砂丘草原と湿地原で、トドワラ・ナラワラの荒涼とした風景と原生花園の美しい風景が混在する特異な景観で知られる。2004年に「北海道遺産」認定、2005年には「ラムサール条約登録湿地」に登録された。
半島の付け根にあたる部分が標津町に属し、その先の大部分が別海町に属する。半島付け根付近には民家が存在するものの、別海町に属する先端部に民家はほとんどなく、野付半島ネイチャーセンターと、漁業関連の施設が存在するのみである。
「野付」の名はアイヌ語の「ノッケウ」(下顎)に由来し、砂州の形状をクジラの下顎になぞらえて付けられたものと考えられている。
トドワラとはトドマツの立枯れた原という意味だが、カレワラと言葉が似ているので興味を惹かれる。
数年前にNHKだと記憶するが「トドワラ」の番組を見た。砂州が移動するので、トドワラの場所や状況も年単位で変動するという内容だった。
野付半島ネイチャーセンターは、トドワラへの遊歩道入口にあたる半島先端部に位置し、2階には案内職員がいて、いくつか尋ねた。展示もあるし、2階デッキからの展望もいい。
トドワラ方向。
野付風蓮道立自然公園に属し、砂嘴によって囲まれた湾部は野付湾とよばれ干潟やアマモ場が分布している。そこには多様な底生生物(甲殻類や貝類など)が生息しており、またそれらを餌とするキアシシギやオオハクチョウ、コクガン、タンチョウ、ベニマシコ、オオジュリンなどの渡り鳥も数多く飛来し、その数は毎年2万羽以上にもなる。冬には知床半島同様、オオワシやオジロワシが集結する。そのため、2005年11月1日に国指定野付半島・野付湾鳥獣保護区(集団渡来地)に指定され(面積6,146ha、うち特別保護地区6,053ha)、同年11月8日にラムサール条約登録湿地に登録された。
夏季と秋季には数多くの花々が見られ、歩行路を飾る事から通称『フラワーロード』とも呼ばれる。また、トドワラ(トドマツの立枯れ)やサンゴ草も分布し、独特の風景を保持する。
陸生の動物ではオコジョ、イイズナ、ヤチネズミ、キタキツネ、エゾシカを含める哺乳類が棲息する。その他、数多くのチョウ類やトンボ類、固有種のノサップマルハナバチも見られる。ノサップマルハナバチは、南部千島列島、根室半島、野付半島にのみ生息する。
ゴマフアザラシが湾内の砂州で休息し、観光船から観察できる。ミンククジラ、カマイルカ、ネズミイルカなどの鯨類も半島周辺に現れる。時にはシャチが現れ、シロイルカの確認例もある。
2022年6月、環境省は野付半島と風蓮湖、根室半島周辺を国定公園の新規指定候補地として選定。既存の野付風蓮道立自然公園を拡大する形で2030年までの国定公園指定を目指すとしている。
江戸時代後期には千島列島での交易や漁業の拠点となって栄えており、漁業の拠点となる集落キラクが存在した。現在も、その時代の墓地などの遺構が存在するが、足場が悪くぬかるんでいる。2004年10月22日には北海道遺産に打瀬舟と共に選定される。
近年は、砂州からの砂の流出が激しく、また地球温暖化による海面上昇の影響により砂州が年々狭まり、道路近辺まで海面が押し寄せてきている。最近は低気圧、地震、高潮等気象条件により立ち入り禁止になることも増えており、将来近いうちに砂州および道路が海水により切断され半島ではなく島となり、野付半島自体が消失することが危惧されている。
国後島。半島の先は、野付水道(露語:イズメナ海峡(пр. Измены))を挟んで、北方四島の一つ国後島の螻向崎(ケラムイ崎、露語:ベスロ岬(м. Весло))と向き合っている。好天時には泊山(露語:ゴロヴニン火山(влк. Головнина))がくっきりと望める。
知床連山。
トドワラは、オホーツク海に向かって湾曲しながら突出する全長26kmの細い砂嘴である野付半島の半ばから突端にかけて位置する。
トドワラの成り立ちは、砂嘴上のトドマツ林が、海水面上昇ないし地盤沈降に伴う地面の浸食により枯死したものと見られ、1954年(昭和29年)の洞爺丸台風が枯死を加速したとも言われる。ほとんどは樹齢100年前後のトドマツであるが、それよりやや古いエゾマツも混じる。年々腐朽したトドマツの枯れ木が風化・消滅しつつあるため、いずれは何もない湿原と化すと予想されている。
野付半島ネイチャーセンターから徒歩30分程度だが途中まで有料のトラクターバス(2015年頃までは馬車だったが、曳き馬が亡くなったためトラクターが代行)の利用も可能。木道が設けられており散策可能。野付湾を挟んだ対岸の別海町尾岱沼から観光船で渡ることもできる。
トドワラ入口。トラクターの終点。
木道終点。トドワラ鑑賞地点。
帰路の遊歩道周辺は北海道特有の花々が咲く原生花園となっており、6月から9月が見頃。
野付埼灯台(のつけさきとうだい)は、地名上の竜神埼にあり、野付水道(根室海峡)にあって国後島との最狭部16km(約9海里)に対向した灯台のため、国後島にも光達する。灯台近辺はハマナスを筆頭にエゾカンゾウ、ハナショウブが咲く原生花園となっている。1953年(昭和28年)11月5日 - 初点灯。
ナラワラ。トドワラの北には、立ち枯れたナラの木の林立地であるナラワラもある。こちらはトドワラに比べれば腐朽が進んでおらず、枯木が原形をとどめている。
野付半島のトドワラを見学後、12時ごろ標津町歴史民俗資料館・ポー川史跡自然公園へ向かった。
北海道別海町 道の駅「おだいとう(尾岱沼)」 国後島 知床連山