後半です。
↓
マーティン:やあ、つい15分前にここに来た者だけど、その、、
受付:覚えてます。
マーティン:そうかもしれないと思ったよ。
受付:私たち、興奮しているんです。冬に特別室を利用なさるお客様はめったにいないので。
マーティン:きっとそうなんだろうね。 実は、さっき部屋を見て、あの、たくさんの部屋を。それでね、正直な話、僕にはちょっと、特別すぎるんだ。
受付:特別室ですから。
マーティン:うん、指摘ありがとう。でも、要するに、あまりに特別で、それこそ特別な人の特別な儀式を行うには良いんだろうけど、それが、怖いくらい広々としていて、高価で。だから、もし払い戻ししてもらえれば、、
受付:おお、、
マーティン:その「おお、、」の響きはいやだな。お願いだから、それは文化の違いで、きみはこれから「おお、、ご安心ください。問題ありません」って言ってくれるんだよね?
受付:それが、問題がありまして。さきほど特別室を使いたいというお客様がいらして、お断りしたばかりなんです。
マーティン:よかった。その人に譲るよ。
受付:いえ、いえ。お客様はもういません。どこへ行かれたのやら。
マーティン:どんな人だった?
受付:えっと、彼は、大きくて、、大きい、コートと、大きな、ヒゲ。
マーティン:そうか。僕がいなくなってからの8分間に、ブライアン・ブレスドがふらりとやってきて、このホテルの最上の部屋を借りたいと言い、そして失望しながら行き先も告げずに消えたわけだ。
受付:名前はお聞きしていません。
アーサー:ブルート?
マーティン:ついさっき、冬にあの部屋を借りる人がいないと言ったにもかかわらず。
受付:なんと申しましょう。運が良いんです。
マーティン:きみたちは運を作り出しているんだろうね。あとの2部屋はどう?通常サイズの部屋。あっちは払い戻しできるかい?
受付:そちらでしたら可能です。
マーティン:そうか、ありがとう。(携帯電話の着信音) ああ、どうしよう! アーサー、ダグラスの部屋に行ってくれ。312号室だ。荷ほどきを止めさせて。僕もすぐ行くよ。
アーサー:分かった。
マーティン:(電話)もしもし。
キャロリン:マーティン、私のお気に入りの飛行士さん。
マーティン:やあ、僕はなにをやらかしたの?
キャロリン:何も、何も! 珍しく私がご機嫌なだけよ。
マーティン:確かに珍しいね。
キャロリン:快晴のイタリア。帰国便が出る夜中まで時間もあるし、映画スタジオはしぶしぶだったけどしっかり払ってくれたし、世の中薔薇色よ。 何か話したいことがあるなら別だけど。
マーティン:ううん。こっちはうまくいってる。
キャロリン:すばらしいわ! それでね、あまりにいい気分だから、今夜はみんなにご馳走しようと思ったの。
マーティン:へえ、それはうれしいな、、
キャロリン:しかも、エクセルシオールでよ!
マーティン:ええっ、だめだ、ダメ。ガリバルディでいいよ。
キャロリン:バカなこと言わないで。ガリバルディが「良い」わけがないじゃない。でなければあなたたちが利用しないでしょ。
マーティン:いや、僕はちょっとレストランを見てみたけど、おいしそうな、イタリアンの、、ハンバーガー、みたいなのがあったよ。
キャロリン:何をたくらんでいるのか知らないけど、マーティン、やめなさい。私としては今夜、どうしてもエクセルシオールでみんなと食事したいの。それで決まり。7時半きっかりにね。(電話が切れる音)
マーティン:ああ、最高だね。
マーティン:310、311、、あった、312号室。(ノック)
(ドアが開く音)
ダグラス:やあ、マーティン、いらっしゃい。 ダメだ。
マーティン:ダメってなにが?
ダグラス:ダメ、お断り、論外だ。
マーティン:僕はまだ何も言ってないだろう?
ダグラス:聞かなくても分かる。
アーサー:やあ、スキッパー。ご心配なく。僕がダグラスに説明したよ。
マーティン:よくやった。
ダグラス:それで、もしアーサーを信頼していいならば―限りなくあやしいと私は思うが―きみが言おうとしていることは、きみがキャロリンに怒られないために、私はこの素敵な5つ星ホテルをあきらめて、ガリバルディに行けと。
マーティン:そうだ。
ダグラス:そしてきみはここ5つ星ホテルの特別室に宿泊する。ふむ、確かにこの件については熟慮する必要があるな。ダメ。
マーティン:ダグラス!
ダグラス:きみには悪いが、私はここが気に入ったんだ。フカフカのガウンが2つもある。どちらかが使えなくなったときのためにね。それに無料のミックス・ナッツがまた魅力的で、、
マーティン:そうだね。でも申し訳ないけど、この部屋はもう払い戻し済みだ。ここには泊まれない。
ダグラス:よろしい。ではきみがガリバルディに行け。私が特別室を使おう。
マーティン:違うよ、ダグラス。僕はきみが正しいって言おうとしていたんだ。
ダグラス:合意できてなにより。
マーティン:きみが正しい。アーサーを信頼するのは間違っている。もちろん僕は特別室には泊まらない。あの部屋も払い戻しできたんだ。
アーサー:本当? 僕がいなくなったあとに?
マーティン:そうだ、きみがいないくなったあとに。
アーサー:へえ、上出来だったね、スキップ。受付の人、厳しそうにみえたから、てっきり、、
マーティン:僕には説得力があるんだ。だから部屋は全て払い戻し済み、僕たちはガリバルディへ行かざるをえない。いいね?
ダグラス:なんだ、つまらない。 よし、10分くれ。物をかばんに詰めないと。
マーティン:もう荷ほどきしてたのかい?
ダグラス:わたしの物とは言ってない。
マーティン:ミックス・ナッツも忘れずに。
ダグラス:忘れるわけがないだろう。
アーサー:うわあ。確かにさっきのところとは違うね。あれって本物?
ダグラス:いいや、あれは装飾用のぬいぐるみのゴキブリだ。 では、夕食の席で会おう。じゃあな。
マーティン:バイバイ。 もう行ったな?よし。 ボンジョルノ。申し訳ない、僕が間違えた。ほしいのは1部屋だけなんだ。あとの2部屋は取り消ししてもらえるかい?
受付:(ため息)
マーティン:ありがとう。
アーサー:どういうこと、スキップ?
マーティン:よし、アーサー、よく聞いてくれ。
アーサー:あ、いやな予感がする。
マーティン:きみと僕はここには泊まらない。エクセルシオールに泊まるんだ。しかも特別室に。
アーサー:でもさっき払い戻しできたって、、
マーティン:いいや、出来なかったんだ。さて、ここで重要なのは、、(外へ出る)我々がエクセルシオールに泊まることをダグラスに知らせてはいけない。そしてへスターには、我々がガリバルディに泊まることを知らせてはいけない。それから、一番大切なのは、キャロリンに、、何も知らせてはいけない。分かった?
アーサー:ううん。
マーティン:そうか。さて、もう着いた。なんとかうまくやらないと。
(へスターのファンたちの声)
マーティン:アーサー、彼女の宿泊先は誰にも教えないって約束したろう!
アーサー:僕は教えてないよ、本当に、僕じゃない。
マーティン:他に誰がいるんだ? ああ、どうしよう、彼女はもう知っているのかな? (携帯電話着信音) もしもし?
へスター:(電話で)いったい、なにを、してくれたの!
アーサー:はい、僕です。
マーティン:やあ、へスター。 僕はその、、
へスター:「へスター」って呼ばないで、この役立たずのチビ。
マーティン:で、、
へスター:とにかく説明して。いいえ、説明しないで。
マーティン:でも、、
へスター:あなたのどもりとごますりにはうんざりだわ。とにかく彼らを追い払って!(電話が切れる)
ダグラス:ふむ、確かに彼女はノーマン・ペイスではないな。
マーティン:ダグラス! ここでなにしてるの?
ダグラス:きみたちが急いで出て行ったから、もしかしたらいい店でも見つけて一杯やるのかと思ったんだ。まさか騎士軍団に遭遇するとはね。
マーティン:僕はどうすればいい?
ダグラス:何に対して?
マーティン:全てに対してさ!
ダグラス:ああ、全てか。そうだな、きみがかかえている問題を整理すると、とんでもなく高額で返金不可能な特別室に、ホテルのロビーいっぱいの能天気なファン、そして怒れる女優。
マーティン:その通り。
ダグラス:そして手持ちは、1ダースの黒シャツ。
マーティン:え?
ダグラス:答えは明らかだろう?
マーティン:僕にはさっぱり分からない。
ダグラス:そうか、それは面白いな。私には明白なのに。さてと、仮に私が全ての問題をきみのために解決してあげることができたとして、最後に残るのは素敵なエクセルシオールの部屋。
マーティン:はい、はい。きみに譲りますよ。
ダグラス:よろしい。 騎士たち、聞きたまえ。ひとつ提案がある。汚れた豹のようにきみたちがここで寝そべって待っているのは、へスター・マコーレイに会うためだろう?
騎士たち:そうだ!
ダグラス:そしてより確かなことは―きみたちには分かっていないらしいが―きみたちがよそへ行かない限り、彼女は降りてこない。
騎士たち:我々は彼女が降りてくるまでどこにも行かない!
ダグラス:それはそれは形而上学的難問だな。だが、幸いなことに、私には答えがある。このなかの12名は、ミス・マコーレイと会うだけでなく、実際に握手ができる。その汚い手を少なくとも16、7回は洗ったあとだがね、当然。ただし条件がひとつ。残りの者はただちに遥か彼方に消えること。
騎士:どうやって12人を選ぶんだ?
騎士:くじびきかい?
ダグラス:おいおい、そんな方法できみたちの熱意を表すことはできないだろう。一生に一度のチャンスなんだぞ。
騎士:戦いか?
ダグラス:いや、いや、いや。きみたちには賭けてもらいたい。最初は、そうだな、500ユーロから始めては?
騎士:500ユーロ!
ダグラス:お手ごろ価格だったらしい。
(エレベーターの音)
ダグラス:お先にどうぞ、ミス・マコーレイ。(ドアが閉まる)ミス・マコーレイ、MJN航空を代表して、これまでのご迷惑を深くお詫びします。
へスター:もちろんそうすべきね。
ダグラス:確かにそうすべきで、これからそうします。まず第一に、中世の騎士団は全員姿を消しました。そして、謝罪のしるしに、ローマ法王によってまだ占有されていないイタリア一豪華な部屋を私はあなたに提供します。ご覧あれ。(ドアが開く)あなたの特別室です。(ドアが閉まる)
へスター:どうやったらあなたの演説をドアの音にぴったりあわせることができるの?
ダグラス:何回か往復したんです。練習のたまものですよ。
へスター:わぁ、素敵お部屋。
ダグラス:まさに素敵な部屋です。そしてその先にはもっと素敵な部屋、続いて、正直、びっくりする部屋、その奥には、、タオルの乾燥戸棚。これは期待外れだな。
へスター:こんなおもてなしを受けるとは思わなかったわ。
ダグラス:当然の事です。さらに、我々はホテルに支払って、滞在中、あなたのためだけにサービスする従業員のチームを組ませました。紹介させてください。(ドアが開く)あなたの執事です。
執事:我々に、、
ダグラス:残念ながらこのチームは誰も英語は解しません。
へスター:はじめまして。
ダグラス:そしてこちらが準執事、準々執事に、執事見習い。それからあなたのシェフ、ワインウェイター、パティシエ、それに、、プリン職人。
へスター:お会いできて嬉しいわ。
プリン職人:はじめまし、、て。
へスター:大丈夫?
ダグラス:あれはクレモナの方言で、「光栄です」という意味です。 最後にあなたの洗濯係、あなたのナイフとブーツの係、トイレットペーパーの先をV字に折る係、それから、、馬丁。
へスター:どうして私に馬丁が必要なの?
ダグラス:要りませんか? ウンベルト、きみはクビだ。
ウンベルト:あああ、、
へスター:メイドはいないの?
ダグラス:そうですよね、もちろん。ウンベルト、再雇用決定。
ウンベルト:わぁお!
ダグラス:さあ、みんな、出て行きなさい。退室!(ドアの閉まる音)
へスター:皆、おかしな制服着てるのね。
ダグラス:ええ。私は気に入ってます。
へスター:もし私がホテルの支配人だったら、スタッフに黒いシャツは与えないわ。
ダグラス:ああ、でもそれが美学なんです。かっこいい忍者みたいだと思いませんか?
ダグラス:いたって明解。へスターはきみの特別室を使う。宿泊費は握手オークションでまかなえる。私はへスターの前の部屋を使い、きみはガリバルディの私の部屋に泊まる。
アーサー:僕は?
ダグラス:きみもガリバルディの私の部屋に泊まる。
アーサー:最高! 床に寝ていい?
マーティン:なぜ床がいいんだ?
アーサー:冗談でしょ、ぼくは毎晩ベッドで寝てるんだよ。 あれ、母さんだ!
ダグラス:キャロリンが? もう帰国したと思ったが。
マーティン:フライトは今夜だ。その前に僕たちをどうしてもここの夕食に招待するって。なぜなんだか、、キャロリン、やあ。
キャロリン:マーティン、いったい何したの?
マーティン:なにもしてないよ。全て順調さ。へスターはハッピーだし、宿泊費も予算内におさまって、全く問題なし。
キャロリン:あの追っかけ連中はどこにいるの?
マーティン:ああ、そのことを聞いたんだね。確かにファンの人たちとはちょっとしたトラブルがあったけど、心配ご無用、僕たちがみんなを追い払ったんだ。
キャロリン:追い払ったですって?どうして追い払うの?彼らは私の復讐だったのに。
マーティン:そうなの?
キャロリン:ええ。せっかく私が彼女の滞在先を連中に教えたのに。
マーティン:きみが教えた?
キャロリン:もちろん教えたわよ。スタジオからお金を受け取った直後にね。私を「お嬢ちゃん」呼ばわりして許せるわけがないでしょう。だからわざわさこのテーブルを予約して、大騒ぎを見物しようと思ったの。ダグラス、あなた、彼に説明してなかったの?
ダグラス:あの、、
マーティン:ダグラスが説明を?
キャロリン:そうよ。だってこれは彼が考えたことだもの。
マーティン:ダグラス!
ダグラス:ミックスナッツいるかい?
(エンドクレジット)
↓
マーティン:やあ、つい15分前にここに来た者だけど、その、、
受付:覚えてます。
マーティン:そうかもしれないと思ったよ。
受付:私たち、興奮しているんです。冬に特別室を利用なさるお客様はめったにいないので。
マーティン:きっとそうなんだろうね。 実は、さっき部屋を見て、あの、たくさんの部屋を。それでね、正直な話、僕にはちょっと、特別すぎるんだ。
受付:特別室ですから。
マーティン:うん、指摘ありがとう。でも、要するに、あまりに特別で、それこそ特別な人の特別な儀式を行うには良いんだろうけど、それが、怖いくらい広々としていて、高価で。だから、もし払い戻ししてもらえれば、、
受付:おお、、
マーティン:その「おお、、」の響きはいやだな。お願いだから、それは文化の違いで、きみはこれから「おお、、ご安心ください。問題ありません」って言ってくれるんだよね?
受付:それが、問題がありまして。さきほど特別室を使いたいというお客様がいらして、お断りしたばかりなんです。
マーティン:よかった。その人に譲るよ。
受付:いえ、いえ。お客様はもういません。どこへ行かれたのやら。
マーティン:どんな人だった?
受付:えっと、彼は、大きくて、、大きい、コートと、大きな、ヒゲ。
マーティン:そうか。僕がいなくなってからの8分間に、ブライアン・ブレスドがふらりとやってきて、このホテルの最上の部屋を借りたいと言い、そして失望しながら行き先も告げずに消えたわけだ。
受付:名前はお聞きしていません。
アーサー:ブルート?
マーティン:ついさっき、冬にあの部屋を借りる人がいないと言ったにもかかわらず。
受付:なんと申しましょう。運が良いんです。
マーティン:きみたちは運を作り出しているんだろうね。あとの2部屋はどう?通常サイズの部屋。あっちは払い戻しできるかい?
受付:そちらでしたら可能です。
マーティン:そうか、ありがとう。(携帯電話の着信音) ああ、どうしよう! アーサー、ダグラスの部屋に行ってくれ。312号室だ。荷ほどきを止めさせて。僕もすぐ行くよ。
アーサー:分かった。
マーティン:(電話)もしもし。
キャロリン:マーティン、私のお気に入りの飛行士さん。
マーティン:やあ、僕はなにをやらかしたの?
キャロリン:何も、何も! 珍しく私がご機嫌なだけよ。
マーティン:確かに珍しいね。
キャロリン:快晴のイタリア。帰国便が出る夜中まで時間もあるし、映画スタジオはしぶしぶだったけどしっかり払ってくれたし、世の中薔薇色よ。 何か話したいことがあるなら別だけど。
マーティン:ううん。こっちはうまくいってる。
キャロリン:すばらしいわ! それでね、あまりにいい気分だから、今夜はみんなにご馳走しようと思ったの。
マーティン:へえ、それはうれしいな、、
キャロリン:しかも、エクセルシオールでよ!
マーティン:ええっ、だめだ、ダメ。ガリバルディでいいよ。
キャロリン:バカなこと言わないで。ガリバルディが「良い」わけがないじゃない。でなければあなたたちが利用しないでしょ。
マーティン:いや、僕はちょっとレストランを見てみたけど、おいしそうな、イタリアンの、、ハンバーガー、みたいなのがあったよ。
キャロリン:何をたくらんでいるのか知らないけど、マーティン、やめなさい。私としては今夜、どうしてもエクセルシオールでみんなと食事したいの。それで決まり。7時半きっかりにね。(電話が切れる音)
マーティン:ああ、最高だね。
マーティン:310、311、、あった、312号室。(ノック)
(ドアが開く音)
ダグラス:やあ、マーティン、いらっしゃい。 ダメだ。
マーティン:ダメってなにが?
ダグラス:ダメ、お断り、論外だ。
マーティン:僕はまだ何も言ってないだろう?
ダグラス:聞かなくても分かる。
アーサー:やあ、スキッパー。ご心配なく。僕がダグラスに説明したよ。
マーティン:よくやった。
ダグラス:それで、もしアーサーを信頼していいならば―限りなくあやしいと私は思うが―きみが言おうとしていることは、きみがキャロリンに怒られないために、私はこの素敵な5つ星ホテルをあきらめて、ガリバルディに行けと。
マーティン:そうだ。
ダグラス:そしてきみはここ5つ星ホテルの特別室に宿泊する。ふむ、確かにこの件については熟慮する必要があるな。ダメ。
マーティン:ダグラス!
ダグラス:きみには悪いが、私はここが気に入ったんだ。フカフカのガウンが2つもある。どちらかが使えなくなったときのためにね。それに無料のミックス・ナッツがまた魅力的で、、
マーティン:そうだね。でも申し訳ないけど、この部屋はもう払い戻し済みだ。ここには泊まれない。
ダグラス:よろしい。ではきみがガリバルディに行け。私が特別室を使おう。
マーティン:違うよ、ダグラス。僕はきみが正しいって言おうとしていたんだ。
ダグラス:合意できてなにより。
マーティン:きみが正しい。アーサーを信頼するのは間違っている。もちろん僕は特別室には泊まらない。あの部屋も払い戻しできたんだ。
アーサー:本当? 僕がいなくなったあとに?
マーティン:そうだ、きみがいないくなったあとに。
アーサー:へえ、上出来だったね、スキップ。受付の人、厳しそうにみえたから、てっきり、、
マーティン:僕には説得力があるんだ。だから部屋は全て払い戻し済み、僕たちはガリバルディへ行かざるをえない。いいね?
ダグラス:なんだ、つまらない。 よし、10分くれ。物をかばんに詰めないと。
マーティン:もう荷ほどきしてたのかい?
ダグラス:わたしの物とは言ってない。
マーティン:ミックス・ナッツも忘れずに。
ダグラス:忘れるわけがないだろう。
アーサー:うわあ。確かにさっきのところとは違うね。あれって本物?
ダグラス:いいや、あれは装飾用のぬいぐるみのゴキブリだ。 では、夕食の席で会おう。じゃあな。
マーティン:バイバイ。 もう行ったな?よし。 ボンジョルノ。申し訳ない、僕が間違えた。ほしいのは1部屋だけなんだ。あとの2部屋は取り消ししてもらえるかい?
受付:(ため息)
マーティン:ありがとう。
アーサー:どういうこと、スキップ?
マーティン:よし、アーサー、よく聞いてくれ。
アーサー:あ、いやな予感がする。
マーティン:きみと僕はここには泊まらない。エクセルシオールに泊まるんだ。しかも特別室に。
アーサー:でもさっき払い戻しできたって、、
マーティン:いいや、出来なかったんだ。さて、ここで重要なのは、、(外へ出る)我々がエクセルシオールに泊まることをダグラスに知らせてはいけない。そしてへスターには、我々がガリバルディに泊まることを知らせてはいけない。それから、一番大切なのは、キャロリンに、、何も知らせてはいけない。分かった?
アーサー:ううん。
マーティン:そうか。さて、もう着いた。なんとかうまくやらないと。
(へスターのファンたちの声)
マーティン:アーサー、彼女の宿泊先は誰にも教えないって約束したろう!
アーサー:僕は教えてないよ、本当に、僕じゃない。
マーティン:他に誰がいるんだ? ああ、どうしよう、彼女はもう知っているのかな? (携帯電話着信音) もしもし?
へスター:(電話で)いったい、なにを、してくれたの!
アーサー:はい、僕です。
マーティン:やあ、へスター。 僕はその、、
へスター:「へスター」って呼ばないで、この役立たずのチビ。
マーティン:で、、
へスター:とにかく説明して。いいえ、説明しないで。
マーティン:でも、、
へスター:あなたのどもりとごますりにはうんざりだわ。とにかく彼らを追い払って!(電話が切れる)
ダグラス:ふむ、確かに彼女はノーマン・ペイスではないな。
マーティン:ダグラス! ここでなにしてるの?
ダグラス:きみたちが急いで出て行ったから、もしかしたらいい店でも見つけて一杯やるのかと思ったんだ。まさか騎士軍団に遭遇するとはね。
マーティン:僕はどうすればいい?
ダグラス:何に対して?
マーティン:全てに対してさ!
ダグラス:ああ、全てか。そうだな、きみがかかえている問題を整理すると、とんでもなく高額で返金不可能な特別室に、ホテルのロビーいっぱいの能天気なファン、そして怒れる女優。
マーティン:その通り。
ダグラス:そして手持ちは、1ダースの黒シャツ。
マーティン:え?
ダグラス:答えは明らかだろう?
マーティン:僕にはさっぱり分からない。
ダグラス:そうか、それは面白いな。私には明白なのに。さてと、仮に私が全ての問題をきみのために解決してあげることができたとして、最後に残るのは素敵なエクセルシオールの部屋。
マーティン:はい、はい。きみに譲りますよ。
ダグラス:よろしい。 騎士たち、聞きたまえ。ひとつ提案がある。汚れた豹のようにきみたちがここで寝そべって待っているのは、へスター・マコーレイに会うためだろう?
騎士たち:そうだ!
ダグラス:そしてより確かなことは―きみたちには分かっていないらしいが―きみたちがよそへ行かない限り、彼女は降りてこない。
騎士たち:我々は彼女が降りてくるまでどこにも行かない!
ダグラス:それはそれは形而上学的難問だな。だが、幸いなことに、私には答えがある。このなかの12名は、ミス・マコーレイと会うだけでなく、実際に握手ができる。その汚い手を少なくとも16、7回は洗ったあとだがね、当然。ただし条件がひとつ。残りの者はただちに遥か彼方に消えること。
騎士:どうやって12人を選ぶんだ?
騎士:くじびきかい?
ダグラス:おいおい、そんな方法できみたちの熱意を表すことはできないだろう。一生に一度のチャンスなんだぞ。
騎士:戦いか?
ダグラス:いや、いや、いや。きみたちには賭けてもらいたい。最初は、そうだな、500ユーロから始めては?
騎士:500ユーロ!
ダグラス:お手ごろ価格だったらしい。
(エレベーターの音)
ダグラス:お先にどうぞ、ミス・マコーレイ。(ドアが閉まる)ミス・マコーレイ、MJN航空を代表して、これまでのご迷惑を深くお詫びします。
へスター:もちろんそうすべきね。
ダグラス:確かにそうすべきで、これからそうします。まず第一に、中世の騎士団は全員姿を消しました。そして、謝罪のしるしに、ローマ法王によってまだ占有されていないイタリア一豪華な部屋を私はあなたに提供します。ご覧あれ。(ドアが開く)あなたの特別室です。(ドアが閉まる)
へスター:どうやったらあなたの演説をドアの音にぴったりあわせることができるの?
ダグラス:何回か往復したんです。練習のたまものですよ。
へスター:わぁ、素敵お部屋。
ダグラス:まさに素敵な部屋です。そしてその先にはもっと素敵な部屋、続いて、正直、びっくりする部屋、その奥には、、タオルの乾燥戸棚。これは期待外れだな。
へスター:こんなおもてなしを受けるとは思わなかったわ。
ダグラス:当然の事です。さらに、我々はホテルに支払って、滞在中、あなたのためだけにサービスする従業員のチームを組ませました。紹介させてください。(ドアが開く)あなたの執事です。
執事:我々に、、
ダグラス:残念ながらこのチームは誰も英語は解しません。
へスター:はじめまして。
ダグラス:そしてこちらが準執事、準々執事に、執事見習い。それからあなたのシェフ、ワインウェイター、パティシエ、それに、、プリン職人。
へスター:お会いできて嬉しいわ。
プリン職人:はじめまし、、て。
へスター:大丈夫?
ダグラス:あれはクレモナの方言で、「光栄です」という意味です。 最後にあなたの洗濯係、あなたのナイフとブーツの係、トイレットペーパーの先をV字に折る係、それから、、馬丁。
へスター:どうして私に馬丁が必要なの?
ダグラス:要りませんか? ウンベルト、きみはクビだ。
ウンベルト:あああ、、
へスター:メイドはいないの?
ダグラス:そうですよね、もちろん。ウンベルト、再雇用決定。
ウンベルト:わぁお!
ダグラス:さあ、みんな、出て行きなさい。退室!(ドアの閉まる音)
へスター:皆、おかしな制服着てるのね。
ダグラス:ええ。私は気に入ってます。
へスター:もし私がホテルの支配人だったら、スタッフに黒いシャツは与えないわ。
ダグラス:ああ、でもそれが美学なんです。かっこいい忍者みたいだと思いませんか?
ダグラス:いたって明解。へスターはきみの特別室を使う。宿泊費は握手オークションでまかなえる。私はへスターの前の部屋を使い、きみはガリバルディの私の部屋に泊まる。
アーサー:僕は?
ダグラス:きみもガリバルディの私の部屋に泊まる。
アーサー:最高! 床に寝ていい?
マーティン:なぜ床がいいんだ?
アーサー:冗談でしょ、ぼくは毎晩ベッドで寝てるんだよ。 あれ、母さんだ!
ダグラス:キャロリンが? もう帰国したと思ったが。
マーティン:フライトは今夜だ。その前に僕たちをどうしてもここの夕食に招待するって。なぜなんだか、、キャロリン、やあ。
キャロリン:マーティン、いったい何したの?
マーティン:なにもしてないよ。全て順調さ。へスターはハッピーだし、宿泊費も予算内におさまって、全く問題なし。
キャロリン:あの追っかけ連中はどこにいるの?
マーティン:ああ、そのことを聞いたんだね。確かにファンの人たちとはちょっとしたトラブルがあったけど、心配ご無用、僕たちがみんなを追い払ったんだ。
キャロリン:追い払ったですって?どうして追い払うの?彼らは私の復讐だったのに。
マーティン:そうなの?
キャロリン:ええ。せっかく私が彼女の滞在先を連中に教えたのに。
マーティン:きみが教えた?
キャロリン:もちろん教えたわよ。スタジオからお金を受け取った直後にね。私を「お嬢ちゃん」呼ばわりして許せるわけがないでしょう。だからわざわさこのテーブルを予約して、大騒ぎを見物しようと思ったの。ダグラス、あなた、彼に説明してなかったの?
ダグラス:あの、、
マーティン:ダグラスが説明を?
キャロリン:そうよ。だってこれは彼が考えたことだもの。
マーティン:ダグラス!
ダグラス:ミックスナッツいるかい?
(エンドクレジット)