有馬山
い(井)な(奈)のさゝは(者)ら
風吹け(介)ば(者)いでそよ
人を(越)忘れ(連)やは(八)
する
有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと鳴ります。
さあそのことですよ、お忘れになったのはあなたのほう、私はどうしてあなたのことを忘れるでしょうか。
『後拾遺集』の詞書きに、「離(か)れ離(が)れになる男の、おぼつかなくなど言ひたるに詠める」とある。
作者のもとへ通って来ることも途絶えがちになってきた男が「あなたが心変わりしたのではないかと気がかりです」などと言って来たときに詠んだそうな。
作者の大弐三位(だいにのさんみ)は藤原賢子(ふじわらのかたこ)のこと。
父は宣孝(のぶたか)、母はあの『源氏物語』の著者紫式部です。
後拾遺集 恋二 709
紙 清書用手漉き料紙 ゆうか 本楮紙うす具引き 半懐紙二分の一 栢美
筆 特大 あさつゆ 玉川堂
墨 松花 呉竹