大阪のまちづくりぶろぐ

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庭園と都市~「大阪大学21世紀懐徳堂」レポート~

2012年09月11日 | その他
 8月24日に開催された大阪大学21世紀懐徳堂講座に参加しました。淀屋橋odona2階「アイ・スポット」で午後6時30分より大阪大学大学院文学研究科の桑木野先生から「庭園と都市:イタリア荘園の歴史から現代日本の都市空間を再考する」というテーマについてお話がありました。懐徳堂講座は依然として人気があり、定員をかなり上回る方が熱心に聴講されました。

(講座の様子)
 
 イタリア庭園史の研究が行われるようになったのは、1970年代の終わり頃と歴史的には比較的新しく、それは主に庭園というものが様々な分野の影響を受けていることや主な対象が土や植物などで変化しやすいことなどにより庭園の歴史研究が非常に困難であったことに起因しているようです。

 古代ローマ以来、イタリアの大庭園の所有者である権力者や大富豪は自分達の富を市民に還元するために庭園を開放しており、庭園は都市の中の緑地として、人々の癒しや創造性を助長する空間としての機能を果たしてきました。哲学者のF.ベーコンは庭園について「全能の神は初めに庭園を造った。それは本当に人間の楽しみの中で最も純粋なものである。それは人間の精神にとって最大の気晴らしであり、これがなければ、建物も宮殿も粗雑な手仕事にすぎない。」と随筆集に残しています。また、一方で、当時のインフラは未整備であり、人口密度は比較的に高いために空気がよどみ、疫病などを引き起こしていました。カステッロ荘庭園などは湿った空気を壁で遮断し、香りのよい植物を植えることで健康回復装置としての役割を果たすといった側面もあったようです。
 
 現在においても、欧米では庭園はもっとも洗練された文化の産物であり、また、文化が生まれる地として引き継がれています。「哲学、文学、創造性を追求するなら庭に出ろ」と言われるほどです。フィレンツェ近郊のカステッロ荘は、現在、クルスカ・アカデミー本部になっていますし、ヴィッラ・ イ・タッティはハーバード大学ルネッサンス研究所になっており、庭園のある環境の恩恵を受けています。
 
 最後に我々の身近にある庭園としてなんばパークスについて目を向けてみますと、設計者は、キャナルシティ福岡やリバーウォーク北九州を手掛けたジョン・ジャーディ氏です。屋上庭面積は11,500㎡、およそ300種、70,000本が植栽されおり、デザイン的にはレベルの高い都市空間を造り出しています。残念ながら日本では、哲学や文学などをはじめ、他の様々な分野において五感を刺激し、創造性をかき立てるような庭園としての空間は非常に限られていると思います。なんばパークスのように訪問者が癒される、貴重な都市空間を大切にしていきたいと思います。