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は、悲しみと怒り

2023-06-11 19:56:52 | 日記
は、悲しみと怒りがいりまじったような、なんともいえぬ である。

「将軍になにかあんのは、しったこっちゃない。だがな、なんかありゃぁ、近藤さんは切腹するぞ。新八が殴り飛ばそうが、忍びに頸をかかれようが、近藤さんは自身の でもって詫びる」

 そこまで思いいたらなかった。そのとおりである。

 返す言葉もなく、また脚を動かす。 肺癌成因 廊下で隊士が四人、手持ち無沙汰におろおろしている。
 さきほど、蕎麦を堪能していた四人である。

「俊春先生が、しばし、宿所で休むように、と。ですが、そういうわけにもゆかず」
「永倉先生が、すごい勢いで・・・」
「いま、入っていかれました。いったい、なにが・・・」
「われわれは、どうすれば・・・」

 四人がいっせいに、口をひらく。
 どの も、困惑しきっている。「命じられた通り、宿所で待機していろ。他言は、無用だぞ」

 次の間に入りつつ、斎藤が命じる。

 間一髪。永倉は、本間へとつづく襖に、掌をかけたところである。

 三人でいっせいにタックルし、もみ合いになる。

 四人とも無言。沈黙のうちに、永倉をとりおさえることができた。

 そして、畳におさえつけた永倉を起こしてやる。

 本能的に、すべてが無言のうちにおこなわれる。「なにをしておる、俊春。それでなくともまちくたびれておる。はよう、まいれ」

 襖の向こうから、将軍の愉しそうな声がきこえてくる。

 四人そろって襖まで這いすすみ、そこに耳をあてる。

「上様、どうかお許しを。幾度も申し上げておりますが、わたしは獣、犬でございます。上様の伽は、つとまりませぬ」

 俊春の弱弱しい抗弁に、心臓が飛び跳ね、ついで痛む。

 あらためて、つきつけられる現実。

「いまさら、なにを申すか?余は、そちと俊冬の願いをかなえた。つぎは、そちが余の願いをかなえるべきであろう?余は、間違っておるか?」
「いちいちごもっともでございます。われらが願いをおききいただきましたこと、あらためてお礼申し上げます。この御恩には、ちがう意味で尽くしたく・・・」
「俊春、俊春、そちはわかっておらぬ。ならば、俊冬、否、土方と申したか?たいそうな美男であるな。土方に、伽の相手を命じてもよいのだぞ」

 永倉の右掌が、「手柄山」の柄にかかる。

 いや、永倉だけではない。斎藤の左掌も「鬼神丸」の柄にかかっているし、おれも「之定」の に右掌をかけてしまっている。

 怒りが、殺気へとかわる。原田ですら、怒りに をゆがめている。

 襖の向こうでは、しばし間ができている。

『気づかれた』

 斎藤が、指でジェスチャーを送ってくる。

「お願いです。これ以上・・・」

 そのとき、俊春が・・・。
 かぎりなく、ちいさなささやき。

 それは、将軍にではなく、おれたちにむけられたもの。

 四人で躍り込み、将軍をぶん殴って啖呵の一つでもきってやりたい。そのうえで俊春を連れ、いっそ からひきあげたい。

 忍びに殺られようが関係ない。どうせ、になる。舞台をおりた将軍がどうなろうが、歴史の流れはかえられない。

 いや、将軍が死んだら?歴史はかわってしまう・・・。

 そんな問題じゃない。やはり、 を軽んじるわけにはいかない。たとえそれが、どんな腐ったやつの でも・・・。

 そうだ、ほかの幕臣に、警固をかわってもらえばいい。彰義隊がまだ準備ができていないのなら、できるだけ寄せ集めればいい。
 その連中に情報共有し、かわってもらえばいい。 原田が、『でるぞ』と合図を送ってくる。そのまま永倉をひきずるようにし、次の間よりでてゆく。

 襖を睨みつけ、そのあとにつづく。斎藤は、おれよりもながく、それを睨みつけている。

「最初から、素直にまいればよかったものを。案ずるな。そちがいてくれるなら、ほかに うつりすることもない。ささっ、はようはよう」

 次の間からでようとすると、興奮しきった将軍の声が背にあたる。
 どうやら、テンションマックスのようである。

 廊下をすこしあゆみ、本間より距離を置く。

 原田は、そこでやっと永倉のシャツの襟首をはなした。
 よくぞ、シャツが破れなかったものである。

 四人とも、第一ボタンはあけている。おれも、しばらく着物で開放感があった分、常時きっちりボタンをとめておくのは苦しい。

 永倉は、すばやく立ち上がると原田とむきあう。

「新八・・・」

 原田が絶句する。
 ほぼ同時に、斎藤とおれも。

 永倉が、泣いているのである。髭にすっかりおおわれた相貌(かお)。その頬に流れ落ちる涙・・・。

 よりいっそう、自分の無力感にさいなまれてしまう。

「わかってる。頭んなかでは、わかってるんだよ。あいつらが好きでやってるわけじゃないってこと、おれが暴れりゃ、近藤さんが腹きっちまうってこと・・・。だがな、わかるだろう、左之?」

 永倉は、たくましい腕を伸ばすと、原田の