Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

P.G.ウッドハウス ジーヴス・シリーズ

2013-05-30 06:23:49 | 日記
「ロッテルダム」で、名前が出てくるスティーブン・フライ氏。
映画やTV、ハリー・ポッター・シリーズのCDの朗読などなど、
様々な分野で活躍されているので、ご存じの方も多いかと思いますが、
今回は、そんな彼が出演した、こちらのTVシリーズを紹介します。

それはP.G.ウッドハウスの名作!ジーヴス・シリーズを実写化した「天才執事ジーヴス」。
ケンブリッジのコメディ・サークル「フットライツ」時代からの友人、
ヒュー・ローリー氏(Dr.HOUSEのハウス医師)がお気楽な主人バーティを、
そしてフライ氏がその比類なき執事ジーブスを演じています。

ジーブスものは、ここ数年で一気に日本語版が登場して、
私のような昔からのファンを喜ばせてくれています。
以前はジーブスはじめ、P.G.ウッドハウスの作品は全くといっていいほど
翻訳されておらず、地味に辞書を引きながら洋書に取り組んでいたもんです。
それが今では本はもちろん、DVDの日本語版まで!
(マンガ化もされているそうで)
時の流れをしみじみと、、

あ、話がそれました。
ジーブスです。そしてスティーブン・フライ氏&ヒュー・ローリー氏の強力タッグです。
面白くないはずがありません。興味のある方は、是非!



S3-5 Rotterdam(後)

2013-05-27 06:11:43 | 日記
後半です。


 ↓


マーティン:おはよう。キャロリン。
キャロリン:マーティン、早いのね。ロッテルダム行きは2時なのに。
マーティン:知ってる。でも、今日あのビデオを撮るんだろう?その前にこれを聞いてほしいんだ。
キャロリン:マーティン、
マーティン:昨日一日かけて携帯で録ったんだ。きみも同意してくれると思うけど、これこそまさにきみが求めているものだよ。冷静、威厳、そしてリラックス。聞いて。(録音映像スタート)やあ、みんな。私はマーティン・クリーフ、機長だよ。みんなが今日搭乗する機の責任者。私のチームのみんなと、地上スタップのみんなを代表して、今日のMJNの搭乗を大歓迎します。これから軽く飛行機を飛ばす前に、みんなにセーフティ・デモンストレーションの短い映像を見てもらいたいんだ。分かってるさ、退屈だって言うんだろう?でも、分からないよ。これがきみたちの命を救ってくれるかもしれない。あ、あの、も、もちろん、飛行機事故の確率はきわめて低いんだけどね。オーケイ。それでは、セーフティ・デモンストレーションのB面でお会いしましょう。チャオ!
キャロリン:信じられない。これがあなたのいうリラックス?
マーティン:リラックスかつ威厳もある。まるで、かっこいい教師みたいに。
キャロリン:そうね。でも残念ですけど、フォンズ教授、空席は埋まりましたわ。マーティン、こちらに来てもらえるかしら?
マーティン:ぼ、僕はここにいるよ。
キャロリン:どうしてあなたを呼んでいると思うの?
(ドアが開く音)
もう1人のマーティン:こんにちは。私はマーティン。機長です。はじめまして。
マーティン:うわぁ、そんな!ぼ、ぼくが、、きみが機長ってどういうこと?
もう1人のマーティン:ああ、きみが副機長だね。よろしく。
マーティン:僕が機長だよ!
もう1人のマーティン:あれ?私が機長だと思ったけど。
キャロリン:その通りよ。マーティン、このマーティンは本物の機長です。マーティン、こちらは役者さん。機長の役を演じます。
マーティン:でも、彼はパイロットの服を着てる。
キャロリン:そうね。役者はなんだってするのよ。
マーティン:でも制服だよ!どこでその制服を手に入れたんだ?
もう1人のマーティン:ナップ=シャッピーさんからいただいた。
キャロリン:実を言うと仮装用のお店で調達したの。
マーティン:でも僕のより上等だ!
キャロリン:そうなのよ。これからはあそこで買おうかしら。
(ドアの開く音)
ダグラス:おはよう、みんな。 あ。ハロー。
もう1人のマーティン:ハロー。私はマーティンです。
ダグラス:驚いたな。なにがあった?魔法のランプを見つけたのか?
マーティン:僕はここだよ、ダグラス。
キャロリン:マーティンは役者よ、ダグラス。歓迎の挨拶のために私が雇ったの。
ダグラス:ああ。
キャロリン:私ったら、賢い解決法を見つけたでしょう?これなら誰もベルギーの無料旅行をする必要がないわ。
ダグラス:実を言うと、キャロリン、たぶん私は説得されたら、
キャロリン:いい?計画としては、飛行前に、マーティン、操縦室であなたのスピーチをリハーサルしてから、一緒にロッテルダムに行きます。これなら実際に飛行中に撮影できるわ。ダグラス、セッティングを手伝って。マーティンはお茶の準備を。いえ、あなたじゃなくて、小さいマーティンよ。
マーティン:僕は小さいマーティンじゃない!
キャロリン:ダグラス、ついてらっしゃい。
(ドアの音)
もう1人のマーティン(大マーティン):さっきは失礼。あなたは本当にパイロットなんですね?
マーティン:ええ、そうです。僕は機長です。
大マーティン:それは素晴らしい。
マーティン: きみは違うんだね?
大マーティン:違うって?
マーティン:パイロットじゃないんだ。
大マーティン:とんでもない。違うよ。
マーティン:きみは本物のパイロットに見えるのに。
大マーティン:そう?それって、ほめ言葉?
マーティン:きみのような姿になれるなら、僕は人生の1年分を差し出してもいいよ。
大マーティン:ああ、うん。それは、ありがとう。
マーティン:それで名前は本当に、
大マーティン:マーティン。こんにちは。
マーティン:きみが言うとかっこよく聞こえる。苗字はなに?
大マーティン:ダヴェンポート。
マーティン:マーティン・ダヴェンポート。「こんばんは。こちらはマーティン・ダヴェンポート機長です」 しかもきみは名前がダダダァ~ダダなんだ!
大マーティン:なんだって?
マーティン:きみは僕より機長らしく見えるし、機長らしく話す。僕よりかっこいい制服を着て、それに名前まで僕よりかっこいい。すごく自慢だろうね。
大マーティン:私は、ただ仕事をしに来ただけさ。
マーティン:ねえ、試しに聞きたいんだけど、きみがニース空港で最終着陸態勢に入るとき、北西から20ノットの風が吹いていたら、どっちの滑走路を使う?
大マーティン:まるで分からないよ。
マーティン:当ててみて!
大マーティン:えっと、滑走路、B?
マーティン:B滑走路?なんだいそれ。そんな滑走路はないよ。
大マーティン:さっき言ったように、
マーティン:04左か、04右だよ。
大マーティン:じゃあ、04右?
マーティン:違う、左だよ!どうして知らないの?
大マーティン:私はパイロットじゃないからさ。
マーティン:もったいない。すごくもったいないよ。


(ドアの開く音)
アーサー:やあ。母さんがリハーサルの準備はいいかって聞いてる。
マーティン:いや。
ダグラス:ああ。
アーサー: (奥へ)準備いいって!
マーティン:あの人、身長はどれくらいだろう?
ダグラス:マーティン。私には分からんよ。185か188くらいかな。
マーティン:そうだよね。完璧な身長だ。平均より高いけど、高すぎない。
ダグラス:いいかげんにしたらどうだ?
(ドアの音)
キャロリン:さあ、運転手たち。ムービー・マジックを作リ出す準備はいいかしら?あるいはムービー・マジックが作られるのを横で座って見る準備は? 中へどうぞ、マーティン。
大マーティン:おじゃまします。
ダグラス:いらっしゃい。
マーティン:身長は、マーティン?
大マーティン:188だけど。
マーティン:ほら!そう言ったろう。結婚してる?
大マーティン:うん。
マーティン:もちろんそうだろうね。子供たちもいるんだろう?
大マーティン:ああ。2人。
マーティン:男の子と女の子?
大マーティン:どうして知ってるの?
マーティン:勘だよ。
キャロリン:もういいわ。残りの気味の悪いストーカー・クイズはあとに取っておいて。はじめましょう。ほら、小さいマーティン。大きいマーティンに機長の席を譲りなさい。
マーティン:本当に、キャロリン、僕は小さいマーティンじゃない!
キャロリン:あなたはそう言い続けているけど、巻き尺には別の意見があるみたいよ。
ダグラス:私の席を使ってくれ、マーティン。
キャロリン:なんですって?ダメよ!あなたはここにいなさい。ダグラス。
ダグラス:いや、そうは思わない。私は、さっき言ったように、とてもシャイなんだ。
キャロリン:大人げないこと言わないの。
ダグラス:大人げないんじゃないさ。グランプリに行けないなら、ビデオには出ない!
キャロリン:分かったわ。小さいマーティン、今日はついているわね。あなたの映画デビュー作よ。ダグラスの席に座って、顔はカメラに映らないようにして。
マーティン:副機長の席に?僕は副機長じゃない。僕は、
キャロリン:マーティン!いいから座りなさい!(座る) どうもありがとう。では、大きいマーティン、
マーティン:お願いだ、キャロリン。
アーサー:至上マーティンって呼んだら?
キャロリン:なんですって?
アーサー: 最大。
キャロリン:いいでしょう。至上マーティン。まずあなたたち2人が操縦している姿を2、3秒撮って、それから、座席にいるあなたがセリフを言うのよ。
大マーティン:オーケイ。どうやれば操縦しているように見えるかな?
キャロリン:足を上にのせて、くだらない言葉遊びをしながら、チーズをおなかいっぱい食べるのよ。
大マーティン:えっと、
キャロリン:あら、ごめんなさい。今のは風刺がききすぎていたわね。ただ操縦桿を握って、満足気にしていればいいわ。
マーティン:もちろん、これはただの提案だけど、どちらかが管制塔になには言ってはどうだろう?天気情報をもらうとか、雰囲気が出るようなことを。
キャロリン:そうね、いいわ。至上マーティン、やってみて。
大マーティン:よし。どう言えばいい?
マーティン:おや、どう言えばいいか分からないんだね。
キャロリン:マーティン、教えてあげなさい。
マーティン:あるいは僕が言ってもいいよ。
キャロリン:いいでしょう。ただし簡潔にね。では、始め。
マーティン:シャンウィック、こちらはG-T-I。レイキャビックの天気を教えてください。
キャロリン:それでは至上マーティン、始め。
大マーティン:ハロー。よ、ようこそ。一同を代表して、その、M&M航空、ごめんなさい!MJN航空へ。みなさんは、たくさんの航空会社のなかから、えっと、我々を、その、ごめん。次が出てこない。セリフは?
ダグラス:ふむ。これは興味深い。


大マーティン:大丈夫かな?どう思う?
マーティン:その、、問題ないと思うよ。
大マーティン:どうして彼女はあんなに急いで出たんだろう?それに、もう1人も一緒に連れていったのはなぜ?
マーティン:さあ、まるで分からない。ねえ、マーティン、教えてくれないか。きみはたくさん仕事をかかえているの?役者業で忙しい?
大マーティン:いや、たくさんではないよ。いまは、どちらかというと落ち着いてて。きっとみんなそうだろう?
マーティン:うん、そうだね。でも、食べていけるんだろう?
大マーティン:それが、正直に言うと、役者業だけじゃないんだ。タクシーの運転手もしている。副業でね。でも、ある程度は、そっちが本業かも。
マーティン:なるほど。きみはずっと役者になりたかったの?
大マーティン:うん、ずっと、ずっとね。5歳のときからなんだ。私がやりたいのは絶対にこれだけ。疑いなく、このために生まれてきたのに、でも、周りを説得することができない。すごく不満なんだ。
マーティン:気持ちは分かるよ。それで、キャロリンはどうやってきみを見つけたの?
大マーティン:ウェブサイトに載せているんだけど、いつもはそこから仕事はこないんだ。だから驚いたよ。しかもオーディションもしていないんだ。
マーティン:そうなのかい?びっくりだね。で、立ちいったことを聞くようだけど、彼女はいくら払うって?
大マーティン:えっと、実は、無償でやることにしたんだ。分かるだろう?善因ってやつさ。
マーティン:え、MJNが?僕たちは善因じゃない、悪因だよ
大マーティン:演技したかっただけだよ!誰も僕に演じさせてくれないんだ!
マーティン:ねえ、えっと、きみはフィットンに住んでいるのかい、マーティン?
大マーティン:うん。
マーティン:今度飲みに行かないか?
大マーティン:マーティン、申し訳ないけど、私は、
マーティン:そうじゃない!僕も違うよ。そういう意味じゃなくて、軽く一杯、ビターかスタウトを1パイント、
大マーティン:ああ、うん。もちろん。それは楽しみだ、マーティン。
マーティン:僕もだよ、マーティン。


キャロリン:いいわ。さっさと済ませましょう。あなたに歓迎の挨拶をお願いしたいの。
ダグラス:グランプリに行けるならやろう。
キャロリン:グランプリには行けません!
ダグラス:それならマーティンズのどちらかを選ぶんだね。
キャロリン:分かったわよ。(ドアの開く音)あなたに、
ハーク:ハロー。
キャロリン:ハーク!ここで何をしているの?
ハーク:きみをオペラに連れて行くんだ。
キャロリン:それは明日でしょう。
ハーク:いや。伝言を聞いてないのかい?
ダグラス:ああ、マーティンが忘れたようだ。
キャロリン:ちょっと待って。ねえ、ハーク、「ハロー、MJN航空へようこそ」って言ってみて。
ダグラス:なんだと?
ハーク:ハロー、MJN航空へようこそ。
キャロリン:いいわね!
ダグラス:いや、絶対ダメだ。
キャロリン:ハーク、あなた、今夜予定はある?
ハーク:うん。きみをオペラに連れて行く。
キャロリン:でも私はこれからロッテルダムに行くから、それは出来ないわ。その代わり、私と一緒に来て、おしゃれな制服に身を包み、MJNの歓迎メッセージを録画させてくれない?
ダグラス:ダメだよ!
ハーク:へえ、いいね。面白そうだ。
キャロリン:ダグラスは残念だけど出来ないんですって。すごくシャイなのよ。
ハーク:それは可哀想に。もしこの気の毒な男に自信を与えることができたら。
ダグラス:分かったよ、キャロリン。私がやる。喜んでやるよ。お願いだ。
キャロリン:ありがとう、ダグラス。でも、本当言うと、私はハークの声のほうが好きなの。
ダグラス:なんだって!そんなバカな。(ビデオ向けの声で)楽しいフライトになりますように。
ハーク:(こちらもビデオ向けの声で)リラックスしてフライトをお楽しみください。
ダグラス:どうぞ、ぜひリラックスして。最高に素晴らしいフライトを。
ハーク:みなさまには是非とも、最も快適で素敵なフライトを。 
キャロリン:もういいわ!二人ともやめて。私はシロップの海で溺れそうよ。ダグラス、もし私が慈悲深くも、あなたにMJNの歓迎挨拶を担当させてあげるとしたら、私の見返りはなにかしら?
ダグラス:いいだろう。私はグランプリへ行かない。
キャロリン:あら、でも忘れないで。はじめからグランプリには行けないのよ。で、あなたは私になにをしてくださるの?


キャロリン:それでは、みんな、準備はいい?これからMJN航空の最初で-そして、お願いだから最後の-メジャー映画を上映いたします。アーサー、再生ボタンを押して。
アーサー:オーケイ。アクション!
(音楽が流れて)
画面のダグラス:ハロー。私はリチャードソン副機長です。MJN航空のご利用ありがとうございます。どうか穏やかで快適な旅をお楽しみください。みなさまの安全は私たちにとって大切ですので、飛行機を頻繁に利用なさる方も、続けて上映されるセーフティ・デモンストレーションをよくご覧ください。
キャロリン:そして誰よりも私たちを上手に導いてくれるのは、、
(音楽が変わって)
画面のダグラス:ハロー。私はスチュワードのダギーです。
(みんなの歓声)
ダグラス:なんてこった、、
画面のダグラス:私は副機長の双子の弟です。MJN航空は家族経営を誇りにしています。離陸の前に、私がこの機内における安全手順を実演しますので、どうか皆様ご注目ください。
マーティン:確かにきみは注目の的だよ、間違いない。
アーサー:僕の制服がよく似合うよ、ダグラス。帽子もね。
マーティン:特に帽子がね。
キャロリン:シーッ。見逃すわよ。
画面のダグラス:指示があった際は、救命胴衣を頭からかぶり、紐をウエストに回して、胸の前でしっかり2重に結んでください。
キャロリン:なんの果物に似てると思う?グレープフルーツみたいだけど、もっと大きくて、もっと黄色いわ。
マーティン:メロンだ!
画面のダグラス:飛行機の外に出たら、赤いタグを強く引っ張り、膨らませます。
(みんなの歓声)
キャロリン:見事だわ。そう思わない、ハーク?
ハーク:まさにその通り。私にはとてもあんなに上手にできないよ。第一、絶対にやらない。
ダグラス:もう止めてもいいだろう?
キャロリン:とんでもない。これからがいいところなのよ。
画面のダグラス:救命胴衣には、注意を引くために、電灯と笛がついています。
キャロリン:でも、ダギー、教えてちょうだい。笛はどうやって使うの?
(笛の音)
(みんなの歓声)


 (エンド・クレジット)



S3-5 ロッテルダム(前)

2013-05-26 06:26:51 | 日記
早いものでキャビン・プレッシャー シリーズ3も残すところあと2話。
今回は、第5話 ロッテルダムです。

 ↓

毎回のお願いですが、先に番組を聞いてから、ご覧ください。

 ↓

では、どうぞ!

 ↓


(テーマ曲)
  今週は 「ロッテルダム」


ダグラス:オーケイ、マーティン。きみの番だ。
マーティン:よし。僕が税関審査で申告したのは、えっと、ニューデリーからゼリー、ミューニック(=ミュンヘン)からチュニック、カラカスからマラカス、そして、シアトルからキャトル(=牛)。
ダグラス:牛?
マーティン:うん。いけないかい?
ダグラス:いいだろう。大きい飛行機だからな。オーケイ。私が税関審査で申告したのは、
(無線の音)
ダグラス:おかしいな。我々はここにいるし、キャロリンとアーサーはキャビンにいる。他にこの番号を知っている人は?
マーティン:誰もいない。
ダグラス:もしもし。MJN航空です。そちらは神様ですか?
ハーク:いや、まだそこまではいかない。
ダグラス:ああ、こんにちは。ハーキュリーズ。
ハーク:やあ、ダグラス。ハークと呼んでくれ。
ダグラス:なにか御用ですかな、ハァク?
ハーク:うん。実はそうなんだ。その辺にキャロリンはいるかい?
ダグラス:通常、彼女はキャビンにいるんじゃないかな。仕事するためにね。我々も同様に操縦室で仕事をしている。
ハーク:申し訳ない。言葉遊びで盛り上がっているところを邪魔したかね?
マーティン:ぼ、僕が呼んでくるよ。
ハーク:いや、いいんだ。伝言を頼むよ。オペラだが、土曜日より金曜日のほうが良いので、1時に迎えにいくと伝えてくれないか?
ダグラス:ええ。もちろんです、サー。他になにかお役に立てますか?エドナ伯母さんにお誕生日おめでとうと伝えましょうか? ジェントルマン・ジョーの単勝・複勝に5ポンドはるよう、賭け屋に言いますか?なぜなら我々の仕事はもちろん、本来、航空秘書サービス業なのでね。
マーティン:伝えるよ、ハーク。お安い御用だ。
ハーク:ありがとう、マーティン。
(無線オフ)
ダグラス:あいつにごますりしても無意味だぞ。きみにカル・エアーの仕事を世話できるわけじゃないんだ。
マーティン:ごますりじゃないよ。彼が好きなんだ。どうしてきみは嫌うの?
ダグラス:私はずっと前から彼を知っている。
マーティン:そして?
ダグラス:そして、あいつは自分の出現が、虹以来、空に起こった最上の出来事だと考える、口のうまいおしゃべり屋だからさ。
マーティン:それでは彼を好きになれるはずがないね。
ダグラス:その通り。
マーティン:彼はきみを真似てるんだ。


ダグラス:オーケイ、キャロリン。まずはカメラなしでやってみよう。準備はいいかい?
キャロリン:ええ。
ダグラス:よし。始め。
キャロリン:ハロー、みなさんをお迎えできて光栄です、
アーサー:アクション!
ダグラス:ありがとう、アーサー。だがそれは普通、役者が話す前に叫ぶ言葉だ。
アーサー:そうか、ごめん。きみが「始め」って言ったから混乱しちゃったんだ。でもとにかく言うほうがいいと思って。念のために。
ダグラス:もう一度やってみよう。アーサー、「アクション」と言う準備はいいかい?
アーサー:うん。
ダグラス:キャロリン、始める準備はいいかい?
キャロリン:さっさとやりましょう。
ダグラス:アーサー。始め。
アーサー:アクション!
ダグラス:キャロリン。始め。
キャロリン:ハロー、みなさんを当機にお迎えできて光栄です。MJN航空にようこそ。
ダグラス:そこで止めていいかな?思い出してくれ。きみはこれから乗客を機内に迎える、航空会社の社長なんだ。国民に向かって演説する君主じゃない。
キャロリン:違いがよくわからないけど。
ダグラス:それでも、だ。「留守電メッセージを吹きこむヴィクトリア女王」風は控えめにして、できれば、微笑んでみてはどうだろう? ふむ。もう少し、サメっぽさをなくせるかい?
キャロリン:たくさんの航空会社のなかから私たちMJNをお選びいただき、嬉しく思います。
ダグラス:同時に当惑している。
キャロリン:皆様の本日の安全は、私たちの至上の関心事です。
アーサー:至上ってなに?
ダグラス:最大。
アーサー:了解。
キャロリン:ですので、これから上映するセーフティビデオにどうかご注目ください。頻繁に飛行機を利用なさるお客様も、機体が異なることがありますので。
ダグラス:この機は特に。フライト毎に違う場合がある。
アーサー:そして僕がセーフティ・デモンストレーションをやるんだね。
キャロリン:まだよ。MJN航空の社長として、
(ドアが開く音)
マーティン:やあ。
キャロリン:MJN航空の社長として、私の最優先事項は、皆様に快適なフライトをお楽しみいただくことです。
マーティン:本当に?そんな話初めて聞いたよ。なにやってるの?
キャロリン:アリヤーキンさんが、MJNにも離陸前のビデオが必要だという指令を別荘から出してきたの。そのほうが本物の航空会社っぽく見えるからですって。それがどういう意味なのかは、気づかないふりをしておいたわ。それで、アーサーがセーフティ・デモンストレーションをするの。
アーサー:ビデオでね。映画みたいに。
キャロリン:そして私は搭乗を歓迎する挨拶を担当します。
マーティン:アーサーがセーフティ・デモを?
アーサー:うん!
キャロリン:ええ、そうよ。なにか問題でも?
ダグラス:アーサーには芸術に対する自由な発想があるようだ。
アーサー:ねえ、パニック映画みたいにしようか?
ダグラス:これもその一例。
マーティン:きみがやるほうがいいと思うよ、キャロリン。
キャロリン:いえ。私はダメ。
ダグラス:当初はその予定だったんだ。実際、今朝試し撮りしたものを再生したら、キャロリンは自分が滑稽に見えるんじゃないかと心配してね。
マーティン:そんなことないよね?
ダグラス:いや。思い切り滑稽だった。心配することが間違っているとは言ってない。
キャロリン:ありがとう、ダグラス。
ダグラス:中でも特に印象的だったのは、彼女がパンパンにふくらませた黄色い救命胴衣を着て、笛の使い方を説明したシーンだ。
キャロリン:ありがとう、ダグラス。
ダグラス:ミュージカルにでてくるグレープフルーツみたいだった。
キャロリン:もう充分よ!
マーティン:キャロリン、歓迎のメッセージは僕がやるべきだと思う。なんといっても、僕が機長なんだよ。みんな機長からの挨拶を聞きたがる。そのほうが安心できるんだ。
キャロリン:マーティン、いままで誰か1人でもあなたで安心したことがある?
マーティン:それは公平じゃないよ。
キャロリン:申し訳ないけど、このビデオに求められるのは、冷静でリラックス、かつ威厳があること。あいにくあなたはどの資質でも有名ではないわ。
ダグラス:いずれもきみからは発掘しにくい長所ばかりだ。
マーティン:僕は冷静だよ!すごく、すごく冷静だ。しかも威厳があるし、それから、えっと、あとひとつ。あとひとつはなんだっけ?どんなものでも、僕、出来るよ。
ダグラス:リラックス?
マーティン:そうだ!僕はとてもリラックスしている!
キャロリン:いいでしょう。やってみなさい。
マーティン:え?今?
キャロリン:練習あるのみ、よ。マーティン・クリーフ機長が操縦しているところにズームアップ。彼はカメラに向かって魅力たっぷりに視線を送り、そして言います、
マーティン:準備できてない!
キャロリン:そして照明が消える。
マーティン:違うよ、
キャロリン:ありがとう、マーティン。結果は後日お知らせするわ。
マーティン:いや、ちょっと待って。オーケイ。準備できた。
キャロリン:では、始め。
マーティン:ハロー。MJN航空へようこそ。私の名前はマーティン・クリーフ機長。でも、それは関係ないですね、ここではカジュアルにいきましょう。マーティンと呼んでください。でも、このビデオの場合だけですよ。実際に僕を見かけたら、クリーフ機長と呼ぶほうがいいでしょう。あるいは機長と。儀礼上の問題でして。でも、僕が決めてもいいのなら、マーティって呼んでも。いや、ダメです。ダメ。公私混同はやめましょう。絶対にマーティとは呼ばないように。えっと、つまり、要するに、ハロー。私はマーティン・キャプテン機長。じゃない、クリーフ、クリーフ機長! もう一度やってもいい?
ダグラス:きみは完璧主義者だな。
アーサー:すごく良かったと思うよ。
キャロリン:あなたはなんでも良かったと思うのよ。
ダグラス:公平にいって、キャロリン、きみと同じくらいの出来だった。
キャロリン:分かっています。では、これだけは避けたかったけど仕方ないわね。ダグラス、あなたがやりなさい。
マーティン:そんな、キャロリン、ダメだよ。
キャロリン:私も嫌だけど、マーティン、でもここにスティーブン・フライのお気に入りの伯父さんみたいな話し方をするパイロットがいる以上、使うしかないでしょう。どうぞ、ダグラス、あなたの得意技を見せて。
ダグラス:いや、遠慮する。
キャロリン:なんですって?
ダグラス:気が進まないんだ。
キャロリン:気が進まないですって?でもこれは、あなたの2つの情熱の組み合わせでしょう?マーティンをへこませて、しかも自慢の声も披露できるのよ。
ダグラス:私のことをよくご存知ないようだな。私の内なる悲しみは、キャロリン、自分に自信が持てないことだ。
キャロリン:あら、そうなの?
ダグラス:全然ダメ。これが私の呪いなんだ。
マーティン:じゃあ決まりだね。僕がやるよ。
キャロリン:いけません。つまり、私は出来ないし、マーティンはすべきでないし、ダグラスはやりたくないのね。素敵だわ。
アーサー:僕がやってもいい?
みんな:ダメ!


アーサー:ちょっと待って、ダグラス。 また落っことしちゃった。
ダグラス:だから私がビデオカメラを持っていて、きみは救命胴衣を持っている。
アーサー:うん。そのほうがいいよね。ねえ、ダグラス、本当に歓迎の挨拶をやらないつもり?
ダグラス:そのようだな。
アーサー:きみは自分に厳しすぎるんじゃないかな。やってみればいいのに。きっと上手に出来ると思うよ。
ダグラス:バカなことを言うんじゃない。アーサー。
アーサー:ううん。本当にきみなら、、
ダグラス:もちろん私がやるべきだ。私にかなう者はいない。「MJN航空へようこそ。エキサイティングな空の旅を再び。ときには興奮しすぎるほどに」
アーサー:すごいよ、本当にやってる人みたいだ。最高。母さんに話しに行こう。
ダグラス:そんなに急ぐな、坊や。このことをマーティンが知ったら、抵抗を示すだろう。抵抗しても私が勝つのはむろんだが、事を荒立てたくない。それに、もし私が懇願されてこの仕事を引き受けたら、見返りを期待できる。
アーサー:見返りってどういう意味?
ダグラス:代わりにもらえるもの。
アーサー:了解。例えばなに?
ダグラス:まだ決めていない。さて、機内に入ろうか、グレタ・ガルボくん。きみのアップを撮るぞ。


マーティン:ハロー、私はマーティン・クリーフ機長です。ハロー、私の名前はマーティン・クリーフ機長です。
(ドアの開く音)
マーティン:こちらはマーティン・クリーフ機長。僕の名前はマーティン・クリーフ機長。
ダグラス:ハロー。マーティン・クリーフ機長を探しているんだが、彼を見かけたかい?
マーティン:どうやったら威厳ある言い方ができるんだろう。
アーサー:やあ、スキップ!これから僕のシーンを撮るんだよ。ロケ地で。
マーティン:私はマーティン・クリーフ機長。きっと僕の名前が問題なんだ。
アーサー:つまり本物がある本当の場所だよ。
ダグラス:キャロリン用にデモテープを録っているんだな。
アーサー:今回は飛行機が舞台だから、飛行機の中で撮影するんだ。
マーティン:うん。マーティン。マーティン。これって機長の名前じゃないよ。マーティンなんて。
アーサー:セットを組むんじゃなくてね。そんなお金もないし。
ダグラス:じゃあ機長の名前ってなんだい?
マーティン:例えば、きみのさ。驚きだろう?「こちらはダグラス・リチャードソン機長」。ほら、このほうがずっと良く聞こえる。
ダグラス:確かにいい響きだ。
マーティン:ダダダァ~ダダ機長。これが必要なんだ。ダダダフッ機長じゃなくてね。


キャロリン:スタジオのみんな、準備はいい?カメラと照明も大丈夫?
ダグラス:私は彼にカメラを向けていて、照明もついている。うん。準備よし。
キャロリン:準備はいい、アーサー?あら、帽子もかぶってるのね。
アーサー:この帽子は至上なんだ。
ダグラス:確かに大きいな。よし、アーサー、好きなタイミングで始めてくれ。
アーサー:誰が「アクション」って言うの?
ダグラス:きみが「アクション」って言ってもいいよ。
アーサー:アクション! 
(沈黙)
ダグラス:そして、始め。
アーサー:こんばんは、みなさん。これを見るのがもし朝だったら、おはようございます。それとも、ハロー。これならいつ見ても大丈夫だから、ハロー。僕はアーサー。本日キャビンクルーとしてみなさんをお迎えできて嬉しいです。でももし母さんが今日のキャビンクルーだったら、お迎えできて嬉しいのは母さんで、僕じゃなくて残念です。でもこのビデオには僕がいるから、僕も少し参加できて嬉しいです。
ダグラス:上出来だ、アーサー。素晴らしいスタートだった。でも今は、脚本通りにやってくれるかい?
アーサー:うん、オーケイ。えっと、なんだっけ?
ダグラス:「ハロー」
アーサー:了解。えっと、ちょっと待って。練習するから。ハロー。ハロー。ハロー!
ダグラス:キャロリン、本当にきみはやらないのか?
キャロリン:ええ。
アーサー:ハロー!
ダグラス:いいだろう。それが賢明な決断なんだな。
キャロリン:あの救命胴衣を着た私の姿がヘンだと言ったのはあなたよ。
ダグラス:その通り。特に笛を吹くときがね。どうしてあんなことをやってみせなきゃいけないのか、私には謎だよ。正直言って、笛吹きの実技を必要とするようなヤツは溺れて当然だ。 ともかく、きみはとても滑稽だった。だがこの代案は、
アーサー:ハロォー!
キャロリン:代案はうまくいくわよ。練習が必要なだけ。
ダグラス:きみがそう言うなら。オーケイ、アーサー。次の場面を撮ろう。
アーサー:オーケイ。
ダグラス:アクション、そして、始め。
アーサー:了解。シートベルトはこのように締めて、長さを調整し、このように外します。(バックルの音)待って、あれ、ごめんなさい。自分で締めるときと違うね。えっと、本当だったらこの金属の部分をこっちの金属の箱に差し込んで、カチャって音がすると締まるんだけど。違うな。これじゃクシャって音だ。えっと、そうじゃなくて、ダメだ。これじゃ、まるでイルカだ。シートベルトがイルカみたいな音を出したら、僕、どうなってるのか分からないよ。では次。あなたの座席から一番近い非常口は、後方にある可能性もありますので、キャビンクルーの指示する方向を確認してください。クルーはたぶん僕。あ、そうじゃなくて、もう1人の、本当の僕。本当の僕を見てください。それでは僕の僕を見て。つまりこの僕。今しゃべっている僕。もしもう1人の僕もしゃべっていたら、僕、黙れ!これは僕の番だぞ。
キャロリン:結構!分かったわ。私がやります。
ダグラス:それが良案だろうね。では、きみはセーフティ・デモと歓迎の挨拶も担当するんだね?どちらか一方は仮装する?それとも一卵性双生児という設定にするかい?
キャロリン:当然あなたが歓迎の挨拶をするのよ。
ダグラス: さっきも言ったように、私は衰弱性内気症でね。ところで、話は唐突かつ完全に変わるが、我々の次のフライトではどこに行くんだい?
キャロリン:えっと、ロッテルダムよ。
ダグラス:ふむ。ロッテルダムか。素敵な所だ。スパにとても近い。
キャロリン:どこですって?
ダグラス:スパさ。ベルギーの魅力ある町。200マイルほど離れたところにある。その名前は、その、スパの語源さ。当然ながらね。そして今週末は確か、そこでベルギーF1グランプリが行われる。 そうだ、キャロリン、今思いついたんだが、ロッテルダムにいる間に、ちょっと見に行ってもいいかな?
キャロリン:お好きにどうぞ。でも200マイルの距離を、「ちょっと」往復するのは難しいんじゃないかしら?
ダグラス:そうだね。そのためには、どうだろう、空飛ぶ乗り物が必要かもな。
キャロリン:なんですって?とんでもない。絶対ダメです。ガーティを借りてグランプリを見に行くなんて。
ダグラス:それは残念。もしかしたらグランプリの興奮が私の心に火をつけて、カメラに対する恐怖心を克服する手助けになるかと思ったんだがね。
キャロリン:なるほど。分かったわ。あなたがやりたくないことの見返りじゃなくて、あなたの得意なことの見返りを要求する気ね。
ダグラス:何のことだか分からないが。
キャロリン:いずれにしてもあなたがやることなのに、賄賂まで渡すなんてとんでもないわ。
ダグラス:そうか。
キャロリン:そうよ。


 (続く)




イエロー・カーの遊び方

2013-05-23 05:45:21 | 日記

Ottery St Mary、いかがでしたか?
スタートからエンディングの歌(!)まで、一気に楽しめて、本当にお勧めのエピソードです。
かく言う私も、何十回と繰り返し聞いては同じところで笑っています。
完全な中毒症状…。


このエピソードを聞き終えたら、Finnemore氏のブログを是非。
いつのもネタ帳と、そしてカットされたシーン
(ピアノ運び屋さんたちが空港からパブへ向かう際のやりとり。これも面白い!)も載ってます。


そして、是非見ていただきたい!のが、Finnemore氏制作のYouTube。
タイトルはずばり「イエロー・カーの遊び方」
このゲームの達人・アーサーがルールを説明してくれます。
特にニューヨークのくだり、絶品ですよ♪




How to play 'Yellow Car'

S3-4 Ottery St Mary(後)

2013-05-18 08:01:42 | 日記
続きをどうそ。


 ↓



マーティン:オーケイ。平均で、最低時速11マイルをキープできれば、オッタリー・セント・メアリーに6時に到着できる。
ダグラス:厳しいペースだが、なんとかできるだろう。
アーサー:どうしてそんな名前なの、スキップ?
マーティン:なにが?
アーサー:オッタリー・セント・メアリー。
マーティン:見当もつかない。
アーサー:きみは知ってる、ダグラス?
ダグラス:ああ。
マーティン:知ってるの?
ダグラス:当然のことさ。いいかい、聖(=セント)メアリーはデヴォンの守護聖人で、彼女はもちろん、カワウソに生きたまま食べられて殉教したことで有名なんだ。
アーサー:本当に?
ダグラス:そうさ。凶暴なカワウソたちにね。だから彼女は全身をカワウソで包まれた姿で描かれている。
アーサー:それって、食べられているところを?
ダグラス:地獄の苦しみをうたっている教会ではね。他のところでは、みんな天国にいって仲直りしたとされているから、カワウソたちは彼女に微笑みかけ、優しく寄り添い、カワウソ・キスを与えたり、魚をプレゼントしている。
マーティン:ダグラス。
アーサー:でも聖人を食べたのに、どうしてカワウソは天国に行けたの?
ダグラス:きみはまたしても難しい神学上の問題を指摘してくれたね、アーサー。我々が推察する限りでは、純粋に聖ペテロがカワウソにぞっこんらしいんだ。あのヒゲもじゃの顔をみると、彼はつい言ってしまう。「きみたち。私はいつまでも怒っていられないよ」そして、彼らを天国に案内するんだ。
アーサー:じゃ、天国にはカワウソがいっぱいいるんだね。
ダグラス:きみが想像できる数以上に。
マーティン:アーサーなら、12匹くらいかな。
アーサー:そんな。僕はもっとたくさんのカワウソを想像できるよ。
ダグラス:そうか?何匹だい?
アーサー:百万!
ダグラス:それは無理だろう。きみだけじゃなく、誰にも不可能だ。
アーサー:僕はできるよ。今やってみるね。わぁお!
ダグラス:いや、きみはたくさんのカワウソを思い浮かべて、百万と言っているだけだ。実際には、一度に20匹以上のカワウソを想像できる人はいないと思う。
マーティン:それはないよ。僕なら確実に100匹のカワウソを想像できる。
アーサー:僕もだよ。イエロー・カー。
ダグラス:いいだろう。彼らがどのくらいの場所をとると思う?例えば、100匹のカワウソをガーティに乗せられるかい?
マーティン:もちろんさ。
ダグラス:それは王立動物虐待防止協会が憤慨するような満員状態かね?それとも、カワウソたちは比較的落ち着いて過ごせるのかい?
マーティン:そうだね。まず、機内には16席あるから、2匹で1席を使うとして、
ダグラス:仲良しなんだろうね、そのカワウソたちは?
マーティン:そう願うよ。それから頭上の荷物入れに1匹づつ。
ダグラス:荷物入れを開ける際はお気をつけください。カワウソが滑り出る可能性がございます。
アーサー:座席の下に1匹つづ?
ダグラス:うん、名案だ。
マーティン:でもそこは救命ジャケット用だ。
ダグラス:心配ない。カワウソは泳げるからね。ギャレーにはどのくらい?
マーティン:床に4匹、料理台に2匹かな。あとは、、キャロリンとアーサーは乗せてるの?
ダグラス:カワウソの接待に?それは甘やかせすぎだろうね。彼らの代わりにもっとカワウソを乗せよう。
マーティン:アーサーの代わりにカワウソを乗せるほうがどのみちいいかも。
アーサー:ちょっと!
ダグラス:つまり客席に32。荷物入れに16。座席の下に16。ギャレーに6。
マーティン:貨物室に15匹?
ダグラス:20は楽勝だろう。それから通路に6,7匹。
マーティン:7匹にしよう。
ダグラス:合計で、97。そして操縦室に3匹。100匹だ!
アーサー:最高!
マーティン:いや。操縦室はダメだ。
ダグラス:仮定の話だ。
マーティン:仮だろうとなんだろうと、僕は操縦室に生きたカワウソを乗せて飛べないよ。
ダグラス:どうしてダメなんだ?歴史上、カワウソによるハイジャック事件はめったに起こっていない。
マーティン:悪いが、その考えにはイギリス民間航空局(CAA)は賛同しないと思う。
ダグラス:正直申し上げれば、機長、飛行機いっぱいに付き添いなしのカワウソがいること自体、CAAは喜ばないと思われますが。


キャロリン:ほら、またぐずぐずして。
ハーク:ぐずぐずしてない。一般人の2倍のスピードで歩いているんだ。
キャロリン:だからプロテインが必要なの。そうしないと遅れるのよ。
ハーク:誰がぐずぐずしているか教えようか。きみの変な犬だよ。
キャロリン:なんですって?あ、こっちに来なさい!ほら!
ハーク:どうして呼ばないんだ?
キャロリン:呼んでるわよ。 悪い子ね、こっちに来て!
ハーク:どうして名前で呼ばないの?
キャロリン:こっちよ!
ハーク:あの女の子が犬好きだといいが。
キャロリン:早くいらっしゃい!
ハーク:おっと。好きじゃないようだ。少なくとも今となってはね。
キャロリン:スヌーパドゥー、こっちよ!
ハーク:スヌーパドゥーだって?
キャロリン:いい子ね。黙って!
ハーク:思っていた以上にいいな。
キャロリン:アーサーが名付けたのよ。
ハーク:コッカプーのスヌーパドゥー。最も高貴な犬。


マーティン:トイレに2つほど入れられないかな?
ダグラス:なにを?
マーティン:カワウソさ。
ダグラス:うん、そうだな。
アーサー:最高だよ、スキップ。これで何匹になった?
ダグラス:99。
アーサー:100匹いけそうだよね。あ、サービスエリアだ。寄ってくれる?
マーティン:アーサー、また行く必要があるのか?
アーサー:ううん。僕、サービスエリアが本当に好きなんだ。小さなお店が一緒に旅行に来たみたいなんだもん。
マーティン:ダメだよ。
アーサー:どうしてさ?時間がいっぱい余っているのに。
マーティン:余っているんじゃない。予備にとってあるんだ。寄らないよ。
アーサー:そんなぁ。
ダグラス:分かるよ、人生は厳しいものだ。それより役立ってくれないか、
アーサー:もう役に立ってるよ。
ダグラス:今まで以上に役立ってくれ。私の携帯で地図が出せるから、アドレスを入力して。
アーサー:どのアドレス?
ダグラス:ゲティスバーグ演説(=アドレス)さ、アーサー。いったいなんだと思うんだ?このピアノを運ぶ住所だよ。
アーサー:うん、そうか。それってどこ?
ダグラス:神よ、私に力を与えたまえ。空港できみがマーティンの書類棚から取ってきた封筒に書いてある住所だ。
アーサー:そうだね。えっと、きみたちがどう思うかわかるけど、でもヴァンの鍵も取って来いって言ったでしょう?
マーティン:アーサー。
アーサー:仕事の半分はヴァンの鍵を取ってくることだった。そこは僕、最高だったんだよ。
マーティン:なんてことだ。
ダグラス:アーサー、きみは間抜けだ。
マーティン:ダグラス、どうして彼にやらせたの?彼が間抜けなのは知っているだろう。
アーサー:僕は間抜けじゃない。
ダグラス:ここまで間抜けだとは知らなかったさ。とにかく食べることと服を着ることはできるんだから、言われた10秒後に紙を取ってくることくらい可能だと思ったんだ。
マーティン:きみは間違っていた。
アーサー:ねえ、大丈夫だよ。電話して住所を聞こうよ。
ダグラス:どの番号に電話するんだ?
アーサー:番号案内で聞けばいい。
ダグラス:番号案内に聞くときに、なにを伝えるんだね?
アーサー:それは住所を、、あああ。
ダグラス:よろしい。空港に戻るぞ。


ハーク:キャロリン、こっちだ。
キャロリン:いいえ、こっちよ。
ハーク:そっちじゃない。私はパイロットとしての抜群の方向感覚と、地図と、携帯のGPSを持っていて、道印の横に立っている。その全員が、こっちだと言っているんだ。
キャロリン:そして皆が間違っているわ。こっちは近道なの。いらっしゃい。
ハーク:いや、行きたくない。
キャロリン:どうして?
ハーク:それは、ぬかるんでいるし、丘だし、そこらじゅうに羊がいる。
キャロリン:だから?
ハーク:羊は好きじゃない。
キャロリン:別に好きにならなくてもいいのよ。横を通るだけ。
ハーク:横を通りたくない。
キャロリン:ハーキュリーズ、あなた、羊が怖いの?
ハーク:いいや、違う。
キャロリン:メエーー。
ハーク:やめろ!
キャロリン:そうなのね、羊が怖いのね!メエメエ鳴くフカフカの子羊ちゃんが怖いんだわ。
ハーク:違う!小さな羊ならひとまたぎできるが、大きくて意地悪で、ひずめと角がある野獣は好きじゃないんだ。
キャロリン:メエーー。
ハーク:やめろ。面白くないよ。
キャロリン:小さな点を指摘させていただければ、ハーク、これほど面白い話は聞いたことがないわ。
ハーク:いや、そうじゃない。どうしてみんなそんな風に思うんだ?
キャロリン:なるほど。だからなのね、あなたがベジタリアンなのは。報復を恐れているのね。夜中にあなたの家を襲撃するのは、目出し帽をかぶった復讐に燃える12匹の雌羊たち。ミントソースの瓶と、ローズマリーのとても鋭い棘。 
ハーク:車で待ってるよ!


マーティン:オーケイ、大丈夫だ。こういうときのために時間をとってある。空港に5時に着けるとして、すぐに引き返して、イエロー・カー、M5号線にのって、
ダグラス:マーティン、イエロー・カー遊びやってるのか?
マーティン:ううん。
ダグラス:ではどうしてイエロー・カーって言ったんだ?
マーティン:たまたま見つけたんだ。
ダグラス:なぜイエロー・カーと言った?
マーティン:遊んだわけじゃないよ。アーサーより先に言いたかっただけ。
ダグラス:それを遊んでいるというんだ。
マーティン:いいよ、僕は遊んでいる。そして勝ったんだ。イエロー・カー!イエロー・カー!イエロー・カー!
アーサー:わぁ、スキップは本当に上手だよ。僕、全部見逃してた。
(車、停止)
マーティン:よし、きみたちはここにいてくれ。僕が取ってくる。
(ドアの音)
ダグラス:ふむ。あの緑のメルセデスは誰のだろう?
アーサー:知らない。かっこいいよね。
ダグラス:見に行こう。(車の外に出る)誰か乗っているぞ。
(車の窓が開く)
ハーク:やあ、ダグラス。
ダグラス:ハーク! いったいここでなにしてるんだ?
ハーク:キャロリンを家まで送る途中さ。オフィスに寄ってなにか取ってきたいと言ってね。今、中にいるよ。話したいなら。
ダグラス:家まで送るってどういう意味だ?彼女、大丈夫か?
ハーク:大丈夫だよ。
ダグラス:どこから家まで?
ハーク:一緒に散歩してたんだ。
ダグラス:散歩?
ハーク:その通り。
ダグラス:キャロリンと散歩するためにわざわざここまで来たのか?
ハーク:それと昼食を。
ダグラス:ああ、そういうことか。きみの奥さんはどうしたんだい?
ハーク:結婚してない。
ダグラス:離婚したんだな。
ハーク: もちろん。
ダグラス:何度?
ハーク:4度だ。きみは?
ダグラス:たったの3度。
ハーク:なんだ、ロマンティックなやつだな。
ダグラス:そうか。では、私は失礼するよ。さようなら。
ハーク:じゃあな。
(足音)
ダグラス:アーサー、急げ!ヴァンからピアノを出すのを手伝ってくれ。
アーサー:どうして?
ダグラス:いいから早く。
(ドアの開く音)
キャロリン:お待たせ、ハーク。見つけたわ。出発しましょう。
(ピアノ)
ダグラス: ♪When the moon hits your eye like a big pizza pie, that’s amore♪
キャロリン:ダグラス!
ダグラス:♪When the moon seems to shine like you’ve had too much wine, that’s amore♪
キャロリン:どうして私は、自分のことを面白いと思っているパイロットたちに常に悩まされるのかしら。
ダグラス:やあ、キャロリン。ここで会えるとは奇遇だ。
キャロリン:あなたを無視するわ。あなたは無視されているの。私は車に向かうわ。
(車のドアが閉まる)
ダグラス:♪Bells will ring, ting-a-ling-a-ling, ting-a-ling-a-ling -♪
キャロリン:あなたは無視されたのよ!
(車が走り去る音)
アーサー:最高だったよ、ダグラス!次は「素晴らしきヒコーキ野郎」やって!
ダグラス:ダメ。
アーサー:そんなぁ。
(ドアが開く)
マーティン:よし。電話をしたら7時まで待ってくれるって。だから僕たちが間に合えば、、ダグラス、どうしてピアノを外に出したんだ?
ダグラス:空気を吸わせようと。
マーティン:ヴァンに戻してよ。
ダグラス:分かった、分かった。おいで、アーサー。
アーサー:オーケイ、オーケイ。鍵をちょうだい。
ダグラス:鍵はきみが持っている。
アーサー:ううん。きみに渡したよ。
ダグラス:いいや、アーサー、違う。きみが持っているんだ。
アーサー:僕じゃない。僕じゃないよ。
ダグラス:つまりきみは鍵をヴァンの中に置き忘れたんだな。
アーサー:違うよ!本当に絶対にきみに渡した。
ダグラス:だが私は受け取った記憶がないし、持ってもいない。つまり我々2人のどちらかがとんでもないヘマをやらかしたんだ。そんなことをするのはどちらだと思うね?
アーサー:、、僕みたいだけど。
ダグラス:なぜならきみは?
アーサー:ふぬけ。
ダグラス:間抜けだよ!
アーサー:間抜け。
ダグラス:そしてふぬけだ。
マーティン: どうしよう?もう5時だし、かぎ屋を呼んでいたら間に合わないよ!ダグラス、どんなトリックがある?
ダグラス:残念ながら運送車に侵入することは私の領域から少し外れている。
マーティン:なにか考えてよ。
ダグラス:そうだな。我々はもはやヴァンを持つ男たちではないかもしれないが、今、いるのは空港だ。すなわち我々は、いつものように、飛行機を持つ男たちだ。

(無線)
ダグラス:ブリストルへ、こちらG-T-I。3人の男と空飛ぶピアノのための通過飛行許可をいただきたい。
管制塔:G-T-Iへ。次の予定地点と調記号を述べてください。
ダグラス:エクスムーア。Fシャープ。
管制塔:許可します。
(ドアが開く)
アーサー:コーヒーだよ、お2人さん。それから、僕、最高のアイデアを思いついたよ。
マーティン:うん?
アーサー:ギャレーの冷蔵庫。今、見てたんだ。電源を切って棚を取り出せば、中にカワウソをいれられると思う。
ダグラス:教えようか。きみの考えは正しい。みなさん、カワウソ目標達成です!
アーサー:万歳!
ダグラス:マーティン。きみも確かに正しい。100匹のカワウソを想像することは可能だ。
マーティン:ありがとう。
アーサー:あの、話は変わるんだけど、
ダグラス:なんだ?
アーサー:ごめんね。僕が間抜けだから分からないだけなんだろうけど、でもさ、着陸したあと、どうやって空港からパブまでピアノを運ぶの?
マーティン:おっと。
ダグラス:ああ。


(ピアノを押す音)
マーティン:きみたち、すごく頑張ってくれているよ。そろそろ半分まで来た。
ダグラス: 素晴らしい。
マーティン:僕も押せたらいいんだけど、このバカな足首がね。手伝ってくれて、本当に本当に感謝している。
ダグラス:どういたしまして。
アーサー:うん。どういたしまして。
ダグラス:きみには言ってない。
アーサー:僕も手伝ったよ。
ダグラス: 住所を忘れて、鍵をヴァンに閉じ込めたんだぞ。いったいどの点で助けたんだ?
アーサー:僕がいなければピアノを押すことは出来なかったでしょ?
ダグラス:きみがいなければピアノを押す必要がなかったんだ。
アーサー:そうか。でも、僕がカワウソを冷蔵庫に入れることを思いついたんだよ。
ダグラス:確かに。その点ではきみはとても貴重だ。
マーティン:ねえ、悪いけど、あと10分しかないんだ。だから出来ればもう少し早く、、
(二人のうなり声)
アーサー:イエロー・カー。
ダグラス&マーティン:黙れ!


キャロリン:青で急ぐなんて、ハーク、本気?もし赤だったらもっと尊敬したのに。少なくともそれならこう言えるでしょう?「そうさ、今は中年の危機なんだ。文句があるか?」って。信号が青のときに急いだって誰もだませないじゃない。
ハーク:知らずと人を怒らせる方法を中断させて申し訳ないが、どの家?
キャロリン:ああ、こっちよ。その木の隣。(車が停まる)今日はありがとう。ともかくね。
ハーク:どういたしまして。
キャロリン:ごめんなさいね、私がちょっと、その、
ハーク:そうじゃなかったよ。
キャロリン:めそめそしてて。
ハーク:そうではなかった。
キャロリン:一日中ひどい思いをしたわけじゃないわ。
ハーク:よかった、と言っていいかな。私もだ。
キャロリン:そう。ではまた行きましょうか?
ハーク:とんでもない。ごめんだよ。次回は、オペラだ。
キャロリン:ノーよ。絶対ノー。
ハーク:イエスだよ。絶対にイエス。私はきみの変な犬と、きみが魚群を吸い込む凄惨な光景に耐え抜いた。次はきみが耐える番だ。人類が創造した最も荘厳な音楽にね。
キャロリン:気に入るとは思えないわ。
ハーク:きみが気に入るかどうかなんてまるで興味ないよ。それに、きっと気に入るさ。
キャロリン:そうね。連絡するわ。


(ドアベル)
ハーディ:はい?
マーティン:ハーディさんですか?イカロス運送です。
ハーディ:ああ、間に合ったな。もう出ようかと思っていたんだ。おい、こっちの2人にはいったいなにがあったんだ?
ダグラス:我々は、ピアノを、押していたんです。
ハーディ:なんだって?そんな扱いはないだろう。どこから押してきたんだ?
マーティン:ヴァンからです。
ハーディ:ヴァンはどこに?
マーティン:あの角をまがったところに停めています。
ハーディ:どうして、
マーティン:ではこちらに署名をお願いし、
ハーディ:落ち着けよ。ピアノを見せてくれ。
マーティン:もちろんです。
ハーディ:うん。大丈夫だな。ちょっと確認を。(ピアノの蓋を開けて、音を出す)おや。
マーティン:問題ありませんか?
ハーディ:ああ、うん。でもこの鍵はなんだい?
ダグラス:え?
(鍵の音)
アーサー:ダグラス、ヴァンの鍵だ!
ダグラス:うん。それはなにより。
アーサー:きみが鍵を置いたまま蓋を閉めたんだよ、ダグラス。母さんに歌った時に。
ダグラス:そのようだな。それでも、
マーティン:アーサーがきみに渡したあとに。
アーサー:僕がきみに渡したって言った通りに。
ダグラス:うむ。
アーサー:ああ、ダグラス。この、間抜け!

 (エンド・クレジット)

ダグラス:♪Up, down, flying around, looping the loop and defying the ground.♪
アーサー:♪They’re. All
ダグラス: アーサー!
アーサー:♪Frightfully keen♪
ダグラス: ♪Those magnificent men♪
ダグラス&マーティン: ♪Those magnificent men♪
ダグラス&マーティン&アーサー:♪Those magnificent men in their flying machines♪