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家に身を隠していたと

2023-10-21 19:44:11 | 日記
家に身を隠していたときである。そのちかくを流れる綾瀬川の河原で、副長と俊冬と俊春と剣や剣術の話をした。その際、「之定」で剣技をみせてほしいとねだったことがあった。

 もちろん、ねだった相手は、副長ではない。俊冬と俊春に、である。

 あのとき、「之定」を掌にした俊春もであるが、俊冬も様子がおかしかった。

 俊春は、朱古力瘤 こちらがひくほど号泣していた。

 俊冬曰く、「恩人の愛刀が「之定」だったから」らということだった。

 あのとき、かれは真実をいっていたのである。

 ただその恩人というのが親父のことだったなんて、想像の斜め上をいきすぎていただけだ。

 そこまで思いだしたら、さらに思いだした。

 餓鬼のに二人と出会ったあのちいさな公園でのことである。竹刀での勝負に俊春に負けた後、親父が「おれもやられたからな」といったっけ。
 
 あのとき、親父は俊春に負けたおれを慰めるために嘘をついていると思っていた。

 この二人が親父を負かすなんてことは、充分ありえるだろう。

「ミスター・ソウマと勝負をしたのはこいつ。おれは、ミスター・アラキと勝負をした。おれとミスター・アラキは竹刀で、こいつとミスター・ソウマは木刀でやったんだ。どちらもいい勝負だった。なあ、そうだったろう?」

 おれをよんだ俊冬が、俊春に声をかけた。俊春は、涙ぐんでいる。それでも、にっこり笑いつつおおきくうなずいた。
と?」
「そうだったね。かれは、きみの上司だったんだ。で会ったのは、ミスター・ソウマだけではない。ミスター・アラキとミス・ナカタも同行していたんだ。きみは、ミス・ナカタのことはしってるよね」

 たしか、という名だ。警視庁の警視で、親父の元部下である。仕事ができるだけでなく、剣道の腕も相当なものだ。警察の大会に何年も連続して女子の部を制している、兎に角すっごい女性である。
 一度勝負したことがあるが、勝負にもならなかった。

「鬼薔薇」というニックネームがあるが、それはそんなすっごい彼女を的確にあらわしている。

「ミスター・アラキ?「ミスター・ソウマが、はじめて日本刀を握らせてくれたんだ。「之定」をはじめて握らせてもらったときの感動は、いまでもはっきりっと覚えている。こいつなんか超絶マックスに感動して、握りながら号泣したくらいだ。そのときにミスター・ソウマが剣技、つまり警視流をみせてくれた。以前、こいつが副長やきみにみせたのを覚えているだろう?ミスター・ソウマにみせてもらったのを、依頼の合間に時間をつくっては二人で練習したんだ。「YouTube」で公開されている警視流をはじめとした、さまざまな流派の動画を何度もみながらね。だから、じゃっかんちがっているかもしれない」
「ミスター・ソウマは、なにもなかったぼくらにと名と剣をあたえてくれた。ぼくらにとってそれらはなによりかけがえのないものだし、生きる気力になっている。だからこそ、ぼくらはミスター・ソウマが大切にしていたものを護りたいんだ」

 俊冬が口をとじると、俊春が言葉をついだ。かれは、鼻をすすり上げつつ指先で幾度も涙をぬぐっている。

「その護りたいものというのが肇君、きみのことだ。ミスター・ソウマはいつもきみのことを気にかけていた。きみのことを、よく話してくれたよ。『自慢の息子』だって、何度きかされたことか」

 泣き声でつづけられた俊春の言葉に、不覚にも涙がでそうになった。

 親父……。

 親父は、おれが餓鬼のから過剰に褒めたり、逆に怒り狂ったりということがほとんどなかった。どちらかといえば、いろんな意味で放置されていた。

 おれ自身、から過剰に褒めたり、逆に怒り狂ったりということがほとんどなかった。どちらかといえば、いろんな意味で放置されていた。

 おれ自身、なのだな」

 島田は、涙と鼻水を垂れ流しまくりながら親父のことを称讃してくれた。

「ああ。ぽちたまにこれほど慕われ尊敬されるほどのにちがいない」
 
 副長も絶賛してくれた。

「まさしくであるな」
「ぜひとも会いたかった」
「かようなをひっぱってくれたであろうに」
「さよう。土方さんとはちがって、万事そつなくやりすごすだろう。しかも、すごい剣士らしいしな」

 中島と尾関と尾形、それから蟻通もめっちゃほめてくれた。

 もっとも、最後の蟻通のは、ストレートに副長をなじってもいたが。
 副長の眉間に皺がむぎゅっとよったが、口にだしてはなにもいわなかった。

 パワハラモラハラセクハラな上司ではあるが、こういうところでは空気をよんでくれる。

 一瞬、近藤局長と副長と親父が肩を並べ、京の町を闊歩する姿が思い浮かんだ。

 うっ……。

 おれがおなじことをするより、よほど絵になるし違和感がない。

「なにゆえだ、主計。なにゆえ、かような偉大なる父であるにもかかわらず、子のおまえがかようになるのだ?」

 いまの想像にへこんだタイミングで、場の空気をよまない、もといよめない男がなんかいってきた。

 そんなKYは、もちろん斎藤一である。

「はい?」

 ってきかれましても……。

「斎藤、あれだよあれ。親がすごいと子はたいていろくでもない。武将の子などもそうであろう?

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