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ブエルタ・ア・エスパーニャ2012を振り返る(3)

2012-12-20 20:24:33 | プロ・ツール

 今年のブエルタ・ア・エスパーニャは山岳にカテゴライズされてはいないが、山岳の頂上ゴールにも匹敵する激坂がゴール手前に配されているステージが目立った。ホアキンロドリゲスが鮮やかにスプリントを征した第6ステージもそうだったが、第12ステージのゴール地点ミラドール・デ・エサロもそのひとつだった。「展望台」という名前の通り、標高270mの丘を、わずか1.9kmで登りきる。平均勾配は13.1%で、カテゴリーは3級なのだが、最大勾配は何と29%という激坂。
 第6ステージでフルームを5秒、バルベルデを10秒、そしてコンタドールを18秒もの差を付けて勝利したホアキン・ロドリゲスが、この日も有力と見られていた。ラスト1kmを切り、最も勾配が増したポイントを前にマイヨロホのロドリゲスがアタック。これに反応出来たのはアルベルト・コンタドールだけ。マイペース走行に徹したアレハンドロ・バルベルデやクリス・フルームらがしばらくして一旦合流したものの、今度はコンタドールがペースアップ。こうして総合ワンツーの先行が決まった。
 ペースを作るコンタドールと、慌てずペースを合わせるロドリゲス。ゴールスプリント勝負に持ち込まれると思われたが、ゴールまで200mを残してロドリゲスがギアを掛けて飛び出す。コンタドールはこの加速に対処出来ず、グングン先行したロドリゲスがそのままゴールに飛び込んだ。TTが苦手でグランツールのタイトルを逃し続けてきたホアキンだが、今年のブエルタ・ア・エスパーニャではコンタドールとのTT対決を1分未満の差でマイヨロホを守りきっていた。個人TTを終えて1秒にまで詰まったタイム差もここでまた13秒にまで開くことになる。Ve2012_stage14

 そして中盤での山岳ステージ3連戦へと突入して行く。怒濤のアストゥリアス山岳3連戦が幕を開ける。初日の第14ステージは150kmに満たないショートコースながら詰め込まれたカテゴリー山岳は5つ。スタートからゴールまで登りと下りしかないようなコースレイアウ。特に終盤のガリシア州、アストゥリアス州、カスティーリャ・イ・レオン州をまたぐ2連続1級山岳に注目が集まった。
 この日はサクソバンク・ティンコフバンクがレースをコントロールしていた。レースコントロールはリーダーのいるチームが行うのが通例だが、ホアキン・ロドリゲスを擁するカチューシャは逃げを容認する構えだったようだ。今年のブエルタ・ア・エスパーニャでは何とかしてホアキン・ロドリゲスにハイペースで脚を使わせようという作戦を取っているようで、スカイやサクソバンク・ティンコフバンクがレースをコントロールするシーンが目立っていた。
 ゴール24km手前の1級山岳フォルゲイラス・デ・アイガス峠で早くもサクソバンク・ティンコフバンクがペースを上げ、セレクションを始めた。勝負は最後の1級山岳フォルゲイラス・デ・アイガスと見ていたのだが、以外にも早くレースは動くことになる。そして、この日最後の1級山岳アンカレス峠に差し掛かり、やがてこの日最後の1級山岳アンカレス峠に差し掛かり、サクソバンク・ティンコフバンクがさらにペースを上げる。そしてラスト3kmを切って本命が動いた。チームメイトに終始リードされたコンタドールが、ラスト3kmからの急勾配区間を前にアタック。これにバルベルデとロドリゲス、ダニエル・モレーノが合流し、それまで逃げていたロサダを抜き去っていく。
Ve2012_23
 総合3位クリス・フルームが出遅れる中、ラスト2kmでコンタドールが独走に持ち込む。しかし、集団を木っ端みじんにするような全盛期の走りは見られず、ラスト1kmを切ってロドリゲスが先頭コンタドールに合流。こうして総合ワンツーの2人による山岳バトルが再燃した。チームの積極的なレースコントロールでコンタドールが勝ちにきていることは分っていたが、またまたホアキンに追いつかれてしまった。Ve2012_24

 白い歯を剥き出しにし、執拗にアタックを繰り返すコンタドール。しかしマイヨロホは軽いダンシングでアタックを処理する。ラスト200mの最終コーナーを曲がり、今一度ペースを上げるコンタドールに対し、ロドリゲスがスプリント体勢で加速すると、コンタドールには抗う力が残ってはいなかった。コンタドールを5秒、バルベルデを13秒、そしてフルームを38秒引き離すとともに、貴重なボーナスタイム12秒をゲットし、着々と総合優勝の足場を固めて行く。TT終了時には1秒だったタイム差が22秒にまで開いてしまったコンタドール。フルームとバルベルデに対してはタイム差を広げながらも、マイヨロホ獲得の前にホアキン・ロドリゲスという大きな壁が立ちはだかる結果となってしまったのである。
 続く第15ステージは大逃げを容認した結果、カハルーラルのアントニオ・ピエドラがグランツール初勝利を飾ることとなる。このステージでは優勝候補にも名前が挙がっていたクリス・フルームが大きくタイムを失うことになった。マイヨロホ争いはコンタドール、ホアキン、バルベルデの3人に絞られるステージであった。
Ve2012_stage16
 2回目の休養日を前にして今大会最難関クラスの山岳コースとなる第16ステージは、アストゥリアス州の海沿いの街ヒホンから、標高1850mのスキー場までの183.5km。獲得標高差は4500mオーバーで、平均勾配が8%半ばという1級山岳サンロレンソ峠と1級山岳コベルトリア峠がレース中盤に登場。さらに、登坂距離19.4kmで、平均勾配は6.9%というパハレス峠が最後に待ち受ける。このパハレス峠はこれまで何度もブエルタに登場しているが、今回のゴール地点は、峠から更に3kmほど登った先のスキー場、ブエルタ初登場のクイトゥ・ネグル。最大勾配25%の激坂バトルが待っている。Ve2012_15

 この日はヴァカンソレイユのトーマス・デヘントとオメガファーマ・クイックステップのダリオ・カタルドの逃げが55km地点で決まり、タイム差は最大15分まで開いた。二人とも総合では1時間以上ものタイム差があり、集団も大逃げを容認。しかし、この日もサクソバンク・ティンコフバンクが積極的にレースをコントロールしていたのである。ブエルタ・ア・エスパーニャとしては比較的距離も長く、最後の上りも20kmならホアキンとのタイム差を詰められるとの判断だと思われる。
Ve2012_11
 そして、この日も攻撃の口火を切ったのはコンタドールであった。総合で2位なら勝つためにアタックを仕掛けるのは当然としても、近年のグランツールの傾向としては失敗を畏れて守りの走りをする選手が多くなってしまったと感じていただけに、幾度となく繰り返されるコンタドールのアタックは感動的であった。
 コンタドールはアタックを連発させたが、その背後ではロドリゲスがぴったりとマーク。やがてバルベルデは遅れ、ゴール手前の激坂区間に突入する。ラスト200mの激坂で仕掛けたロドリゲスが、あっという間にコンタドールを2秒、バルベルデを19秒引き離してゴール。ステージ3位でボーナスタイムも同時に手にしたロドリゲス。コンタドールとの総合タイム差を22秒から28秒に拡大させる結果となったのである。
 中盤での山岳ステージ3連戦でもホアキンに1度も勝つことができなかったコンタドールがわずか28秒という差であっても、最後の山岳ステージでホアキンを逆転することはほぼ不可能だと多くの人が思った瞬間であった。

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