2週間前にツール・ド・フランスを終えたばかりとは思えないエヴェネプールの走りでした。1週間前には雨の中の個人TTで現世界チャンピオンの強さを見せつけたエヴェネプールが、ロードレースでも後続に1分以上の差を付けて2個目の金メダルを獲得しました。これは史上初の偉業です。
これまではロードレースの中でもTTは特殊な種目でスペシャリストがいたのです。それが、近年のロードレースのスピード化の影響か、TTに弱い選手はロードレース、特にグランツールでは総合優勝できない時代になっています。ポガチャルにしてもヴィンゲゴーにしてもツール・ド・フランスを総合優勝する選手は個人TTでも勝っているのです。
勿論、平坦の純粋なスピード比べではフィリッポ・ガンナのようなトラック選手が強いのは当たり前なのですが、そのガンナを抑えてジロの個人TTをポガチャルは勝っていますし、今回のパリオリンピックの個人TTでもエヴェネプールがガンナを抑えての金メダルだったのです。
身長が171cmと小柄なエヴェネプールのどこにそんな力があるのかといつも不思議に思ってしまいます。元はジュニアのベルギー代表に選ばれるほど優れたサッカー選手でしたが、自転車競技に転向するとあれよあれよと勝ちまくり、2022年には22歳の若さでロードの世界チャンピオンにまで登り詰めて行きます。昨年は個人TTでの世界チャンピオンになっているのです。2000年生まれの24歳で、今年はツールのヤングライダー賞をポガチャルから引き次いでいます。
戦前の大方の予想はファンデルプールVSファンアールトのようでしたが、2位・3位にはフランス人のヴァランタン・マディアスとクリストフ・ラポルトが名を連ねました。これは、フランス代表の選出をツールの第1週が終わる迄遅らせたヴォクレール監督の英断が実を結んだ結果だと思っています。本来ピーキングは所属チームや選手個々の判断になることが多いのですが、国別対抗戦になるオリンピックに選手のピークを合わせるのは非常に難しいのです。特にツールから間がない状況では尚更でしょう。
それを開催地が地元パリだという利点も考慮し、選手の調子をギリギリまで観ての選出だったようです。逆に早々にオリンピックメンバーを確定させていたファンデルプールやファンアールトはオリンピックを意識し過ぎていたように見えました。ファンアールトはシーズン前半に落車骨折があり、当初のスケジュールが狂ってしまった影響もあったのかもしれませんが、ファンデルプールは東京のMTBのXCに続き、優勝候補筆頭に名が挙がりながらまたメダルに手が届きませんでした。
今年の春のクラシックでは無類の強さを見せつけてたファンデルプールはいったい何処へ行ってしまったのでしょう。ツールの時から調子が良くないのは分かっていましたが、それはピークをオリンピックに合わせているためだと思っていたのですが、本当に調子が悪かったのか、国を背負うプレッシャーなのかは分かりませんが、力を出し切れずに終わってしまいました。
一方のベルギー勢はレムコ(エヴェネプール)とワウト(ファンアールト)のどちらか調子の良い方で行こうとしていたのか、初めからレムコで狙うことを決めていたのかは分かりませんが、今は純粋にレムコの力の方が上でしょう。それは個人TTでもレムコに敗れたワウトが一番良く分かっていたことかもしれません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます