Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S5 チューリッヒ パート2 

2014-12-28 07:43:54 | 日記


最終話「チューリッヒ・パート2」の拙訳版です。

番組は現在、こちらから視聴できます。
そして、英語版は、こちらのサイトを参照させていただきました。

キャビン・プレッシャーがついに最終回を迎え、このブログも今回で終了です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
皆様、どうぞよいお年をお迎えください!

 ↓

以下は番組を聞いてからご覧くださいね。

 ↓
 


アーサー:(電話で)やあ、ティフィ、僕だよ。ねえ、悪いんだけど、きみが馬にドレスを着せるのを見に行くの、ちょっと遅れそうなんだ。え?馬術(ドレサージュ)?そう、、そうじゃなくて、行きたいんだけど、これからパイロットをアイスクリーム販売車に乗せて屑鉄置場まで運転しなきゃいけないから、、ううん、全部ホントだよ、、話せば長くて、、え、聞いてくれる?やったね。あのね、そもそもスキップが、、えっと、スキップのこと覚えてる?マーティンさ、うちのパイロットの一人、機長だよ、、ううん、もう一人のほう、、まあ、どっちも帽子かぶってるけど、、そう、彼だよ。えっと、それでね、スキップがスイス・エアウェイズですごくいい仕事をもらったんだけど、でもMJNを続けるために、オファーを断ろうって言ってるんだ。でも母さんは、彼がスイス・エアウェイズに行くよう説得して、おとぎ話のようにはいかないけど、でもみんな、これでいいんだ。僕もね。あ、それからスキップが僕にヴァンをくれたんだよ!で、僕、かっこいいブレーキパッドとたくさんのアイスキャンディを買って、車の横にグーフィーを描いたんだ。だから僕はアイスクリーム屋さんなんだよ!えっと、でも、このことじゃなくて、肝心な話はね、僕たち、ガーティを売ることになって、オークションに行ったんだけど、スクラップ屋さんしか興味を持ってくれなくて。そしたら僕の父さんが―昔、ガーティを持ってたんだけど―現れて、25万ポンドの値をつけたんだよ!、、うん、確かにちょっとすごいよね。でも、僕、あの人がガーティを買うのは反対なんだ。だから僕は1,000万ポンドで買うって言ったの。ううん、きみの言う通り、お金は持ってない。母さんもこの点は指摘してくれたよ。うん、でも運よく母さんがスクラップ屋さんを説得して、その人にガーティを売ることになったんだ。そしたらさ、ダグラスが父さんと話をして戻ってきて、絶対あの娘を買い戻さないとダメだって言って。だから今から行くところ。ダグラスがスクラップ屋さんに電話して、僕が、彼とマーティンとテレサを乗せて、ガーティを助けに行くんだ。父さんにとられる前に。テレサ?ああ、彼女はリヒテンシュタインの王女様だよ。これもホントの話。うん、これも話せば長いんだけど、えっと、そもそも母さんとハークが、、うん、うん、そうだよね、ティフィ、もう充分話したよね、僕。

ダグラス:オーケイ、彼は現金12,000で手を打った。
キャロリン:12,000?あの人はたったの、、
ダグラス:ちょっと儲けようと考えたんだろうさ、キャロリン。だが我々は彼の飛行場で会わないといけない。いつハークはここに着くんだい?
キャロリン:30分後よ。
ダグラス:オーケイ。ではきみはここで彼が来るのを待っていてくれ、キャロリン。その間に我々は車で、
マーティン:ウソだろ、
テレサ:車がどうしたの?
(ヴァンがやってくる)
アーサー:オーケイ、みんな、乗って!
テレサ:あら、ナハツェーラーだわ。
マーティン:なに?
テレサ:子供を食べるモンスターよ、昔話に出てくるの。どうしてそれがあなたのヴァンに?
アーサー:これはグーフィーなんだってば!
ダグラス:さあ、急いで、乗って。
(ドアの開く音)
アーサー:ちょっと待って。ここには3人しか座れないよ。
ダグラス:マーティン、きみが後ろに乗れ。
マーティン:僕は後ろには乗れないよ!
ダグラス:どうして?「機長は前に座る」から?
マーティン:違うよ。僕、窓の外が見えないと、車酔いするんだ。きみが後ろに乗ってよ。
ダグラス:私は後ろには乗らない。私がこの計画の指揮者なんだぞ。
マーティン:後ろからでも指揮できるだろ?
ダグラス:いや、できない!
マーティン:できるさ!
アーサー:なら僕が後ろに行くよ。面白そうだもん。
ダグラス&マーティン:きみは運転手だ!
テレサ:なら私が後ろに乗りましょうか?
マーティン:え、それは、もし、きみがかまわなければ、
ダグラス:そうしてくれるとありがたい。
テレサ:もちろん!
(ヴァンに乗り込む)
ダグラス:オーケイ、アーサー、まず私の銀行に寄るんだ。
マーティン:ダグラス、待ってよ。きみ、本当にガーティに価値があると考えてるの?
ダグラス:確信している。
マーティン:でもそんなことあり得る?あの娘に何かが隠されているなら、僕たち、ずっと前に見つけているはずだ。
ダグラス:そうとは限らないぞ。すごく小さなものかも。ダイヤモンドとか。
(ヴァンの仕切をたたく音)
マーティン:なんだい、テレサ?
テレサ:(後ろから)でもあなた言ってたでしょ?サンクトペテルブルグで、ゴードンとエンジニアの人がガーティに何時間も時間をかけてたって。もし小さいものなら、どうしてその時に盗らなかったのかしら?
ダグラス:ああ。それは考えつかなかったな。
マーティン:つまり、小さいものなら盗られているし、大きいものなら、僕たちが見つけている。
アーサー:大きすぎて見えないのかも。
ダグラス:例えば?
アーサー:万里の長城。
ダグラス:万里の長城だと?
アーサー:知ってるでしょ?有名なやつ。万里の長城は大きすぎて、宇宙からでないと見えないんだ。
マーティン:いや、アーサー、
ダグラス:つまりきみがやらかしていることは、アーサー、有名な勘違いを、さらに間違って覚えているんだ。
アーサー:ふうん。
ダグラス:しかも、そうしつつも、きみはなお正しい、、
ダグラス&マーティン&アーサー:イエロー・カー!
ダグラス:素晴らしい。たいしたものだ。
アーサー:つまり宇宙からは見えないってこと?
マーティン:うん。地上からは見えるよ。何千マイルもの長さなんだから。
アーサー:じゃ、どうして宇宙からは見えないの?
マーティン:幅が数フィートしかないから。
アーサー:へ?
マーティン:いいかい?すごく長んだけど、横幅が狭いから、
ダグラス:アーサー、あの銀行だ。
アーサー:おっ
(急ブレーキ。テレサの悲鳴)
アーサー:ごめんね、テレサ。新しいブレーキパッドなんだ。大丈夫?
テレサ:ええ、平気よ。
ダグラス:よし。なるべく早く戻る。ここで待っていてくれ。
(ドアの音。ダグラスが走っていく)
アーサー:あ、そうだ。もしかしたら燃料タンクに高級ワインが入っているのかも。
マーティン:燃料タンクには、燃料が入っているんだよ。
アーサー:そうか。
(窓を叩く音)
アーサー:(窓を下げて)あ、こんにちは。
男:これはあなたのヴァンですか?
アーサー:うん。かっこいいでしょ?
マーティン:あの、なにか問題でも、お巡りさん?
男(警官):そうでないことを願いますよ。でも3人の男が乗ったヴァンが急ブレーキをかけて銀行の前に停まり、一人は走って中に入り、あとの2人は待機している。
マーティン:あ、そうか。いえ、いえ、申し訳ない。そうじゃなくて、
警官:しかもヴァンには悪魔の絵が描いてあって、
アーサー:悪魔じゃなくて、グーフィーだよ!
警官:なるほど。荷台に何を積んでいるのか、教えていただけますか?
アーサー:うん、もちろん。
マーティン:アーサー、、
アーサー:イチゴ味のアイスキャンディがいっぱい、それに、リヒテンシュタインの王女様。
警官:よろしい。みな、外に出て。

(車が停まる)
ハーク:キャロリン、やあ!(クラクション)
キャロリン:どこにいたの?遅いじゃない。ずっと待っていたのよ。
(車に乗り込む)
ハーク:約束の時間より10分早いんだが。
キャロリン:とはいえ。
ハーク:とはいえ、じゃないよ。きみは心の中でこう思っている。「あら、そうよね、謝るわ、ハーク。私の間違いよ」
キャロリン:そんなこと思ったこともないわ。
ハーク:ひとつ勉強になったよ。で、首尾はどうだった?
キャロリン:えっと、山あり谷ありで、
ハーク:誰か入札してくれた?
キャロリン:ええ、その点はね。実をいうと、入札しなかった人がいたのか、思いつかないくらいよ。
ハーク:じゃ、売れたんだね?
キャロリン:ええ。
ハーク:素晴らしい!
キャロリン:それには、いいえ、よ。
ハーク:なるほど。いい考えがある。何が起こったのか、話してくれないか?
(携帯着信音)
キャロリン:テレサ?あなたを迎えに?どこへ?どうしてそこに置いていかれたの?いったいどうして後ろに乗っていたの?

(ヴァン)
ダグラス:アーサー、ここだな。ここを曲がって、いや、停まれ、早く!
アーサー:それならできるよ。
(急ブレーキ)
ダグラス:マーティン、降りろ。
マーティン:え、どうして?
ダグラス:きみは彼と競りあったんだ。顔を覚えられていては困る。
マーティン:でも彼はほとんど見ていないはずだよ。
ダグラス:降りて!
(マーティン、降りる)
ダグラス:悪いな。危険は冒せない。
(ヴァン、走り出す)
アーサー:うわぁお、、
ダグラス:ふむ。ちょっとしたもんだな。
アーサー:うん。象の墓場みたい。
ダグラス:ああ。
アーサー:そこに飛行機があるんだ。僕、イヤだな。どうしてみんな翼がないの?
ダグラス:彼らが行く先では、翼は不要なんだ。
(ヴァンが停まる)
ダグラス:ああ、彼がそうだな。犬を連れている男。
(犬の吠え声)(車を降りる)
ブルース:あの、何か用ですか?
アーサー:わぁ、大きい犬だね。
ブルース:気にしないで。
アーサー:みんな、人懐っこいの?
ブルース:いや、気にしないでってだけ。あなたたちは?
ダグラス:私は、
アーサー:僕たちが、飛行機を買うって電話したんだ。
ブルース:ああ、なるほど。どっちの?
アーサー:どっちってどういうこと?
ブルース:あの飛行機を着陸させるまでに2つもオファーがあったんだ。一人は気取った男で、リチャードソン。12,000って言ってきた。その10分後にオーストラリア人が14,000ポンドを申し出てくれて。あなたたちはどちらさん?
アーサー:僕はただのアーサーだけど、こっちは、
ダグラス:(オーストリア訛りで)ゴードン・シャッピーと申す。お会いできて光栄。これは息子のアーサー。気を悪くせんでくれ。こいつはとでも内気で、ほとんど口をきかない。
ブルース:本当に?よくしゃべるようだけど。
ダグラス:いや、こいつはいつもそうなんだ。初対面の人には最初たくさん話しかけるが、それから急に口を閉ざす。一言も口をきかないんだ。だから私が代わって話さないといかん。面倒なこったが、仕方ない。で、この飛行機のことだが、2人から声がかかっているんだね?
ブルース:ええ、電話でそう言いましたよ。
ダグラス:そうだった、確かにきみはそう言った。話の流れで繰り返しただけさ。我々は二番手だというわけだな。ここに現金を持ってきたから、
ブルース:オーケイ。身分証明書は?
ダグラス:ああ。えっと、その、残念、ホテルに置いてきたよ。
ブルース:なら取ってきてください。そうすればこの娘はあなたのものです。
ダグラス:ふむ。ひとつ問題があってな、ホテルはすごく遠いんだ。
ブルース:早く行けば、早く戻れますよ。
ダグラス:、、そうか。
アーサー:たぶん大丈夫だよ、、父さん。
ダグラス:アーサー、
アーサー:だって僕が身分証明書を持っているから。
ダグラス:アーサー、警戒警報発令。
アーサー:ううん!警報はいらないんだ。聞いて。だってきみがゴードン・シャッピーで、僕がきみの息子なら、って、そうなんだけど、、いや、その、ちょっと待って!(あやしいオーストラリア訛りで)僕が言わんとしてるのは、僕の運転免許証がここにあるってことさ。これには僕の名前が書いてあって、ほら、「アーサー・ゴードン・シャッピー」。そしてこっちは僕の父さんだから、
ダグラス:そうだった!これを見てくれ。私の息子の身分証明書。そしてこいつが私の身分を証明している。これでどうだね?
ブルース:ええ、いいでしょう。でもどうして彼はあんな風にしゃべるんです?
アーサー:どんな風に?
ブルース:なんだか、、すごくヘン。
アーサー:なあ、いいかい、ブルース。これは僕の訛りなんだ、ブルース。それが気に入らないっていうなら、
ダグラス:まあ、気にせんでくれ。こいつは父親をからかっているだけだ。
ブルース:ああ、なるほど。
アーサー:(小声で)なに?
ダグラス:(こちらも小声で)今からは絶対に警戒警報だ。
アーサー:オーケイ。
ダグラス:オーケイ、では現金はここにあるから、きみは、
ブルース:ええ。でももちろんリチャードソンって人が来るのを待たないと。
ダグラス:え?
ブルース:もっといい金額を提示してくれるかも知れないから。
ダグラス:まず無理だな。あ、つまり、我々はここにいるんだし、
(足音)
ブルース:ああ、来たみたいですよ。
マーティン;待てって言われたのは分かっているけど、キャロリンから電話があって、ゴードンが、
ダグラス:その通り。ゴードン、つまり私だ。私の名前は覚えているだろう?
マーティン:え?
ダグラス:そうだろう、きみは、ダグラス・リチャードソンだな。1、2度会ったことがある。私の名前は、きみが言うとおり、ゴードン・シャッピー。そして、きみには悪いが、ダグラス、私のほうが高値でLM3-12を買う。
ブルース:ああ、こんにちは、私はブルース・フレーザーです。
ダグラス:いや、これは失敬。ブルース、こちらはダグラス・リチャードソン。ダグラス、こちらはブルース。
マーティン:あ、そう!うん、で、
ダグラス:この人とは、もちろん、さっき電話で話をしたよな?
マーティン:(ダグラス風に)もちろん。お会いできて光栄だ。
ブルース:ええ。申し訳ないですね。この人があなたの10分後に電話をかけてきて、14,000出すって言ってきたんですよ。
マーティン:それは残念至極。ちぇっ、ツイてないな。ま、仕方ない。
ブルース:ま、でも、もしそれよりいい値をつけてくれるのなら、話を聞きますよ。
マーティン:そうか、考えさせてくれ、、いや、それはないな。私、ダグラス・リチャードソンはまたもや出し抜かれた。私は負け犬だよ。
ダグラス:そんなに自分に厳しくあたるなよ。
マーティン:いや、これが真実なんだ。私って男はまったく、
ダグラス:ともかく、さっさと片付けたほうがよいだろう。他にも誰かやってきてあの娘を買いたいなんて言われたら困る。(笑う)
マーティン:わ、そうだった、うん!あ、つまり、(笑う)
ダグラス:ではこれが、12,000ポンドだ。
ブルースいや、違う、違います。それは彼の指し値。あなたは14,000ポンドでしょう?
ダグラス:あ、そうだったな。だが、現金分は、
ブルース:いいえ。14,000ですよ。それがダメならこちらの方に。
ダグラス:そうか。その、リチャードソンさん、もし、私に2,000貸してくれたら、
マーティン:きみの競争相手がお金を貸したら、ひどくおかしなことにならないかい?
ダグラス:オーケイ。ならこれから町に戻って、残りの現金をとってこよう。
マーティン:そんな時間があるとは思えないでしょう、シャッピーさん?
ダグラス:ではなにか提案でも、リチャードソンさん?
マーティン:ああ、まあ、これは僕には全く関係ないことだけど、せっかく聞かれたから。きみのヴァンを手放すことができるんじゃないかな?
ダグラス:きみのヴァン?
アーサー:僕のヴァン?
マーティン:いや、きみのヴァンさ。ここにある。
(車をたたく)
ダグラス:ああ。まあ、もしきみが本気で、
マーティン:私には無関係だよ。
ブルース:ええ、でも、申し訳ないが、このヴァンには2,000ポンドの価値はありませんよ。グーフィーの絵は良いけど。
アーサー:ありがとう!
マーティン:そうですか?部品に興味を持つ人にとっても?なぜなら私にはこれは新品に見えますがね。最高級のカーボン・ファイバー製ブレーキパッドだ。
ブルース:わあ、本当だ!どうしてこんなポンコツ車にこれをつけているんです?
ダグラス:私の息子は投資になると思ったらしい。それが的中したな。

(車内)
キャロリン:あなた、すごく静かね。
ハーク:計画について考えていたんだ。つまり、今回の唯一の鍵は、隠された秘宝を見つけることなんだね?それとも私はなにか見落としているのかな?
キャロリン:いいえ。言わんとしていることは分かるけど、でも、ダグラスがそう確信しているから。
ハーク:まあいいだろう。仮に彼が正しくて、ガーティのどこかに財宝があるとしたら、きみはそれをなにに使う?
キャロリン:MJNを再建するわ、当然。
ハーク:当然、ね。
キャロリン:ごめんなさい、ハーク。でも私、本当にチューリッヒには引っ越したくないの。それに、あなたにイギリスに戻ってきてほしいなんて言えないし。
ハーク:どうして?
キャロリン:だって、戻る理由があって?「私を愛しているから」なんて言わないでね。
ハーク:言わないけど、大声で考えるだろうね。
キャロリン:ハーク!
ハーク:私がそれを口にすることが、なぜ嫌いなんだ?
キャロリン:そんなに嫌ってはいないわ、前よりはね。でも、あなた、簡単に言うでしょう、ハーク。例えば4人の元奥さんたちに、それに、どれだけ多くのガールフレンドがいたか知らないけど。今回はどこが違うの?
ハーク:そうだな、例えば、きみの髪の色。
キャロリン:私のなに?
ハーク:きみは白髪だ。
キャロリン:ええ、そうよ。
ハーク:今までに何人いたと思う?私の4人の奥さんや、ご想像通り、数えきれないガールフレンドたちのなかで、白髪の人が?ヒントをあげよう、ゼロだよ。圧倒的多数のブルネット、数人のブロンド、それにヘンな赤毛の子。でもきみは私にとって最初の白髪頭だ。
キャロリン:なんて斬新な手段で私たちの関係を終わらせるんでしょう。
ハーク:私が言いたいことは、きみは私のタイプというわけではないし、確かに、他にも愛した女性はいた。だがきみは―自分でも驚き、正直言って、うろたえたが―私が恋に落ちた最初の女性なんだ。分かるだろう、まるで10代のように。あれは我々の2回目のデート、リゴレットの時だった。きみの素直な歓喜の表情に惚れたんじゃないよ。私がきみを見ているだろうときのために、わざと「くだらいない」って顔をしてみせた時さ。
キャロリン:まあ、ハーク。
ハーク:だがきみと結婚しようと決めたのは、きみがわざわざアイルランドまで行って、私の大嫌いな羊のはく製を買ってきた日だよ。
キャロリン:誰も私と結婚しようと決められないわ。私が決めるの、誰と結婚するか。
ハーク:もちろん。それで、そう決めたのかい?

(操縦席にて)
マーティン:離陸後チェック完了。
ダグラス:ありがとう、機長。アーサー、しゃべっていいぞ。
アーサー:素晴らしかったよ!きみは素晴らしかった、ダグラス!それにきみも素晴らしかったよ、スキップ!それに僕は、
ダグラス:きみもな、アーサー。身分証明書のことだよ、きみは素晴らしかったぞ。
アーサー:そうだよね。僕、謙遜してただけ。それに僕のオーストラリア訛りが今日の救世主!
マーティン:訛って話す必要はなかったと思うけど、
ダグラス:第一きみは、オーストラリア訛りが出来ない。
アーサー:あれが救ってくれたんだよ!
マーティン:でもさ、ダグラスが正しいとして、どういうわけだかガーティにすごく価値があるのなら、って、今、こう言ってみると、やっぱりあり得ない気が、
ダグラス:ああ、だが「ダグラスが正しいとして」で止めておけば、ずっとあり得る気になるだろ。フィットンに着いたらすぐ、この娘をすみずみまで調べよう。
アーサー:そうだ、僕、今からやるよ。心配無用だよ、スキップ、ダグラスはいつも僕たちを救ってくれるんだ。ブレーキパッドを思い出したようにね!
マーティン:あれは僕だよ。
アーサー:うん、でもきみはダグラスをまねていたから。じゃ、あとでね!
(ドアの音)
ダグラス:その通りだな、マーティン。あれは機転が効いていた。
マーティン:悪くなかったよね?
ダグラス:上出来だったぞ。きみは冷静で、決断力と機略に富んでいた。
マーティン:うん、そうだよね。なぜか簡単だったよ。僕が、きみのまねをしていた時は。
ダグラス:これからも続けていいんだよ。私はこのお家芸の著作権を持っていはいないんだから。まあ、この操縦室では別だがな。だが、他の国でなら、そうだな、例えばスイスあたりなら、のれんを分けてやってもいいぞ。
マーティン:うん、でもずっときみのまねをして過ごすことは出来ないよ。
ダグラス:正確にはローリーのまねだがね。
マーティン:ローリーって誰?
ダグラス:私が新人だった頃の機長さ。そこで仕入れたんだ。
マーティン:つまりきみはずっとローリーのまねをしてるってこと?
ダグラス:いや、最初の1、2年だけだ。そのうち自分のものになる。だからモデル選びは慎重にしないと。きみは、もちろん、最高のモデルを選んだわけだ。
マーティン:(笑う)
(無線)
ダグラス:フィットン管制塔。
カール:はい?交信を続けてください。
ダグラス:誰だと思う?
カール:うわぁ、ガーティ!動物病院を無事退院したんだね!
ダグラス:尾を振りつつ、鼻は冷たく濡れて。
マーティン:どっちも飛行機にはすごく悪いことだよ。
ダグラス:手持ちの駒で頑張るしかないさ。

(ドアの音)
アーサー:やあ、ダグラス。
マーティン:なにか見つかった?
ダグラス:いや。なんにせよ、キャビンにないことは確実だ。
アーサー:残念。そうだ、座席の下は見た?
ダグラス:ああ、アーサー。
アーサー:上の荷物入れは?
ダグラス:私が思いつく限りのところをすべて見たよ、アーサー。そのなかにはきみが思いつく場所を含めてもいいんじゃないかね?
アーサー:承知。
マーティン:僕は貨物室と着陸装置、配線管、航空機器もタンクもエンジンも見たけど、何もなかった。
ダグラス:どこかにあるはずだ。
(クラクション)
アーサー:あ、母さんとハークだよ。
(ドアの音)
アーサー:やあ、着いたんだね。ね、ガーティは取り戻したよ、、あ。
ゴードン:やあ、アーサー。
アーサー:あ、うん。父さんが、ここに。オーケイ。僕、みんなを呼んでくるね。
ゴードン:いや、いや、いや。その必要はない。
アーサー:そ、そうだよね。もちろん。僕がバカだった。ごめんなさい。で、あの、やっぱり呼んでこようと、
ゴードン:いや!なあ、親子水入らずで話をしないかね?
アーサー:うん、してもいいけど。したことないから。
ゴードン:いいかい、聞くんだ、アーサー。今日、オークションで母さんがお前のためにやったことをちゃんと理解しているのか私は確かめたいだけなんだ。
アーサー:分かってるよ。父さんがガーティを買うのをやめさせたんだ。
ゴードン:その通り。お前のために、母さんは25万ポンドを断った。あいつは借金だらけで、会社も倒産するというのに、お前を喜ばせるために、あれほどの大金を断った。これは公平じゃないと思わんかね?
アーサー:ぼ、僕には、
ゴードン:あとになって、あいつがお前を恨むことになったら私も悲しい。
アーサー:父さんがガーティンになにかを隠してるってダグラスが言ってる。
ゴードン:ああ、なるほどな。いいか、よく聞くんだ。ダグラスはケチは詐欺師だ。だから周りの人間もそうだと思い込んでいる。いや、私はなにも隠しておらん。
アーサー:あの娘には価値はないの?
ゴードン:全くない。
アーサー:約束する?
ゴードン:神様に誓って本当だ。
アーサー&ゴードン:ウソだったら亀様にくすぐられてもいい。
アーサー:じゃあ、母さんをこらしめたいだけなの?
ゴードン:いや、いや、そんなわけないだろう。本当の理由を教えてやろう。
アーサー:オーケイ。
ゴードン:登録名なんだ。ガーティ。これは私の母親の名前でな。ガートルード。みんなガーティと呼んでいた。母が死んだとき、私はこの飛行機を買った。想い出のためにね。だからお前の母さんに渡したくないんだよ。この娘は私の母を思い出せる唯一のよすがなんだ。だから、どうだね?私に返してくれないかね?
アーサー:うん、たぶんね、もし本当に、、ちょっと待って。名前はモードだよ!
ゴードン:しまった。お前は会ったことがあるんだったな。
アーサー:だって僕のおばあちゃんだもん!ダグラス!マーティン!
ゴードン:いや、待て、やめるんだ、
アーサー:ウソはつかないって言ったのに!亀様にくすぐられてもって言ったのに!
(ドアの音)
マーティン:どうしたんだ、アーサー? あ、
ダグラス:またもやお出ましですか。
アーサー:絶対ガーティになにか隠してあるんだ!
ゴードン:いや、いや、お前には分からない、
アーサー:分かるもんね!なにもないって言って、でもそれはウソなんだ。これからダグラスがなにか賢いことを思いついて、見つけるんだ!
ダグラス:うむ。舞台設定をありがとう、アーサー。だが私はまだ、
アーサー:ねえ、頼むよ、ダグラス。見つけて!
ダグラス:この機になにか隠しましたか、ゴードン?
ゴードン:いや。
ダグラス:即答か。つまり、隠したわけだ。
ゴードン:いや、私は密輸人じゃない。
ダグラス:その通り。だったらなにを隠すんです?当時のことを考えましょうか。あなたは離婚するところで、、あ、あるいはそれを事前に察知していたか、、
ゴードン:いや!
ダグラス:もしそうなら、きっとあなたは自分の飛行機を、見かけよりずっと貴重なものにするはずだ。そして離婚が成立したら、キャロリンに家も車も、実際のところ、息子も渡せる。飛行機さえ手元に残ればよかった。
ゴードン:いや。仮に私がそんなことをしたら、お前たちがとっくに見つけているだろ?
ダグラス:小さすぎて我々には見つけられないものかも。
ゴードン:なら私がサンクトペテルブルグでとっているさ。
ダグラス:その通り。つまり、その「何か」は、大きいと同時に小さくもある。大きくて、なおかつ小さいものとはなにか?
アーサー:万里の長城。
ダグラス:そうか、もちろんそうだ!
アーサー:やっとだね。待ってたんだよ。
ダグラス:ありがとう、アーサー。これを見ろ!配線管だ。
マーティン:配線管?さっき言ったけど、僕、調べたんだよ。そこにはなにもない。
ダグラス:いいや、あるんだ。これぞ万里の長城さ。
マーティン:いったいなんの話?
ダグラス:大きいと同時に小さい。とっても長くて、とっても細い。つまり、(ワイヤーを引っ張り)これだ!
マーティン:このワイヤー?
ダグラス:このワイヤーだけじゃない。全てのワイヤーさ。ガーティの中にどれだけあると思う?機器、照明、発電機、全てをさきっちょからしっぽまで、翼の先から翼の先まで、何マイルものワイヤーが繋いでいる。
マーティン:でもワイヤーは銅じゃないと。
ダグラス:いや、電気を通せばいいんだ。そして、銅よりも電気を通すものといえば、ほら、(ワイヤーをはがす)、これだろう?
マーティン:黄金だ。
ゴードン:やられた。
キャロリン:やっと戻ったわよ、私たち、、ゴードン。いったい何事なの?
アーサー:やあ、母さん、ハーク、テレサ!父さんがやってきてね、でももう帰るところ、たぶんね。あ、それから母さん、おとぎ話のようなエンディングはないって言ってたよね?
キャロリン:ええ。
アーサー:ガーティの一部は黄金で出来ているんだよ。
キャロリン:そうなの?
ダグラス:やあ、キャロリン。そうなんだ。どうやらアーサーがポンコツのヴァンに高級ブレーキパッドをつけているのと同様、彼の父親はポンコツの飛行機を黄金の財宝でくるんでいたんだ。
テレサ:でも、ダグラス、黄金は銅よりずっと重いのよ。
ダグラス:その通り。
マーティン:そうか!つまり全ての銅を黄金に替えたら、機体は当然鈍くなる。
ダグラス:まさに。
マーティン:反応も悪く、
ダグラス:疑いの余地なし。
マーティン:要するに、すごく扱いにくい飛行機になる、、なんてこった!ずっと僕は、自分が下手なパイロットだと思っていた。でも実際は、とんでもなく飛ばしにくい飛行機を操縦してただけなんだ。わざと飛行を困難にしたのは、
ダグラス:機体の一部が黄金で出来ていたから。
キャロリン:そして私がずっと会社が倒産しないようやりくりしてきたのは、飛行機が、
ダグラス:一部、黄金で出来ていたから。
アーサー:そして僕がきみたちにコーヒーを入れている時、いつも、
ダグラス:うん?
アーサー:飛行機に黄金があったんだ!
ダグラス:その通り!だがそこに皮肉は感じられないがね。
アーサー:みんな飛行機でやっていたことを言ってるんだと思ったんだ。
ゴードン:なあ、ちょっと、いいかね、私と取引しないか?
キャロリン:ゴードン。私、前にも言ったし、もう二度と言わないわよ。私たちの飛行機から出て行って!(Get off Our Jet Still)

マーティン:本当にいいのかい、テレサ?
テレサ:もちろん。これはあなたが決めることよ。
(ドアの音)
キャロリン:感じのいい仲買人さんが黄金の見積もりを出してくれたわ。
ダグラス:で?
キャロリン:こう言いましょうか?食費が稼げたわよ。それもすごくたくさんの、最高級の食べ物が。例えばね、マーティン、もしあなたが、もう必要ないけどどうしてもここにいたいんだったら、スイス・エアウェイズと同じお給料を払えるわよ。
マーティン:そう。でも、、考えたんだけど、もうMJNは大丈夫だし、他の機長を雇えるんじゃないかな?
キャロリン:素晴らしい決断よ、マーティン。
アーサー:じゃ、チューリッヒに行っちゃうの、スキップ?
マーティン:そうしようと思うんだ、アーサー。分かってくれるよね?
アーサー:もちろんさ。きみはモーグリなんだ。
マーティン:誰?
アーサー:きみは人間の村に行かなきゃ。つまりチューリッヒに。頭に水をかぶっている子がテレサで、一緒に行くんだ。ここに残るのは、バギーラと、その母さんと、バルー。
ダグラス:誰もバルーにはならない。
アーサー:僕、バルーがいいな。
ダグラス:そうか、いいだろう。きみがバルーだ。
アーサー:最高。
キャロリン:明日朝に、新しいパイロット募集の広告を出しましょう。
ハーク:まあ、我々の最近の討論の結果、キャロリン、きみのバカげたチューリッヒとバカげだ時計に対する考えは変わっていないだろうから。私としてはこの国で仕事を探そうと思うんだ。
キャロリン:でも、ハーク、今のあなたのお給料とは雲泥の差になるのよ。
ハーク:そうだね。だが議論した通り、私はきみを愛している。一緒にいられるならなんでもする。だから私には手も足もだせないのさ。それに、お金では買えない楽しみがある。ダグラスの機長になれるんだ。
ダグラス:なんてこった。
キャロリン:ハーク。
ハーク:なんだい?
キャロリン:あなたを愛しています、ハーク。でも、ダグラスが機長よ。

(ピンポン)
マーティン:こんばんは、みなさん。私は副操縦士のマーティン・クリーフです。ルートル機長に代わりまして、スイス・エアウェイズのリヨン発チューリッヒ行きフライトのご搭乗を歓迎します。(フランス語で)ボンソワール、メダム&メッシュー、ジュスイ、ル、プレミエオフィシエ、マタン・ドゥ・クレフ。

(一方、ガーティでは)
ダグラス:オーケイ。宿敵になる人たちの名前を。
ハーク:ああ。ドナ・サマーとアナ・ウィンター。
ダグラス:うまいね。ビビアン・ウエストウッドとクリント・イーストウッド。
(ドアの音)
キャロリン:運転手さんたち。いいこと、これはアーサーが入れたんだけど、あの子はギャレーで手が離せないの。だからこれは、私がコーヒーを持ってきたことにはなりません。
ダグラス:ありがとう、ミセス・シップ、
キャロリン:ダメよ。
ハーク:ウェイン・スリープ(寝る)とリック・ウェイクマン(起きる)。
ダグラス:いいぞ。
キャロリン:なにしてるの?
ダグラス:宿敵。
キャロリン:ああ!えっとね、、ルビー・ワックスとジョン・ウェイン。(月の満ち欠け)
ダグラス:お見事!
キャロリン:当然よ。
(ドアの音)
ダグラス:(無線)コロンボ・センター、こんばんは。こちらはOJS社のG-T-I機。3-1-0から管制区域に入りました。目的地はアディスアベバ。
管制塔:了解。G-T-I。進路3-1-0を維持、右へ旋回、2-7-0を目指してください。
(交信終了)
ダグラス:ちぇっ。
ハーク:どうした?
ダグラス:見てくれよ、午後7時に真西へ飛行。ずっと太陽を見続けることになる。私はサンセットに向かって飛ぶのが嫌いなんだ。
ハーク:かわいそうに。それに時間もかかるな。こうしよう、他のゲームがあるんだ。客が乗っているフライトだと結構楽しめるやつだよ。準備するのはフルーツ1個、それから順番にそいつを隠して、
ダグラス:ああ、それなら私も知っている。
ハーク:ならやらないかい?時間つぶしにもなる。
ダグラス:やりましょうか。
(インターコム)
ダグラス:アーサー?
アーサー:なに、スキップ?
ダグラス:レモンがピッチに入ったぞ。
アーサー:最高!


(エンド・クレジット)

Stephanie Cole as Carolyn  
Roger Allam as Douglas
Benedict Cumberbatch as Martin
John Finnemore as Arthur

Anthony Head as Herc
Timothy West as Gordon Shappy
Matilda Ziegler as Princess Theresa
Jonathan Kydd as The Auctioneer
Gordon Kennedy as Bruce
Dan Tetsell as Rick/Karl

Writer : John Finnemore
Aviation Consultant : David Finnemore
Director/Producer : David Tyler

A Pozzitive production for BBC


(完)


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