Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S2-2 グダンスク(前)

2013-02-24 08:09:13 | 日記
現在、キャビン・プレッシャーの再放送が聞けるBBC RADIO4 EXTRA。
この局では、2008年のラジオドラマ「レ・ミゼラブル」も再放送中。
ダグラスこと、Roger Allam氏の美声を楽しめます。
彼は他にも、「Churchill's Other Lives」でウィンストン・チャーチルを演じています。

そして、“ダグラス”の声を楽しめるキャビン・プレッシャー、
以下は シリーズ2 第2話 グダンスクです。
先に番組を聞いてから、ご覧くださいませ。

 ↓

では、どうぞ!

 ↓


(ドアの開く音)
マーティン:やあ、キャロリン。
キャロリン:ねえ、聞いてちょうだい。これから私たちが乗せる室内楽団、そこの指揮者が特別リクエストの欄になんて書いてきたかを。「第1バイオリンたちは隣同士に座らせない。第2バイオリンたちは離れて座らせてはいけない。ハープ奏者はオレンジ色のオーラのある人以外は無視するし、オーラをより一層オレンジ色にすることは誰にもできない。チューバ奏者にはアルコール類をあげてはいけない。指揮者には常にアルコール類をあげなければいけない。そして彼は着陸前の1時間、トイレを貸し切る。そして、最も大切なのは、バスーン奏者の、マダム・シシュコ・ボフシュ。彼女はいつも暗殺の目標にされていると思い込んでいるので、彼女に近づく際は、鈍器や研いだナイフ、熱湯などは持たないこと」 素晴らしいわ!私はどうやって接客すればいいの?
ダグラス:注意深く。


(テーマ曲)
 今週は 「グダンスク」


マーティン:(無線)アムステルダムへ、こちらG-T-I。フライトレベル3-3-0。
アムステルダム管制塔:G-T-Iへ、レーダーで確認。飛行を続けてください。
アーサー:じゃあ次のリストにいくよ。みんな、位置について、用意、「7つの大罪」
マーティン:これは知ってるぞ。全部知ってる。
(鉛筆を走らせる音)
ダグラス:ああ、傲慢の罪。
マーティン:よせよ、ダグラス。キャロリンに知られるだろう?
ダグラス:うん、嫉妬の罪。
マーティン:ダグラス、やめろ。
ダグラス:そして怒りの罪。
マーティン:よせって!
キャロリン:できた!
マーティン:ダグラスのせいで気が散ったんだ。
ダグラス:私もできた。
マーティン:ああっ!
アーサー:オーケイ、見せて。うん、ダグラスは全部正解。 母さんは、、あ、残念、母さん。「ふんど」はないよ。
キャロリン:「ふんぬ」でしょ、憤怒。もちろんあります。
アーサー:ううん。残念だけど、この本には「ふんど」も「ふんぬ」も載ってない。それに、「怒り」が抜けているよ。
キャロリン:それが憤怒なのよ、バカね!「憤怒」って言葉を聞いたことがないの?
ダグラス:何度も目撃してはいるようだがね。
マーティン:残念でした、キャロリン。本の通りにしないと。つまり僕が2番だね。
アーサー:そうみたいだね、スキップ。一応確認させて。 ああ、こちらも残念。「色欲(Lust)」を2回書いてるよ。
マーティン:あ、、
ダグラス: いけない人ですな、クリーフ機長。彼は何を書き忘れたんだい?
アーサー:えっと、「傲慢」
ダグラス:2重の皮肉。
マーティン:他の問題にしよう。今度は僕が勝つ。
ダグラス:本当に? じゃあ、ちょっと楽しみを加えようか。
マーティン:賭けはお断りだよ、ダグラス。そう言ったろう?
ダグラス:どうしてダメなんだ?
マーティン:それは僕がいつも、、じゃなくて、機長としての尊厳にかかわるからだ。
アーサー:僕は賭けてもいいよ、ダグラス。
キャロリン:いけません。
アーサー:でも母さん、、
キャロリン:「でも母さん」じゃありませんよ。 誰があなたの車を所有しているの?
アーサー:ダグラス。
キャロリン:そうでしょう?
アーサー:でも僕に使わせてくれてるよ。
ダグラス:適正な時間割料金でね。
マーティン:誰も何も賭けない。いいね? アーサー、次の問題は?
アーサー:えっとね、じゃあ、これ。位置について、用意、「7人のこびと」
(鉛筆を走らせる音)
ダグラス:マーティン、ラスティ(Lusty)を忘れるなよ。
マーティン:黙れ。
キャロリン:できた!
マーティン:またダグラスのせいで、、
ダグラス:できた。
マーティン:そんな、フェアじゃないよ。
アーサー:うん、ダグラスは全部正解。それから母さんは、、母さん!Loopy(ヘンテコ)なんていないよ。
キャロリン:そうだった? じゃあ、あれは何て名前?あのおバカさん。
アーサー:ちょっと待って。マーティンのを確認してからね。
マーティン:そうか、まだ僕は勝てるんだ。
ダグラス:私が勝ったことには気づいているだろうね。
マーティン:でも2番になれる。
ダグラス:後ろから数えて2番目に。
マーティン:でも負けてはないだろう。
キャロリン:あなたはいくつ書けたの?
マーティン:6つ。
キャロリン:じゃあ私と同じね。あのおバカの名前は書けた?
マーティン:うん。
キャロリン:何だった?
マーティン:名前は、、、ダメだよ!
キャロリン:試す価値はあったわね。 えっと、おバカだから、Silly? Dummy? Dizzy? Ditzy? アーサー?
アーサー:母さん!
(CA呼び出しベル)
キャロリン:まったく。
(CA呼び出しベル)
キャロリン:もしあの売り出し中の大道芸人たちが、呼び出しベルにこれ以上触れるようなら、親指を切り落としてくれるわ!
ダグラス:フレンドリーな空の旅へようこそ。
キャロリン:私は行かないと。アーサー、最後のこびとは結局なんて名前なの?
マーティン:教えないで。僕がきみより先に思い出すもんね。
キャロリン:まったく、マーティンったら、子供じゃないんだから。あなた、教えちゃダメよ、ダグラス。
ダグラス:ボーイスカウトの名誉にかけて。
キャロリン:よろしい。さて、客室のloonyさんたちは何の用かしら?あ、loony(きちがい)?
アーサー:違うよ。


(CA呼び出しベル)
キャロリン:マダム、なにかご用でしょうか?
シシュコ・ボフシュ:誰かが私のアームレストをいじったのよ。責任をとってくださる?
キャロリン:ああ、あなたがバスーン奏者ですね。マダム・シシューコ、、、
シシュコ・ボフシュ:シシュコ・ボフシュ。
キャロリン:風邪をひいたの?お大事に。
シシュコ・ボフシュ:どうして私がバスーン奏者だと分かったの?監視してたのね。
キャロリン:いいえ、マダム。あなた方の指揮者がとても詳しく教えてくれたの。それに、あなたはバスーンの隣に座っていらっしゃるでしょう?
シシュコ・ボフシュ:私はこのバスーンと離れたことがないの。
キャロリン:きっとそれはあなたにベタ惚れなのね。それで、アーム-レストにはどんな問題が?
シシュコ・ボフシュ:あなたが調べてよ。
キャロリン:喜んで。一言で言えば、なにも。6語で言えば、あなたの、アーム-レスト、には、なにも、問題は、ありません。
シシュコ・ボフシュ:それは7語でしょ?
キャロリン:アーム-レストはハイフンでつながってるのよ。さて、楽しいおしゃべりをありがとう。また後ほど。
シシュコ・ボフシュ:私のは他より位置が高いわ。
キャロリン:そうなの?
シシュコ・ボフシュ:誰かがいじったのよ。
キャロリン:お聞きするけど、それって誰がなぜ、、言い換えると、どなたがどうして?
シシュコ・ボフシュ:いいこと、私は世界でも有数のバスーン奏者なの。私の立場を狙っているバスーン奏者は大勢いるわ、本当よ。
キャロリン:そしてその中の1人、2人がキャビンクルーなのね。
シシュコ・ボフシュ:それで、どうしてくださるの?
キャロリン:私がどうするか申しましょう。あなたの説によると、離陸前にバスーン奏者、あるいはバスーン奏者たちが機内に押し入って、この座席を選び、アーム-レストの位置を少し高くしてからこっそり逃げ出して、その結果どうなるかを―私には理解しがたいけど―息をひそめて待っているのね。
シシュコ・ボフシュ:、、そうよ。
キャロリン:では、バスーンと席を交換すればどうかしら?
シシュコ・ボフシュ:ああ。


マーティン:頼むよ、ダグラス。
ダグラス:ダメ。
マーティン:お願い。
ダグラス:悪いね。
マーティン:教えてよ。キャロリンより先にこびとを見つけないと。
ダグラス:その言葉を聞くのは、こびと狩りが禁止されて以来だ。
マーティン:口で言わなくてもいいんだ。きみのリストを見せてくれれば。
ダグラス:それはできない。キャロリンと約束した。ボーイスカウトの誓いだ。
マーティン:きみはボーイスカウトじゃないだろう?
ダグラス:こう言うだろう? 一度ボーイスカウトだった者は、一生スカウトだ。
マーティン:一度もスカウトじゃなかった。
ダグラス:こう言うだろう? 一度もボーイスカウトじゃなかった者は、一生スカウトだ。
マーティン:頼むよ、ダグラス。1回くらいなにかで勝ちたいんだ。
ダグラス:そうだな、それならば、、
マーティン:ダメ。
ダグラス:例えば20ポンドを、、
マーティン:ダメだって。
ダグラス:ワルシャワの管制官は女性だってほうに賭けよう。
マーティン:ダグラス、何度も言うように僕は賭け事は、、女性だって?
ダグラス:うん。
マーティン:でも管制官はほとんど男だよ。
ダグラス:ならきみが勝つんじゃないか?
マーティン:なにか知ってるに違いない。誰が勤務しているか、きみは知っている。
ダグラス:いったいどうすればそんなことが分かるんだね?では、賭けるか?
マーティン:お金はダメだよ。
ダグラス:(ため息)いいだろう。ではチーズトレイを賭けよう。
マーティン:トレイ全てじゃないぞ。 エメンタールを。
ダグラス:ブリーだ。
マーティン:いいだろう。ブリーを賭けて、僕は、ワルシャワ管制官は、女性だと。
ダグラス:それはないぞ、私が女性に賭けると言ったんだ。
マーティン:分かってる。でも本当に知らないのなら、どっちに賭けても気にしないだろう?
ダグラス:うん、まあ、そうだ。
マーティン:よし。じゃあ僕は女性だというほうに賭ける。
ダグラス:乗った。
マーティン:(無線)ワルシャワ管制塔、こちらG-T-I。最新のグダンスクの天気を教えてください。
ワルシャワ管制塔(男):G-T-Iへ、
マーティン:ああっ!
ワルシャワ管制塔:風速12、視界3/4マイル、雷雲発生中。
マーティン:ちくしょう!
ワルシャワ管制塔:申し訳ないね。雷雲は少しだけなんだけど。
マーティン:了解、ワルシャワ。(無線オフ)女性だときみが知っているもんだと思ってたよ。
ダグラス:いや、そう思わせただけだ。ま、気にするな、マーティン。負ける日もあれば、、、ね?
マーティン:ことわざでは、「勝つ日もあれば、負ける日もある」だろう。
ダグラス:ことわざでは、その通り。
マーティン:そんな、僕だって勝つこともあるよ。
ダグラス:そうなんですか、機長?
マーティン:ああ、そうだよ、副機長くん。これを忘れないでくれ。僕が負け犬だとしたら、どうしてきみじゃなくて僕の袖に4本の線が入っているんだい?
ダグラス:ああ、そのことか。
マーティン:だろう?それに僕はこの制服を職場で着ている。誰かさんみたいに、自分の奥さんに自慢するために家で着てるんじゃなくてね。
ダグラス:よくもそれを持ち出したな!
マーティン:ダグラス、、
ダグラス:私が心に秘めていた個人的なことを打ち明けたのに、きみはそれを人の弱みにつけこんでいきなり持ち出す気か。
マーティン:本当にごめんなさい、ダグラス。そんな気じゃ、、、いや、ちょっと待った。そうじゃなかったろう?何も僕に打ち明けてない。きみは一生懸命隠していた。僕はたまたまその場に居合わせたんだ。
ダグラス:とは言え、
マーティン:「とは言え」じゃないよ。これでやっと対等になれるんだ。いつもきみは僕をからかっているだろう?身長とか、CPL試験に何回挑戦したかとか、ブレーキをつけたまま着陸したときとか。
ダグラス:それは面白いからだ。
マーティン:きみが奥さんの前で機長のふりをするのだって面白いさ。どんなに面白くても、きみに関することは、からかっちゃいけないのかい?
ダグラス:その通り。
マーティン:そんなのおかしいよ。


(CA呼び出しベル)
キャロリン:ミズ・シシュコ・ボフシュ、またお会いしましたね。そんなに遠慮なさらずに、ベルを鳴らしてくださっていいのよ。私のことは気にしないで。
シシュコ・ボフシュ:してないわ。
キャロリン:それを聞いて一安心ね。それで、なにかご用?
シシュコ・ボフシュ:カシューナッツについているこれはなに?
キャロリン:それって、、あなた、お塩のこと?
シシュコ・ボフシュ:塩には見えないわ。
キャロリン:ではなにに見えるの? 超小型の透明手榴弾?
シシュコ・ボフシュ:割れたガラスみたいじゃない。
キャロリン:これは塩です!
シシュコ・ボフシュ:塩はこんな感じじゃないわ。塩は丸いボールみたいなものでしょう?これは四角くて、、
キャロリン:もう、面倒ね!(スナック袋をうばう)これで満足?
シシュコ・ボフシュ:私のカシューナッツを食べたの?
キャロリン:あなたのカシューナッツを1つ食べました。
シシュコ・ボフシュ:1袋に5つしか入ってなかったのに。
キャロリン:では残るは4つね。
シシュコ・ボフシュ:もっとカシューナッツをいただける?
キャロリン:もちろんです。お塩つき、それとも割れたグラスつき?
シシュコ・ボフシュ:塩よ、塩つき。お塩だけ!
キャロリン:忘れないようにメモを取るわ。


アムステルダム管制塔:G-T-Iへ、マーストリヒトと交信せよ。周波数126.5。(沈黙)G-T-I、こちらアムステルダム。聞こえますか?(沈黙)G-T-I、こちらアムステルダム。繰り返します。聞こえますか?
マーティン:(大きく息をして)こちらG-T-I。申し訳ない、アムステルダム。マイクが途切れたんだ。了解した。126.5でマーストリヒトと交信する。
ダグラス:(大きく息をして)ああ、運が悪かったですね、機長。
マーティン:これは賭けの対象にならないだろう?管制塔に回答したんだ。
ダグラス:申し訳ないが、マーティン、どちらが長く息を止めていられるか、の賭けも私の勝ちだ。これでブリー、ロックフォードに続き、このふにゃふにゃした包みに入っているチーズも私のもの。
(マーティン、うめく)
ダグラス:残るはエメンタールとクラッカーだ。
(ドアの開く音)
アーサー:コーヒーだよ。それから、母さんからの伝言。「シートベルト着用サインを消し忘れたの?この、、」 シートベルト着用サインを消し忘れたの?
ダグラス:いいや。忘れてはいないよ。
アーサー:あ!もしかして乗客ダービー?
ダグラス:うん、やってみようかと思ってね。
アーサー:やったね! 僕、実況中継してもいい?
ダグラス:そうしてもらえると助かる。
アーサー:最高!ちょっと待ってて。
(ドアの閉まる音。インターコム)
アーサー:オーケイ、準備できたよ。
マーティン:じゃあエメンタールを賭けるんだね?
ダグラス:そうだな。 アーサー、今日のデザートはなんだい?
アーサー:えっと、シュトルーデルとチーズケーキ。
ダグラス:完璧だ。マーティン、きみのエメンタールに、私のチーズケーキを上乗せしよう。
マーティン:きみのチーズケーキに僕のシュトルーデルを上乗せする。
ダグラス:素晴らしい。よし、アーサー、では出馬メンバーを教えてくれ。
アーサー:ありがとう、ダグラス。さて、ようこそ、5時35分の、、空の上へ。馬場のコンディションは良く、シートベルト着用サインはもう40分以上つきっぱなし。ドリンクカートで2度回ったし、みんな、早く飛び出したくてうずうずしています。人気があるのはやっぱりA列にいるお客さん。今日はウィンストン・チャーチル似のトロンボーン奏者と大きな頭の小柄なクラリネット奏者。スキッパーは誰を選ぶ?
マーティン:強そうなのはどっち?
アーサー:うん、どっちももぞもぞしてるけど、あ、トロンボーン奏者が猫みたいな声を出したよ。
マーティン:彼にしよう。
アーサー:ダグラスは?
ダグラス:ハリー・ポッター眼鏡のおばあさんはどこに座ってる?
アーサー:えっと、C列。
ダグラス:よし、彼女にする。さきほど、頭上荷物入れのスペースのことで文句を言っているところを見かけたが、なかなか意思が強そうだった。それに肘の動きもいい。
マーティン:それはフェアじゃないよ、先に見てたんだったら、、
ダグラス:もう遅いよ。(シートベルト着用サインオフ)
アーサー:スタートです!まずトロンボーン・チャーチルが最初に動いた。すでに新聞で隠してシートベルトを外していた様子。古典的なやり口です。でも椅子から立ちあがるのが遅い。その間に通路側にいるチビ大頭が動き出した。強いぞ、チビ大頭、あ、でも迷えるチェリストとぶつかった。その間にトロンボーン・チャーチルが通路に出た。そこにやってきたのは誰?ハリー・ポッターばあさんだ!彼女はチビ大頭をかわし、迷子チェリストをかわし、そして最後の直線でトロンボーン・チャーチルと首1つの差。トロンボーン・チャーチルとハリー・ポッターばあさんがトイレに到着。ドアに手を出すのは、、あ、トロンボーン・チャーチルはおなかに肘鉄をくらった!ハリー・ポッターばあさんだ!彼女がトイレに入って、鍵をかけた!
ダグラス:やったぞ!
マーティン:あああ、、
アーサー:運が悪かったね、スキップ。今日はツイてないね。
マーティン:人生ツイてないよ。


 (続く)