goo blog サービス終了のお知らせ 

Mr.マトリョーシカの脱走

マトリョーシカ(Матрёшка)式世界からの大脱走。脱兎のごとく。

椎名林檎全曲レビュー その2

2008-11-26 02:39:18 | 全曲レビュー
レビュー書いてみたら、どうも音の面にばかり着目してしまう傾向がありますね。
歌詞に着目してもいいんですが、そうすると僕の個人的な体験などを引き合いに出さなきゃなりそうだと気づいたので、自重します。イタいわ長いわで悲惨なことになりそうなのでね。
てか、誰も興味持てない話だろう。


そもそも俺の林檎さんとの歩みは、「勝訴ストリップ」を発売日に買った時から始まる。
当時は「椎名林檎」っていうのは一時代を築いたわけだけれど、ある種キワモノだった。
地域差はあるかもしれないけど、男子中学生が椎名林檎を聴くなんて頭がおかしいと思われそうだった。
ラルクとかドラゴンアッシュとかを聴くのが男子中学生としての在るべき姿だったのだ(どっちも聴いてたけど)。
椎名林檎が好きなんて、ましてや発売日にCD屋に走ったなんて恥ずかしくて誰にも言えず、気分はもう隠れキリシタン。


ってことで、つまり、こっからがリアルタイムで接してきた曲になります。
そのせいか自然と「その1」より長めになった。



●ギブス(00.1.26)

①ギブス
これは言うまでもなく、とんでもない名曲。

まず。
イントロが無くてボーカルの息を吸う音で突然曲が始まるのがかっこいい。
この息を吸う音によって、独特の緊張感が生み出されてる様な気がする。
あと、アルバム「勝訴ストリップ」の中の一曲として聴くとき、この曲の始まりはより衝撃的。

サビまではピアノが静かに美しく曲を進めていくんだけど、この時バックで流れる打ち込みの音が、単なるバラード調ではなく、より鋭さのある楽曲にしてる。


で、サビについて書く前に歌詞について。

歌詞。
字面だけ読むと、女の子のキュートな恋心。超可愛い。
しかーしメロディにのると、何だこの貫禄は。
なかなかこういう可愛い歌詞にこういう迫力を持たせて歌える歌手というのはいないだろう。
きゃー、かわいい!で終わりでしょ、普通。

サビ。
サビでは迫力ある歌唱が一気に高まり、悲痛とも言える熱唱に変わる。
ギターも
熱唱と熱演が一気に爆発する様は心に響く。



前も書いたけど、歌詞に実在の人名入れるのは嫌いだし、「i 罠~」っていう当て字もイタいと思う。
でもそんなのこの曲においては瑣末なことに過ぎない。
細かいことばっか言ってんじゃないよ、この唐変木、或いは馬鹿。
本当に素晴らしい曲。


②東京の女
カバー。
「歌舞伎町の女王2」みたいな位置づけでしょうか。


③Σ
これは最強にかっこいい曲。
ライブで聴きたい。

あ、このサビって「積木遊び」と同じメロディね。
このレベルまで来ると、手抜きだなんて言うのは下らない。



●罪と罰(00.1.26)

①罪と罰
こういうスローな重いロックを歌い上げることができるんだからかっこいい。

不協和音っぽいオルガンから始まるイントロがいいね。
掠れ声で悲痛な熱唱をするボーカルもとても良い。

ちなみにギターはベンジーが弾いてるんだけど、あまりフィーチャーされてないし意義を感じられない。
もうちょっとベンジーらしさのある演奏はできなかったのだろうか。


②君ノ瞳ニ恋シテル
スタンダードナンバーのカバー。
聴いていて楽しく気持ちいい。

ただ、「アンコンディショナル・ラブ」などの様な、椎名林檎的世界観は作れていない。
もっと言ってしまえばカラオケっぽい。

ベースが単調だなあ。亀田さんっぽさが全くない。


③17
美しいメロディ。
周囲に馴染めない高校生の鬱屈した心情を感動的に熱唱する曲。
郊外の退屈だが美しい風景が思い浮かぶ。

聴くと一日だけ中高生に戻りたくなる。



●勝訴ストリップ(00.3.31)


①虚言症
さーて、椎名林檎のアルバムはどれも一曲目が凄いぞ。
「無罪モラトリアム」はドラムで幕を開けたが、この「勝訴ストリップ」はでかいベースの音で幕を開ける。

俺は椎名林檎の曲の評価をつけることはできない。
なぜなら、どれも素晴らしくて差をつけられないから。
でも「椎名林檎のベストソングを選ぶか、若しくは死か」と恐怖の大魔王みたいな奴に問われれば、苦し紛れにこの曲を選ぶかもしれない。
そのくらいこの曲は素晴らしい。

この曲の魅力のひとつは、メロディのドラマチックさだと思う。

イントロでドラム、フルート、ドラムと続いて投入されるが、これがもう心をつかんで離さない。
イントロで最高潮まで高まる期待。

Aメロで「ズズ、ズズ」と刻むベースが、Bメロでは解放され水を得たようにグワングワンと走り回る。それと並走するストリングスも実に美しい。


歌詞も実にいいと思うね。
「新聞で見た電車に投身自殺した女の子に向けて書いた」みたいなことをどこかで言っていた。
適度なイタさ。若い時にしか書けない詞だろうな。
そういうシンパシーが明るいメロディと迫力のある演奏に溶け込んでる様に心を揺さぶられる。

ボーカルも適度な巻き舌。高音での掠れるような声。
この歌い方が一番好きだ。


素人の俺が何言ってもどうってことないだろうが、それでも「完璧」と言わせてほしい。

しかもこの曲、16歳とかそのあたりで作った曲らしいぜ。
なにそれ。
もう訳が分からん。HAHAHA。すげーですよ。


②浴室
AメロBメロの詰まったような感じから、サビに移るところでスーッと抜ける。
これがとても気持ちいい。

FPMのおっさんが自身のCDで取り上げてた。
たしかにダンス・ミュージックっぽいね。
いわば「新宿系」と「渋谷系」の融合みたいな曲。


③弁解ドビュッシー
なんかこのAメロって「積木遊び」じゃね?分かりづらいけど。いや、分かりやすいかな。僕、耳腐ってるので(爆)
「Σ」でもつかってたし、このメロディ好きなのかな。

これはかっこいい曲。
ベースが主役だね。
全体的にやすりがかったみたいなザラザラしたところに歪んだベース音が絡んでるのがイケてる。


④ギブス


⑤闇に降る雨
ストリングスの音質がやばい。不吉だー。

「勝訴ストリップ」は前作に比べて高湿度な曲が多いと感じるが、この曲は典型的。タイトルに雨ってあるだけに、じめじめした曲。

声も「無罪モラトリアム」や「虚言症」のものとは違いますね。
全域にわたってハスキーで、曲の雰囲気に合っている。
この曲の巻き舌は若干やり過ぎかな。

俺はこの曲に、次のアルバムである「加爾基 精液 栗ノ花」の気配を感じる。


⑥アイデンティティ
激しい。
悲痛なボーカルや、バカスカやるギターやドラム。かっこいい。

あと、ちょっとこのベース、明らかにすごいんじゃない?
ずっとベースやってる友達もこりゃすごいって言ってた。


⑦罪と罰


⑧ストイシズム
お遊び曲。アルバム内の区切り。
ちょっと油断すると耳に残る(笑)

ちなみにこの歌詞は「罪と罰」の歌詞を逆から歌ったもの。


⑨月に負け犬
個人的に凄く思い入れのある曲。

まず出だしが秀逸。
ボーカルの息を吸う音から始まる。
そして、ゆるーいギターのみをバックにワンフレーズ歌い、「…しまいそうだああああ~」で盛り上がる。
なんてドラマチックなんでしょう。


この曲はこのアルバムでは唯一ギター、ベース、ドラム以外の楽器を使っていない。
それだけに、聴いていてボーカルの微かな鼓動のようなものを感じる。
「吐く息が熱くなっていく」という歌詞があるが、まさにその様子を感じる。


⑩サカナ
歌詞がヒドい。正直、萎える。

あと、「へばりつける」の部分のメロディがあまり好きではない。
サビの出だしはすごく好きなんだけど。

ベースとギャンギャンいってるギターはとてもかっこいい。


⑪病床パブリック
ヤケクソ感のあるぶっつぶれた音質。これがすごくいい。

かなりキャッチーなメロディだと思うんだけど、意外とファンの間で言及されることの少ない曲だったりする。
なぜだろう。

てか、椎名林檎って音域広いなー。
Aメロをはじめて聴いた時、男が歌ってるのかと思った。



⑫本能
椎名林檎のアルバムがすごいなーって思う理由の一つは、大ヒットしたシングル曲が全く浮いてないということだ。
アルバムのバランスと世界観のブレなさ、すばらしい。

この曲はシックな曲調がグッド。
サビのあとで落ち着いたAメロが来るのもグッときます。

あと、「だいきらぁぁぁいなのぉぉぉ」の「らぁぁぁい」の発音が好きです。


⑬依存症
泡の音やエレピが演出する浮遊感が気持ちいい曲。
歌詞も、人名が出てくるのと、「病気なんでしょう」って部分以外は大好き。

そしてなんといっても、ギターソロにピアノやいろんな音が混ざり合うカオスで感動的なアウトロ。
そしてこのアウトロは徐々に小さくなり、最後はプツっと切れてしまう。
この切れた後に聴き手が噛みしめる余韻がいいね。

ほんと、ヒリヒリするくらい良いアルバムです。







ちょっと長くなったので「その2」はこの辺で終わり。

最新の画像もっと見る