久坂と真木保臣を頭とした山崎天王山部隊、国司信濃と来島又兵衛を頭とした嵯峨・天竜寺部隊、福原越後を頭とした伏見部隊、益田右衛門介を頭とした八幡部隊。
七月頭には述べ二千人近くの軍隊となった。
新撰組は同じく九条河原に布陣する、会津の一部の部隊と協力して周囲の見回りを担当した。
東九条村にある関白九条邸と、富途證券 銭取橋を行ったり来たりする日々である。
しかし待てど暮らせど進軍命令は来ず、膠着状態が続く。
そうして七月十七日になった頃。
茹だるような真夏の盛りに、隊士達は炎天下でも出動命令を待っていた。
ついに業を煮やした新撰組は、優柔不断な指揮者である一橋慶喜の態度に怒り、会津藩士と共に宿舎へ乗り込もうとした。
しかし、松平容保が介入したためその顔を立てるために引き下がったという。が物悲しく鳴く夕暮れ時。
男山の石清水八幡宮では長州軍の最後の軍議が開かれていた。
一橋慶喜より孝明天皇の名の下に、この日までに退去せよと言われていたのである。
つまり、これ以上留まるのであれば戦は避けられないという最終勧告だ。
「天子様は我らへ退去命令をお下しになられたけぇ、背くべきでは無いと考える。このまま兵を引くべきじゃ」
重い沈黙を破るように、久坂が堂々とそう発言する。
しかしその声に続いて賛同する者は出なかった。
「…久坂君、今この機を逃して如何に無念を晴らすというのじゃ。進軍を躊躇うとはが物悲しく鳴く夕暮れ時。
男山の石清水八幡宮では長州軍の最後の軍議が開かれていた。
一橋慶喜より孝明天皇の名の下に、この日までに退去せよと言われていたのである。
つまり、これ以上留まるのであれば戦は避けられないという最終勧告だ。
「天子様は我らへ退去命令をお下しになられたけぇ、背くべきでは無いと考える。このまま兵を引くべきじゃ」
重い沈黙を破るように、久坂が堂々とそう発言する。
しかしその声に続いて賛同する者は出なかった。
「…久坂君、今この機を逃して如何に無念を晴らすというのじゃ。進軍を躊躇うとは久坂が陣に戻る頃には、すっかり日が暮れており烏が不気味に鳴く声が山に響いていた。
空を見上げれば、橙から藍色へ変化を遂げようとしており、木々がまるで影絵のように映える。
「久坂…。軍議はどうじゃった」
そこへ久坂の心中を唯一知る入江がやってきた。
久坂は篝火の前に座ると、力無く首を横に振る。
視界の端に、名も無き一輪の小さな花が目に入った。気付かぬうちに踏んでしまったようで、その花弁は散っている。ると、手のひらに乗せた。
この花のように、俺らは名も残せぬまま散っていくんじゃろうか。
そのように花に自らの姿を投影しては目を細めた。
昔から例えられるように、人の命も花と同じく儚いものである。そう分かっていても、やるせなさが込み上げる。
「そうか…。よう気張ったのう。来島翁は頑固者じゃから。先陣を切って突っ込んで貰えりゃええ」