クリエイティブビジネス論!~焼け跡に光を灯そう~

元コピーライター・境 治が、焼け跡になりつつあるこの国のクリエイティブ業界で、新たな理念を模索するブログなのだ!

NHK『激震マスメディア』を巡るソーシャルテレビウォッチング

2010-03-23 01:29:06 | メディアの現在未来
ソーシャルテレビという新しいメディアの楽しみ方がある。すんごくカンタンに言えば、テレビ放送と同時並行でソーシャルメディア(つまりほぼTwitterとイコール)を楽しもうということ。

NHK『激震マスメディア』では、それが重層的に堪能できた。なかなかない機会だったと思う。テレビ放送の新しい姿がそこにはあった。

『激震マスメディア』は放送記念日に合わせて、マスメディアの危機とネットでの新しいコミュニケーションの姿を、リポート映像を織り交ぜながらスタジオでディスカッションして模索するのが趣旨。民放連の会長(というかテレビ朝日の人)、新聞協会の会長(つまりは読売新聞の人)、NHK副会長というマスメディア代表のお偉方と、我らが佐々木俊尚さん、ドワンゴの川上会長、学習院大学の遠藤薫教授というメンバーが議論を闘わせた。

番組は後半で温度が高まった。マスメディア陣が「ネットの人びとは素人であり、報道にはそれなりの規模の組織が必要だ」と言いたがっていた(いや、実際言ってたな)のに対し、佐々木さんが「ネットでは質の高い言論が行われている。マスメディアの方が質が高いという認識はまちがっている」という趣旨の発言をかなり決然と述べていた。ディスカッション番組としては、この点をマスメディア上ではっきり言ってのけたことにその価値があると思う。

だがぼくがここで書きたいのは、実は番組の内容そのものではない。この討論番組を巡り、ソーシャルメディアが大活躍し、楽しみ方の幅を広げたことこそに、この放送の最大の意義がある、ということ。

まずNHK側があらかじめ、Twitterを使いますよと宣言していた。ハッシュタグ(#nhk_media0322)で皆さんのご意見を、と呼びかけていたのだ。

前日からこのハッシュタグは異様と言っていい盛り上がりを見せた。番組とハッシュタグに気づいた人たちがぐいぐいRTしていく。それによって呼び寄せられた人たちがまたRTを発信し、RTの渦巻きが巻き起こったのだ。

当日になると今度は熱い熱い発言がどんどん流れていく。このテーマがいかに旬かがよくわかった。

一方、このところUstreamによるダダ漏れ中継で注目のケツダンポトフが、番組放送の時間に『激笑マスメディア』のタイトルでダダ漏れ裏番組の放送を予告。上杉隆さん、津田大介さん、ホリエモン氏などの豪華(裏)キャストを集めた。

ケツダンポトフのそらの嬢は当初、同じハッシュタグでのTwitter参加を呼びかけたが、いろいろ議論になった末、別のハッシュタグ(#ura_media0322)を立上げることになった。当然、このハッシュタグ上にも人びとが押し寄せ、2つのハッシュタグのタイムラインが、マスメディアとネットに関する意見、主張、異論、反論、愚痴、提言、冷やかしで埋め尽くされた。

そんな騒ぎの末に、22時となり番組が開始。さてそうなると、視聴者としては大変だ。テレビを見ながら1次ハッシュタグ(#nhk_media0322)をTwitterで追いかけつつ、Ustreamでのダダ漏れ中継を視聴し、さらに2次ハッシュタグ(#ura_media0322)もキャッチアップするという、いったいどこに集中すればいいのかという状態に。すべてを脳みそに入れるのは聖徳太子でも無理だろう。

しかし、意外にこれは楽しめた。テレビ放送を見ながらUstreamの方はソファにポンとPCを置いてイヤホンで聴くともなしに聴く。Ustのみなさんも番組を見ながら話しているので、友だち数名とだべりながらテレビを見ているのとあまり変わらない。うまいところで上杉さんあたりがナイスな解説を入れてくれたりで、なかなか楽しめるのだ。

Twitterのタイムラインはほとんど読めない。どんどん流れていくから目と脳みそが追いつけないのだ。でも時々、視界に気になるひとことが入ってくるので、ちょっと止めて読んだりはできた。

ソーシャルテレビの環境をつくれば、テレビ放送もインタラクティブなものになる。今回の放送では生のタイムラインは見せなかったが、番組の企画としてTwitterによる視聴者とのやりとりを最初から組み込めば、いろんなことができるのではないかな。それに何といっても、そうすることで生放送でなきゃ、という番組にできる。テレビは録画して見られるとCMを飛ばされて広告価値が減る、という問題が言われて久しいけど、その解決の一端になるんじゃないか。

マスメディアの危機を議論する番組が、テレビの新たな可能性を示す状況をつくった。しかもつくったのはNHKだけでなく、ケツダンポトフなど、ようするに”みんな”だ。視聴者側も加わって”みんなで番組をつくる”時代が垣間見えたのだった。

さてUst中継の方はぼくがこのブログを書いているいま現在も続いている。NHKの方に出演していたドワンゴ川上会長も駆けつけてすごいメンバーになっているのだが、お酒が入ってちょっとグダグダ状態。それも含めて面白いのだけどね。

いろんなヒントが見つかった、不思議な夜でした・・・

※補足:@Akashitakosaburさんがブログに『激震マスメディア』の真摯な感想を書かれている。新聞メディアの危機についての情報発信を日々しておられるブログです。たぶん心底ガッカリしたのだと思う。番組の読後情報として価値ありなので、みんな読みましょう!

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1 コメント

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はい、心底ガッカリしました。 (明石蛸三郎)
2010-03-23 12:20:09
 仰る通り、心底ガッカリしました。ブログにも書きましたが、やはり現場の記者さんを出して欲しかった。

 それと、SNSの伸びに言及していませんでしたが、それで良かったのかなと思う。SNSこそ、既存メディアの真の脅威だと思えますけど…。

 まあ、今後は個別の記者さんの身の振り方で参考になりそうな事例の紹介に力を入れていこうと思っておりますので、よろしくお願いします。
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