大阪のまちづくりぶろぐ

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大阪市内の文化財

2012年11月28日 | その他
 まちづくりを考える中で、地域の魅力・資源を発掘することは、非常に重要です。なかでも、文化財は、地域固有のもので、歴史もあり、たくさんの人々にその価値が認識されていることから、地域の資源としてこれを活用しない手はないと思います。

 国においても、平成20年5月には、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(通称:歴史まちづくり法)」が制定されており、この法律では、「地域におけるその固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動とその活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境」を「歴史的風致」と定義し、その維持・向上を目的としています。
 これまでも文化財の保護や土地利用規制を中心とする法律はありましたが、この歴史まちづくり法は、歴史的な建造物の修理・復元やその活用を促進する施設の整備、歴史的風致を損なっている建造物等の景観上の改善、伝統的行事の活性化等のソフト面への支援が含まれた点が特徴となっています。

 文化財と言っても、いろいろな種類がありますが、そのなかで、まちづくりに直接関連深そうなハードものとして、国が「建造物」として指定・登録しているものを調べてみました。文化庁のホームページによると、平成24年10月Ⅰ日現在、都道府県別の件数は、下記のグラフのとおりです。


 関西の府県は、どこも件数が多く、関西には全国の約3割が集中しています。そのなかで、大阪府は、637件で、京都府、兵庫県についで、全国で3番目に多い件数です。その後に、奈良、滋賀が続き、関西でベスト5を占めています。

 大阪市内にある「建造物」を、「大阪府の文化財」(大阪府HP)で調べたところ、平成24年5月1日時点で、107件(うち、建築物が104件、工作物が3件)ありました。

 そのなかには、建築物としては、市内唯一の国宝である住吉神社本殿をはじめ、大阪市中央公会堂・大阪府立中之島図書館などの公共建築物、大江橋及び淀屋橋・毛馬第一閘門などの都市基盤施設、四天王寺・杭全神社などの神社・寺院、綿業会館・コニシ株式会社(旧小西儀助商店)などの民間建築物などが、また、工作物としては、通天閣・四天王寺鳥居などがそれぞれ指定・登録されています。

 その一覧は以下のとおりです。

○国宝(1件)
住吉大社本殿

○国重要文化財(21件)
泉布観                     旧造幣寮鋳造所正面玄関
大阪府立図書館                 大阪市中央公会堂
大江橋及び淀屋橋                淀川旧分流施設
大阪城大手門等                 旧緒方洪庵住宅
コニシ株式会社(旧小西儀助商店)        綿業会館
愛珠幼稚園園舎                 大江橋及び淀屋橋
四天王寺鳥居                  四天王寺本坊西通用門等
勝鬘院塔婆                   杭全神社本殿(第二殿)
杭全神社本殿(第三殿)             奥田家住宅
杭全神社本殿(第一殿)             住吉大社摂社大海神社本殿
住吉大社南門等

○国登録文化財(69件)
水道記念館                   奥山家住宅
池永家住宅                   大阪天満宮
住友家住宅                   吉田家住宅
ミナミ株式会社(旧川崎貯蓄銀行福島出張所)   鴉宮
コニシ株式会社(旧小西儀助商店)        生駒時計店
新井ビル                    三木楽器
青山ビル                    大阪城天守閣
北浜レトロビルジング              岸本瓦町邸
船場ビルディング                宇野薬局
日本フリーメソジスト教団大阪日本橋キリスト教会 少彦名神社
伏見ビル                    大阪ガスビルディング
北野家住宅                   芝川ビルディング
三ツ山家住宅                  山本能楽堂及び能舞台
旧大阪市中央消防署今橋出張所(今橋ビルヂング) 小川香料大阪支社社屋
日本基督教団島之内協会             南海ビル
日本基督教団大阪教会              金光教玉水教会会堂
山内ビル                    木村家住宅主屋
江戸堀コダマビル                土肥家住宅主屋
大阪セルロイド会館               四天王寺八角亭
念佛寺本堂                   心光寺
稱念寺                     源聖寺    
萬福寺                     光明寺
心光寺                     超心寺
大光寺                     稱名寺
通天閣                     ギャラリー再会
源ヶ橋温泉浴場                 御幸森天神宮
源正寺楼門                   寺西家阿倍野長屋
寺西家住宅                   佐野家住宅
萬代家住宅                   梅谷歯科医院
鯛よし百番                   大念仏寺本堂
武束家住宅                   末吉家住宅
小林新聞舗店舗兼住宅              遠藤家住宅
高谷家住宅                   池田家住宅
大阪市立大学本館(一号館)           日本基督教団大阪住吉教会
住吉大社神館

○府有形文化財(6件)
都島神社 石造 三重宝篋印塔           日本聖公会川口基督教会
旧黒田藩蔵屋敷長屋門              勝鬘院
住吉大社                    生根神社

○市有形文化財(10件)
鶴満寺本堂                   大阪倶楽部
久本寺番神堂                  本町橋 
統国寺                     金台寺
大阪市立工芸高校本館              連歌所
大念佛寺山門                  旧加賀屋新田会所   


 最近では、日本基督教団島之内協会(H21)・小川香料大阪支社社屋(H21)・南海ビル(H23)・本町橋(H24)などが登録されています。
大阪歴史博物館では、平成24年12月5日(水)から平成25年2月25日(月)まで、8階特集展示室で特集展示「平成22・23年度 大阪市の新指定文化財」が開催され、平成22・23年度に新たに指定された文化財の実物資料や写真パネルによる紹介が行われます。詳しくは、http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/yutoritomidori/0000190059.html(大阪市ゆとりとみどり振興局HP)まで。

 これらのなかで、国の登録文化財である古い建物を、その文化的価値を残しながら店舗等として活用している事例を3つ紹介します。

 はじめは、新世界、通天閣のすぐ横にある「ギャラリー再会」です。
 昭和28年に、建築家・石井修氏の設計で純喫茶「再会」として建てられ、平成9年に、ギャラリーに改修されました。
 外観は、南欧風のしゃれたデザインで、バルコニーのねじり柱が特徴的です。定期的に開催されるライブ時には、飾り柱やらせん階段などある優雅な内観を見学できるそうです。

(「ギャラリー再会」外観)

(登録文化財を示すプレート)

(バルコニーのねじり柱)

(玄関付近)


 つぎは、地下鉄御堂筋線昭和町駅前にある「寺西家阿倍野長屋」と「寺西家住宅」です。二つの建物は道路をはさんで建っており、「寺西家住宅」は大正15年、「寺西家阿倍野長屋」は昭和7年に建てられました。どちらも改修されて、現在は飲食店としてそれぞれ使われています。
 「寺西家阿倍野長屋」は、平成16年に改修工事が行われましたが、建設当初の外観を復元し、質の高い改修工事が行われたことなどが評価され、第26回おおさかまちなみ賞の市長賞にも選定されています。
また、この昭和町駅周辺では、「【昭和の日】に【昭和町】にある【昭和の建築】で【昭和】を味わう」をコンセプトに平成18年から「どっぷり昭和町。」というイベントが開催されています。

(「寺西家阿倍野長屋」外観)

(登録文化財を示すプレート・まちなみ賞を示す碑)

(「寺西家住宅蔵」外観)


 最後は、JR環状線寺田町駅の東にある生野本通商店街から路地を入ってすぐの突き当たりにある「源ヶ橋温泉浴場」です。銭湯で指定されているのは珍しいそうで、昭和12年に建てられ、現在も営業しています。
 レトロモダンな外観とともに、自由の女神や屋根の上の鯱など洒落っ気あふれる装飾が特徴で、内装も細工が施された格子天井やシャンデリア風の照明などがあるそうです。ぜひ一度中にも入ってみたいです。
 

(「源ケ橋温泉浴場」外観)

(温泉マークを掲げている自由の女神と金の鯱)


 文化財といっても、小規模な住宅から大規模な建築物、公共施設や神社・寺院など、様々な種類の建物があり、今回ご紹介しましたユニークに活用されているものもあります。また、今はまだ埋もれているものの、今後の指定・登録をきっかけに活用が図られるものもあるでしょう。民間所有のケースなどで保存が困難なケースも出ていますが、国の法制度も充実してきており、これらの大阪の貴重な財産である文化財をきっかけとしたまちづくりが、今後もひろがっていくことを期待したいです。



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